「旭川で仕事をしています。」そう言うと、「旭川が好きなんですね」と言われることがあります。もちろん、旭川で暮らしてきたことも、この街に思い入れがあることもあります。でも、僕が旭川で仕事をしている理由は、それだけではありません。むしろ僕にとっては、「ここで実際に、人や仕事を見てきたから」というほうが近い気がします。
地域で仕事をすると、見えるものが違う
Webの仕事は、場所を選ばない仕事だと言われます。パソコンとインターネットがあれば、全国の人と仕事をすることもできます。実際、Webそのものには「旭川だからできない」ということは、それほど多くありません。
でも、「Webを使う人」は、場所から切り離されていません。どんな人が商売をしているのか。どんなお客さんが来るのか。どんな地域で暮らしているのか。どんな仕事の仕方をしているのか。そういう背景を知っているかどうかで、同じWebサイトでも、考えることはかなり変わります。
小さな事業には、小さな事業の事情がある
旭川で仕事をしていると、大きな会社だけではなく、個人で商売をしている人や、小さな事業者と接する機会があります。お店をやっている人、商品を作っている人、サービスを提供している人、何かの活動をしている人。
そういう人たちと話していると、「Webサイトを作れば解決する」というほど単純ではないことが分かります。そもそも何を伝えたいのか分からない。SNSはやっているけれど整理されていない。情報があちこちに散らばっている。自分では当たり前だと思っていることが、お客さんには伝わっていない。そして何より、「やったほうがいいのは分かっているけれど、そこまで手が回らない」ということもあります。こういうことは、大きな企業のWeb戦略とは少し違います。だからこそ、地域で実際に仕事をしているから見えることがある。僕はそう思っています。
「旭川だから特別」なのではない
ここは少し、誤解されたくないところでもあります。僕は、「地方だからこうするべき」と考えているわけではありません。旭川の事業者だから特別な方法が必要、とも思っていません。
むしろ大事なのは、その人、その仕事、その状況を見ること。旭川にいるからこそ見えることもあれば、旭川だからといって決めつけてはいけないこともある。地域を理由に、最初から答えを決めてしまわない。地域で仕事をするということは、地域の人に合わせることではなく、その場所で起きていることをちゃんと見ることだと思うのです。
僕にとって旭川は、「地域活性化のために仕事をする場所」というより、自分が実際に生活し、仕事をし、人と出会ってきた場所です。街の中で見かけたものや、誰かとの何気ない会話が、仕事を考えるきっかけになることがあります。「この店、もっと伝わればいいのに」「この人、ちゃんと仕事しているのに、それがWebでは全然伝わっていないな」「情報はあるけれど、初めて見る人には少し分かりにくいな」。そういう小さな違和感は、実際にその場所で暮らしているからこそ気づくことがあります。
旭川は、出発点
Webの仕事は、全国どころか世界ともつながれます。だから、旭川だけで仕事をしなければいけないとは思っていません。旭川の仕事が旭川の外につながっていくこともある。旭川で生まれたものが全国に届くこともある。逆に、外から旭川に人や情報が入ってくることもある。Webは、そういう「つなぐ」ことができる道具です。旭川を閉じた場所として考えず、旭川を起点にして、必要なら外へ広げていく。そのくらいの距離感が、今の僕にはちょうどいいと思っています。
「地域に貢献したい」という言葉は、とてもきれいです。でも、僕は少しだけ苦手です。「自分が地域のために何かをしてあげる」という構図に聞こえるからです。僕は、そんなに大きなことをしているわけではありません。誰かのWebサイトを整理する、情報をまとめる、文章を考える、何を発信するか一緒に考える、その人が次に動ける状態をつくる。まずは、そういう小さな仕事をちゃんとやる。その積み重ねが結果として、この街で何かが動くことにつながるなら、それで十分だと思っています。
たぶん僕にとって旭川は、「仕事をする場所」というより、仕事の考え方をつくってきた場所なのだと思います。
