AIを使っても仕事がうまくいかないのはなぜ?初心者が知っておきたい指示の出し方

SI — Structural Intelligence

前回は、AIとは何なのか、どんなことができるのかについて整理しました。今回は、その続きです。AIに文章を書いてもらう、アイデアを出してもらう、SNSの投稿を考えてもらう。実際に使ってみると、こんな経験はないでしょうか。なんだか一般論ばかり返ってくる。自分が伝えたいことと違う。文章はきれいだけれど、どこか他人事。何度も修正しているうちに、自分で書いたほうが早くなる。せっかく便利な道具を使っているのに、思ったような結果にならない。これでは、AIを使う意味がありません。今回は、AI初心者が仕事で活用するための指示の出し方を、できるだけ具体的に整理してみます。

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AIは、こちらの頭の中を完全には理解できない
まず知っておきたいのは、AIは、こちらが言葉にしていない事情や考えまで、いつも正確に理解してくれるわけではないということです。こちらが「いい感じの文章を書いて」と伝えたとします。するとAIは、学習した言葉のパターンや与えられた文脈などをもとに、条件に合いそうな文章を生成します。しかし、こちらの考える「いい感じ」が何なのかは、これだけでは十分に伝わりません。同じ「いい感じ」でも、明るく親しみやすく絵文字を使った文章を求める人もいれば、落ち着いていて専門性があり、無駄な装飾のない文章を求める人もいる。どちらも「いい感じ」ですが、できあがる文章はまったく違います。つまり、AIが役に立たないのではなく、こちらが求めているものと、AIが受け取った条件にズレがある可能性があるのです。ここで出てくる「プロンプト」という言葉も、難しく考える必要はありません。特別な呪文ではなく、AIに対して「こうしてほしい」と伝えるための入力、くらいに考えればいい。「ブログの記事を書いて」もプロンプトですし、「北海道の小さなパン屋さん向けに、Webサイトの必要性を説明する記事を書いて」もプロンプトです。人間同士なら「いつもの感じで」と言えば察してくれることもありますが、AIにはその「いつもの感じ」がありません。分かっているつもりで省略していることを、少しだけ言葉にする。これだけでAIとのやり取りはかなり変わります。

AIに伝えたい5つのこと
小さなお店のSNS投稿をAIに考えてもらう場合を考えてみます。「カフェのInstagram投稿を作ってください」という指示でも、AIは文章を作れます。しかし、どんなカフェなのか、誰に来てほしいのか、何を紹介したいのかが分からないため、どこにでもありそうな文章になりやすくなります。一方で「旭川市内の小さなカフェのInstagram投稿を作ってください。紹介するのは店内で焼いている季節のタルトです。主な読者は、近隣で落ち着いて過ごせるカフェを探している人です。親しみやすく、落ち着いた雰囲気で、来店を強く迫らない文章にしてください」と条件を加えると、求める文章に近づきやすくなります。大切なのは、指示を長くすることではありません。AIが判断するために必要な情報を渡すことです。仕事でAIを使うときは、次の5つを整理しておくと便利です。①目的——何のために作るのか(例:新商品の存在を知ってもらいたい)。②相手——誰に伝えたいのか(例:近隣で手土産を探している人)。③情報——何を伝える必要があるのか(商品の特徴、販売場所、販売期間など)。④条件——どんな表現や形式にしてほしいのか(文字数、親しみやすい文章、絵文字は少なめなど)。⑤完成形——何ができあがれば目的を達成できそうか(そのまま投稿内容を確認できる文章と、必要なハッシュタグ、など)。この5つを毎回完璧に書く必要はありません。簡単な作業なら短い指示で十分な場合もあります。ただし、仕事の成果に関わるものほど、最初に整理しておく価値があります。あわせて「何を大事にしたいのか」も伝えたいところです。「売れるように」と頼むのか、「押し売りっぽくせず、信頼してもらえるように」と頼むのかで、文章の方向は変わります。そして商品名、営業時間、開催日など、間違えてはいけない「事実」は曖昧なままAIに任せず、分からない情報は勝手に補わず、確認が必要だと伝える方法もあります。

型を用意して、一度で完成させようとしない
毎回ゼロから指示を考えるのは大変です。そこで、基本の型をひとつ用意しておきましょう。「あなたは、〇〇の仕事を支援するアシスタントです。を書き、不明な情報は推測で補わず、必要に応じて質問してください」という形です。ホームページの文章、商品説明、SNS投稿、イベント告知、企画の整理など、さまざまな用途に応用できます。ただし、AIに「あなたは専門家です」と役割を与えただけで、その分野の専門家と同じ正確性が保証されるわけではありません。役割の指定は、回答の方向性を整えるためのものです。また、AIを使うとき意外と重要なのが、最初の回答で完成させようとしないことです。最初の回答はたたき台。例えば、まず作ってもらい、次に「説明が一般的すぎます。この商品の特徴が伝わるようにしてください。事実として提示した情報以外は追加しないでください」とズレを伝え、さらに「Instagramで読みやすいように改行を増やしてください。最後は購入を強く促すのではなく、商品を見てみたくなる自然な締め方にしてください」と使う場面に合わせていく。AIとのやり取り自体が編集作業なのです。もちろん、指摘に合わせて修正された回答が必ず正しいとは限りません。価格、法律、契約、健康、会計など間違いが大きな問題につながる内容は、別途確認が必要です。

まとめ|AIへの指示は、仕事の整理から始まる
指示を工夫しても期待どおりにならないことはあります。そんなときは、指示をひたすら長くする前に、①そもそも目的が曖昧ではないか、②判断に必要な情報が足りているか、③自分が求める完成形を説明できているか、を確認してみてください。「SNSで集客したい」という目的があっても、知名度を上げたいのか、問い合わせを増やしたいのか、来店を増やしたいのかで必要な施策は変わります。目的が決まっていないなら、「いきなり投稿案を作るのではなく、事業の現状、届けたい相手、解決したい課題を整理するための質問を、ひとつずつしてください」と頼む方法もあります。最初から答えを出してもらうのではなく、答えを出すための材料を一緒に整理してもらう。AIは、文章を作る道具であると同時に、考えを整理する相手としても使えます。そして、僕がもっと大切だと思っているのは、AIを使う前に仕事そのものを整理することです。ホームページを作りたい場合でも、誰に見てもらいたいのか、何を知ってもらいたいのか、見た人にどんな行動をしてほしいのかが曖昧なままでは、整った文章を作っても事業に合ったものになるとは限りません。便利な道具を探す前に、何を解決したいのかを考える。「最強プロンプト」を覚えるより、「良い質問を作れるようになる」ほうを大事にしたいと思います。なお、顧客の個人情報や社外秘の情報を入力する場合は、利用するサービスの規約やデータの取り扱いを確認し、必要に応じて情報を匿名化するなどの対策をしてください。

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