「できるだけ多くの人に知ってもらいたいです」。小さな事業をしている人と話していると、そんな言葉を聞くことがあります。お店ならたくさんのお客さんに来てほしいし、商品を作っているならたくさんの人に買ってほしい。その気持ちは自然です。ただ、情報を「伝える」ということを考えると、「みんなに伝えたい」と考えるほど、誰にも強く伝わらなくなることがあります。
「みんな」は、具体的な相手ではない
例えばパン屋さんが「こだわりの素材を使って、ひとつひとつ丁寧に焼き上げています。ぜひ皆さんお越しください!」と投稿したとします。悪い文章ではありません。でも、読んだ人が「これは自分のためのお店だ」と感じるかというと、少し弱い。「皆さん」の中には、朝食用のパンを探す人、子どもと一緒に食べるパンを探す人、仕事帰りに買いたい人、手土産を探す人がいて、それぞれ知りたいことが違うからです。「どなたでも歓迎です」「幅広い方におすすめです」という全員に向けた文章は、誰の「自分のことだ」という感覚にも届きにくい。そこで少し具体的にしてみます。「初めて○○をする人へ」「旭川で小さな事業を始めた人へ」「子どもと一緒に楽しめる場所を探している人へ」。このようにすると、対象となる人が自分との関係を考えやすくなります。
ターゲットは「年齢」より「状況」で考える
マーケティングではターゲットという言葉がよく出てきます。「30代女性」「子育て世代」「50代男性」といった属性も一つの情報ですが、それだけでは相手を十分に理解したことにはなりません。同じ30代でも、新しい仕事を探している人、店を始めたい人、Webサイトを直したい人、プレゼントを探している人では、状況がまったく違います。「30代女性」ではなく「美容室に行きたいけれど、どこに行けばいいか分からない人」。「個人事業主」ではなく「ホームページはあるけれど、何を直せばいいのか分からない人」。人より状況を見ることです。そして「その人は何に困っている?」まで考えると、伝えるべき内容が具体的になります。伝える相手が決まると言葉も決まります。専門家向けなら専門用語を使えるし、初めての人なら簡単な言葉にし、事業者向けなら費用や時間や手順を明確にします。「誰に伝えるか」は、単なるターゲット設定ではなく、その後の「何を」「どこで」「どう伝えるか」につながる最初の設計です。
まとめ
ここで誤解しやすいのは、ターゲットを絞るという考え方です。情報を伝える相手を具体的にすることと、実際のお客さんを制限することは別の話です。文章の入口を誰か一人に向けて具体的にすると、その周辺にいる人にも意味が伝わることがあります。まずは一人を思い浮かべてみてください。「この人が今、自分のサービスを探していたら、何を知りたいだろう?」そこから考えると、ホームページの文章も、SNSの投稿も、写真も変わってきます。
