「分かりやすくしてください」。仕事でも、たまに出てくる言葉です。でも、何をもって「分かりやすい」とするのか。そこを考え始めると、意外と簡単ではありません。「分かりやすい」と「情報が少ない」は、同じではないと思っています。
情報を減らせば、分かりやすくなるわけではない
ホームページに情報がたくさん載っている。だったら情報を減らせば分かりやすくなる。……ということでもありません。必要な情報までなくなってしまえば、今度は「結局、何なの?」となります。逆に全部説明しようとすると、読む側が疲れてしまう。少なすぎても分からない、多すぎても分からない。このあたりが「分かりやすい」の難しいところです。もう一つ難しいのが「誰にとって?」という話です。その仕事を何年もやっている人にとっては当たり前の言葉でも、初めて見る人にはまったく意味が分からないことがあります。これは専門用語だけの話ではありません。「これくらい分かるだろう」という感覚そのものが、人によって違う。自分がよく知っているものほど、説明を省略してしまう。自分の中ではつながっている情報でも、初めて見る人には、その途中がない。だから「分かりやすいかどうか」は、作る側だけでは決められない。そんなふうに考えるようになりました。
順番でも、分かりやすさは変わる
同じ情報でも、順番を変えるだけで分かりやすくなることがあります。「何をしている人なのか」→「どんなことを頼めるのか」→「具体的にはどうするのか」と進むのと、いきなり細かいサービスの説明から始まるのとでは、同じ内容でも受け取り方が変わります。お店でも同じで「まず何を見るのか」「次に何を見るのか」という順番があります。僕は最近、分かりやすさというのは「全部理解できること」ではなく「次に何をすればいいか分かること」に近いのかもしれないと思っています。お店なら入っていいのか分かる、商品なら何なのか分かる、ホームページなら自分に関係あるか分かる、SNSならもう少し見てみたいと思える。すべてを一度に理解してもらう必要はなくて、その人が次へ進めればいい。分かりやすさは「削ること」だけではなく「迷わないように並べること」でもあります。
分かりにくさが「意図したもの」かどうか
もちろん、すべてをシンプルにすればいいとも思っていません。あえて余白を残す、あえて詳しく説明する、あえて少し分からない状態から興味を持ってもらう。そういう見せ方もあります。「分かりやすいほうが正しい」と決めてしまうと、それはそれで窮屈になる。大事なのは、その分かりにくさが「意図したもの」なのか、ただ整理されていないだけなのか。僕はそこを見たいんだと思います。だから「分かりやすくする」という言葉を聞くと、すぐにデザインの話には行きません。Webの仕事では色、写真、文字、レイアウトといった「見た目」の話になりがちですが、その前に「そもそも何を伝えたいんだろう?」「誰が見るんだろう?」「最初に何が分かればいいんだろう?」。ここが整理されていないと、どれだけきれいに作っても伝わりにくいことがあります。
情報が多いことが悪いわけじゃないし、少ないことが正解でもない。その人、その店、その仕事にとって、ちょうどいい伝わり方を考える。「分かりやすい」は、情報を減らすことではなく、その人が迷わず進めるようにすること。そんなことを考えながら、今日もお店の入口やホームページを見ています。
