Webをつくること、伝えること、活動を整えること。その先にある「デザイン」の役割について
Webの仕事をしていると、ときどき考えることがあります。
「これはデザインなんだろうか?」
ホームページを作る。
ロゴを作る。
SNSのプロフィールを整える。
ネットショップを作る。
文章を整理する。
写真を選ぶ。
導線を考える。
これらは、一般的には「デザイン」と呼ばれることがあります。
でも、どこまでがデザインで、どこからが単なる制作なのか。
そして、そもそもデザインは何のためにあるのか。
最近、あらためてそんなことを考えるようになりました。
僕自身、Webディレクターとして長くWebに関わってきました。
そして現在は「松井構造室」という名前で、活動や情報を整理し、WebやSNS、仕組みなどを「動ける形」にしていく仕事を始めています。
そんな立場から、旭川という街について考えてみたいと思います。
旭川は「デザイン都市」になった
旭川には、家具や木工、クラフトなど、ものづくりとデザインに関わる長い歴史があります。
旭川市は2019年10月、ユネスコ創造都市ネットワークに「デザイン」分野で加盟しました。
日本では名古屋市、神戸市に続く3都市目のデザイン分野での加盟です。旭川市公式サイト
旭川市は現在、
「デザインの力で、持続可能で誇りある地域社会を実現する」
というビジョンを掲げています。旭川市公式サイト
さらに、旭川市では「デザイン都市旭川」のブランド力向上や、市民の愛着や誇りを育てることを目的としてデザインシステムを整備し、2026年1月からは市民も利用できる仕組みへと広げています。旭川市公式サイト
つまり、「旭川はデザインの街」という言葉は、単なるキャッチコピーではありません。
行政、産業、教育、クリエイター、企業、市民。
いろいろな立場の人が関わりながら、これからの旭川をどうつくるかという話につながっています。
ここは、旭川に暮らす一人として、とても面白いところだと思います。
でも、「デザイン都市」って何だろう?
一方で、ここからが僕自身の疑問です。
「デザイン都市」と言われたとき、僕たちは何を思い浮かべるでしょうか。
おしゃれなポスター。
美しい家具。
かっこいいロゴ。
洗練されたWebサイト。
もちろん、それらもデザインです。
でも、それだけではないはずです。
例えば、
「初めて来た人が迷わない街」
「必要な情報が見つかる行政サービス」
「高齢者にも使いやすい案内」
「小さな事業者でも自分の活動を伝えられる仕組み」
「子どもがデザインについて考えられる環境」
「地域の商品が、その価値をきちんと伝えられる仕組み」
こういうものも、広い意味ではデザインなのではないでしょうか。
僕はむしろ、こちらのほうに興味があります。
「つくること」と「デザインすること」は、少し違う
Webの仕事をしていると、
「ホームページを作ってください」
という依頼があります。
でも、本当に必要なのはホームページでしょうか。
話を聞いてみると、
「何をしているのか自分でもうまく説明できない」
「サービスが増えて、何を前面に出せばいいかわからない」
「SNSとホームページの内容がバラバラ」
「誰に向けて発信しているのかわからない」
ということがあります。
この場合、いきなりホームページを作っても、根本的な問題は解決しません。
必要なのは、まず整理することです。
誰に届けるのか。
何を伝えるのか。
何を変えたいのか。
今あるものは何か。
足りないものは何か。
そして、その人にとって本当に必要なものは何なのか。
それを考えてから、Webサイトを作る。
SNSを整える。
文章を書く。
写真を選ぶ。
ツールを導入する。
僕は、この「考えて整理するところ」もデザインの大切な部分だと思っています。
「なぜ、この形なのか」を説明できること
デザインには、もちろん見た目があります。
色。
形。
文字。
写真。
余白。
レイアウト。
それぞれに理由があります。
「なんとなく、この色が好きだから」
という選択も、個人の活動ならあっていいと思います。
でも、仕事として誰かの活動を支えるなら、
「なぜこの形にしたのか」
を説明できることは大切です。
なぜ、この情報を上に置いたのか。
なぜ、この言葉を使ったのか。
なぜ、この写真を選んだのか。
なぜ、この導線にしたのか。
それを考えることによって、デザインは単なる装飾から、目的を持った手段になります。
ただ、ここでも僕は一つ付け加えたいと思っています。
理由を説明できることだけが、良いデザインの条件ではない。
とも思っています。
理由があっても、使う人に届かなければ意味がない
どれだけ理論的に説明できても、使う人に届かなければ、そのデザインは目的を果たしていません。
例えば、ものすごく美しいホームページでも、
「どこから問い合わせればいいかわからない」
のであれば、利用する人にとっては困ります。
ブランドとして完璧に統一されたSNSでも、
「結局、何をしている人なのかわからない」
のであれば、伝わりません。
デザインの専門家から見て美しいことと、利用する人にとって分かりやすいことは、同じ場合もあれば、違う場合もあります。
だから僕は、
「誰が見るのか」
「誰が使うのか」
「その人に何が起きてほしいのか」
を考えることを大切にしています。
小さな活動にもデザインは必要だと思う
僕が今、特に関心を持っているのがここです。
大企業には、デザイナーがいます。
広報担当者がいます。
マーケティング担当者がいます。
Web担当者がいます。
場合によっては専門の制作会社もいます。
でも、小さな事業者や個人で活動している人には、そんなに多くの人はいません。
一人で、
商品を作って、
販売して、
写真を撮って、
SNSを書いて、
ホームページを更新して、
問い合わせに答えて、
経理をしている。
そんな人もたくさんいます。
その人に、
「ちゃんとしたデザインをしてください」
と言うだけでは、少し違う気がします。
必要なのは、その人の現実に合わせて、
「今できること」
「やった方がいいこと」
「今はやらなくていいこと」
を一緒に整理することなのではないでしょうか。
「デザインできる人」を増やすだけではなく、「デザインを考えられる人」を増やす
これは旭川にとっても重要なことだと思っています。
旭川には、すでにデザインに関わるさまざまな人たちがいます。
旭川デザイン協議会も、旭川・旭川近郊でさまざまなデザインに関わる仕事をしているクリエイターの集まりとして活動しており、講演会、展覧会、デザインコンペ、デザインサロンなどを通じて、デザインの社会的な役割や可能性を探っています。CoCoナビ
こうした土台があることは、旭川の大きな財産です。
ただ、これからの「デザイン都市」を考えるなら、専門家だけがデザインする街ではなく、
市民自身が「なぜこうなっているんだろう?」と考えられる街
になっていくことも大切なのではないでしょうか。
デザインを専門家だけのものにしない。
これは、デザインの価値を下げることではありません。
むしろ、デザインが社会の中で果たす役割を広げることだと思っています。
「安い・高い」だけではなく、「何を変えるのか」
クリエイティブの仕事では、価格の話も避けて通れません。
「ホームページはいくらですか?」
「ロゴはいくらですか?」
「SNSの画像を1枚いくらで作れますか?」
という話になります。
もちろん、価格は重要です。
事業として成立させなければいけません。
クリエイターが正当な対価を受け取ることも大切です。
一方で、僕は価格だけを基準にするのも違うと思っています。
大切なのは、
その仕事によって何が変わるのか。
です。
ホームページを作った結果、
問い合わせが増えるのか。
活動を説明しやすくなるのか。
採用につながるのか。
信用をつくれるのか。
スタッフが更新できるようになるのか。
商品を知ってもらえるようになるのか。
それとも、単純に「ホームページがある」という状態をつくるだけなのか。
同じ「ホームページ制作」でも、意味はまったく違います。
だから僕は、これから仕事をするとき、
「何を作るか」
だけではなく、
「何を変えるために作るのか」
を大切にしたいと思っています。
旭川から、いろいろな「デザイン」が生まれていい
旭川には家具があります。
木工があります。
クラフトがあります。
建築があります。
グラフィックがあります。
写真があります。
Webがあります。
映像があります。
そして、もっと広い意味で、
「地域の仕組みを考えること」
「人と人が出会う場をつくること」
「情報を分かりやすくすること」
「小さな活動を続けられるようにすること」
も、デザインと呼べるのではないでしょうか。
僕自身は、いわゆる「デザイナー」という肩書きを前面に出すつもりはありません。
Webディレクターとして、
人の話を聞いて、
情報を整理して、
必要なものを考えて、
Webやツールに落とし込み、
実際に使える状態にする。
そういう仕事をしていきたいと思っています。
「デザイン都市・旭川」の一員として
旭川がユネスコのデザイン都市になったことは、専門家だけの話ではないと思っています。
この街で暮らしている人。
商売をしている人。
何かを作っている人。
地域で活動している人。
これから何かを始めたい人。
その一人ひとりが、
「自分の活動をどう伝えるか」
「誰に届けるか」
「どうすればもっと良くなるか」
を考えることも、デザインの一部です。
だから僕は、「デザイン都市」という言葉を、少し身近に考えてみたい。
デザインは、特別な人だけが使う技術ではない。
自分たちの未来を、少し良くするために考えること。
そう考えると、デザインはもっと生活に近いものになります。
僕が「松井構造室」を始めた理由
そんなことを考えるようになったことも、「松井構造室」という名前をつけた理由の一つです。
構造という言葉には、
「何がどうつながっているのか」
「どこに問題があるのか」
「どう組み立てれば動くのか」
を考える意味があります。
僕がやりたいのは、単にWebサイトを作ることだけではありません。
その人の活動を見て、
情報を整理して、
伝え方を考えて、
必要なものをつないで、
動ける形にする。
そのためにWebが必要ならWebを使う。
SNSが必要ならSNSを使う。
ネットショップが必要ならネットショップを使う。
逆に、今は必要ないなら、無理に作らない。
それも一つの「デザイン」だと思っています。
旭川から、もっといろいろな人が「つくる側」になればいい
僕自身、まだ大きな会社を持っているわけでもありません。
誰もが知っているような実績があるわけでもありません。
だからこそ、今の自分にできるところから始めたいと思っています。
大きな仕事だけではなく、
「ホームページをどうしたらいいかわからない」
「SNSを整理したい」
「自分の活動をちゃんと説明できるようにしたい」
「何から始めればいいかわからない」
そんな小さな相談にも向き合う。
そういう積み重ねから、少しずつ仕事をつくっていきたい。
そして、旭川で活動する人たちが、自分の活動を自分の言葉で説明できるようになったら面白いと思っています。
誰かに「あなたはプロです」と認定してもらわなくても、
自分は何をしているのか。
誰のためにしているのか。
なぜそれをしているのか。
何を良くしたいのか。
それを自分の言葉で話せる。
そこから、仕事としての信頼も生まれていくのではないでしょうか。
デザイン都市・旭川で、僕も考え続けたい
旭川は、すでにデザインについて考えてきた街です。
そして今も、その取り組みは続いています。
行政が仕組みをつくる。
企業が商品やサービスをつくる。
クリエイターが表現をつくる。
市民が暮らしをつくる。
それぞれが違う立場から、「より良い未来」を考える。
その全部が重なったところに、「デザイン都市」があるのかもしれません。
僕自身も、まだ答えを持っているわけではありません。
だからこそ、考え続けたいと思っています。
デザインって何なのか。
Webって何のためにあるのか。
伝えるってどういうことなのか。
小さな活動が続いていくには何が必要なのか。
そして、
旭川で暮らしながら、どうすれば自分たちの未来を少し良くできるのか。
その問いを、これからも仕事を通して考えていきたいと思います。
松井構造室
活動を整理し、動ける形にする。
北海道旭川市を拠点に、Web、SNS、情報、仕組みなどを整理し、小さな事業や活動が続いていくための環境づくりをサポートしています。