AIを使うと、文章を作る時間を短縮できることがあります。SNSの投稿、商品説明、イベントの告知、ホームページの文章。これまで自分で考えていた文章を、AIに手伝ってもらえるようになりました。とても便利です。ただ、ここでひとつ考えておきたいことがあります。AIが書いてくれた文章は、そのまま公開しても大丈夫なのでしょうか。読みやすい、誤字も少ない、なんとなくそれらしい文章になっている。でも、それだけでは十分ではありません。書かれている情報は正しいか、実際には提供していないサービスが書かれていないか、自分が本当に伝えたいことになっているか、お客様に誤解を与える表現はないか。今回は、小さな事業者がAIで文章を作るときに確認しておきたいポイントを整理します。
目次
1.文章が自然でも、情報が正しいとは限らない
AIが作る文章は、とても自然です。だからこそ注意したいのは、文章が自然に読めることと、内容が正しいことは別だということです。例えば、お店のイベント告知を作ってもらったとします。「当日は限定商品を多数ご用意しています。毎年大人気のイベントですので、ぜひお越しください!」一見すると普通の告知文です。しかし、限定商品を用意する予定は本当にあるのか、本当に毎年開催しているのか、大勢のお客様が来た実績はあるのか。もし事実でなければ、文章が自然でもそのまま使うことはできません。AIは、文章を成立させるために、こちらが伝えていない情報を補ってしまうことがあります。そのため、価格、営業時間、開催日、商品仕様、販売実績、サービス内容などは、必ず元の情報と照らし合わせることが大切です。公開する情報の責任は、最終的に発信する側にあります。
2.自分の経験を足す/「自分らしさ」は口調だけではない
AIに文章を作ってもらうと、きれいにまとまっているのに、どこか印象に残らないことがあります。理由のひとつは、具体的な経験が不足していることです。「お客様に喜んでいただけるよう、ひとつひとつ丁寧に商品を制作しています」という文章は悪くありませんが、多くのお店が使える表現でもあります。自分が経験したこと、お客様から実際に言われたこと、仕事の中で気づいたこと、うまくいかなかったこと。こうした一次情報は、その人や事業ならではの発信を作る材料になります。大切なのは、AIに自分の経験まで作ってもらわないこと。AIは、それらを読みやすく整理するために使えます。また、「自分らしさ」は語尾や口調だけで決まるものではありません。価格を大切に伝えるのか、制作の背景を伝えるのか、使う場面を伝えるのか。その事業が何を大切にしていて、どんな人に何を届けたいのかが伝わることで、文章にも個性が生まれます。AIに文章を作ってもらう前に、自分の事業について少し整理しておくと、出力される文章の方向性も整えやすくなります。
3.著作権や個人情報にも気をつける
AIで文章を作るときは、情報の正確さや自分らしさ以外にも気をつけたいことがあります。ひとつは著作権です。AIが作った文章だからといって、あらゆる使い方が無条件に問題ないとは限りません。他人の文章や画像などを参考資料として使う場合は利用条件を確認し、特定の作品や作家の表現をそのまま再現するような指示は避けたほうがよいでしょう。著作権の判断は、生成物の内容や既存作品との類似性など、個別の事情によって変わります。もうひとつは個人情報や機密情報です。お客様の氏名や連絡先、公開していない取引先との情報、社外に出していない契約内容、個人や企業を特定できる相談内容などを入力する前に、利用するAIサービスの規約やデータの取り扱いを確認しましょう。必要に応じて、個人や企業が特定されない形に置き換える方法もあります。「便利だから、とりあえず全部入力する」という使い方は避けたいところです。
公開前チェックと、まとめ
ここまでの内容を、実際に使えるチェックリストにまとめます。□事実に間違いはないか。□実際には提供していないサービスや、存在しない実績が書かれていないか。□自分が伝えたいことや、事業の方針と合っているか。□読む人に誤解を与える表現や、必要以上に強い断定はないか。□個人情報、機密情報、著作権などへの配慮はできているか。毎回難しい確認作業をする必要はありませんが、公開する文章の内容に応じて確認の深さを変えることが大切です。日常のちょっとした投稿と、価格や契約条件を説明するページでは、必要な確認が違います。お客様の判断に大きく影響する内容ほど、慎重に確認しましょう。AIを使う目的は、すべての作業をAIに任せることではありません。文章のたたき台を作る、考えを整理する、複数の案を比較する、自分では気づかなかった視点を出す。こうした作業は手伝ってもらえます。一方で、自分の事業で何を大切にするのか、お客様に何を約束するのか、どんな情報を公開するのかは、自分で決める部分です。AIは文章を作る。伝える責任は自分にある。その分、何を伝えるか、誰に届けるか、どんな価値を提供するかを考える時間に使えたらいい。僕はそんなふうに考えています。