ツールを使える人より、ツールを選べる人になる
「このツール、使えますか?」
Webの仕事をしていると、よく聞かれます。
WordPress。
Canva。
Google Workspace。
SNS。
オンラインショップ。
生成AI。
予約投稿ツール。
分析ツール。
フォーム。
クラウドストレージ。
本当にたくさんあります。
僕自身も、いろいろなものを使います。
でも、
「たくさんのツールを使えること」
が、そのまま仕事ができることだとは思っていません。
むしろ、
「今の自分に、そのツールが必要なのか」
を判断できることのほうが大事だと思っています。
使えることと、使うことは違う
例えば、
あるSNSの予約投稿機能を知っている。
使い方もわかる。
設定もできる。
だからといって、
その人が予約投稿を使わなければいけないわけではありません。
WordPressでサイトを作れる。
だからといって、
すべての人がWordPressを使う必要もありません。
AIで文章を作れる。
だからといって、
すべての文章をAIに作らせる必要もない。
「できる」と「やる」は別です。
ここを混同すると、
どんどん仕事が増えていきます。
ツールは、増やすほど便利になるわけではない
新しいツールを知る。
「こんなこともできるんだ」
と思う。
登録する。
設定する。
試してみる。
便利だから使い続ける。
また別のツールを知る。
また登録する。
こうして、
いつの間にかツールが増えていきます。
でも、
ツールが増えると、
管理するものも増えます。
アカウント。
パスワード。
通知。
設定。
料金。
データ。
使い方。
更新。
引き継ぎ。
サービス終了への対応。
無料のツールでも、
時間は使います。
「無料」は、管理コストがゼロという意味ではない
これはWebの仕事をしていると、
かなり感じます。
無料だから、
とりあえず登録しておく。
無料だから、
使わなくなっても残しておく。
無料だから、
別に困らない。
でも、
そのサービスに情報が残っている。
誰かのアカウントで管理されている。
通知が届く。
たまにログインを求められる。
何かの連携に使われている。
こうなると、
「無料だけど面倒」
ということが起きます。
お金だけではなく、
管理する時間もコストです。
選ぶ前に「何を解決したいのか」
例えば、
「SNSをもっと効率化したい」
という相談があったとします。
そこで、
「この予約投稿ツールがおすすめです」
とすぐに答えることもできます。
でも、
僕ならその前に、
「何に時間がかかっていますか?」
と聞きます。
投稿する時間がないのか。
投稿内容を考えるのが大変なのか。
写真が用意できないのか。
各SNSへの投稿が面倒なのか。
投稿した後の分析ができないのか。
そもそも投稿する内容が決まっていないのか。
ここが違えば、
必要な対策も変わります。
道具から考えると、話がおかしくなる
「AIを使いたい」
「WordPressにしたい」
「Canvaを使いたい」
「Instagramを自動化したい」
こういうところから始めると、
そのツールで何ができるか、
という話になってしまいます。
でも本当は、
「何をしたいのか」
が先です。
仕事が先。
道具が後。
これは、
おまつの道具箱でずっと書いてきたことでもあります。
例えば、ホームページを作りたい
「ホームページを作りたい」
という相談でも、
本当の問題がホームページとは限りません。
情報がバラバラなのかもしれない。
プロフィールが古いのかもしれない。
SNSの投稿はあるけれど、
何をしている人なのかわからないのかもしれない。
問い合わせ方法がわかりにくいのかもしれない。
Googleマップの情報が整理されていないのかもしれない。
オンラインショップとSNSの情報がつながっていないのかもしれない。
この状態で、
「新しいホームページを作りましょう」
と始めると、
新しいものが一つ増えるだけです。
ツール選びの前に、今あるものを見る
僕が最初に確認したいのは、
「今、何を使っていますか?」
です。
ホームページ。
Instagram。
Facebook。
LINE。
Google。
メール。
オンラインショップ。
Excelやスプレッドシート。
紙。
スマホ。
場合によっては、
何も使っていない。
それでもいいと思っています。
そこから、
「何ができていて、何が困っているのか」
を見る。
「足りない」のか「使えていない」のか
ここも大事です。
「機能が足りない」
という場合があります。
一方で、
「機能はあるけど、使い方が決まっていない」
という場合もあります。
例えば、
Googleフォームはある。
でも、
問い合わせ後に誰が対応するのか決まっていない。
スプレッドシートはある。
でも、
何を入力するのか決まっていない。
ホームページはある。
でも、
何を更新するのか決まっていない。
この場合、
新しいツールを追加しても、
問題は解決しません。
ツールの問題に見えて、仕組みの問題だったりする
仕事がうまく回らないとき、
「もっと便利なツールがあれば」
と思いやすい。
でも実際には、
役割が決まっていない。
情報の置き場所が決まっていない。
担当者が決まっていない。
更新のタイミングが決まっていない。
判断基準がない。
こういうところが原因だったりします。
ツールを変える前に、
仕組みを整理する。
それだけで改善することがあります。
「使える人」より「選べる人」
もちろん、
ツールを使えることは大切です。
使い方を知らなければ、
選択肢にもなりません。
でも、
その先にもう一段あります。
「使えるけど、今回は使わない」
という判断です。
これができると、
仕事がかなりシンプルになります。
プロは、何でも使う人ではない
例えば、
工具をたくさん持っている職人がいたとしても、
一つの作業に全部の工具を使うわけではありません。
必要なものを選びます。
場合によっては、
手でやったほうが早いこともある。
以前から使っている道具で十分なこともある。
新しい工具を買わないこともある。
Webも同じです。
AIも「選択肢の一つ」
AIが便利になったことで、
「AIを使わないと遅れている」
ような空気になることがあります。
僕は、
そこまで単純ではないと思っています。
AIを使えば便利になる仕事もあります。
文章の整理。
アイデア出し。
要約。
比較。
下書き。
情報整理。
画像制作。
コードの補助。
いろいろあります。
でも、
AIを使うことで、
確認する仕事が増える場合もあります。
修正する時間が増える場合もあります。
自分で考えたほうが早い場合もあります。
そもそも、
AIに頼むほどの仕事ではないこともあります。
「AIを使わない」という判断も、AI活用の一部
これは少し逆説的ですが、
AIを上手に使う人ほど、
「ここはAIを使わなくていい」
と判断できることがあります。
例えば、
短い連絡を自分で書く。
大切な人への文章を自分で考える。
自分の経験を振り返る。
最終的な経営判断を自分で行う。
こういう仕事まで、
全部AIに任せる必要はありません。
AIに任せることで、
自分が大切にしたい部分まで薄くなってしまうなら、
使わないほうがいい。
「好き」と「必要」も分けて考える
もちろん、
道具が好きだから使う。
というのも全然ありです。
僕自身、
道具が好きです。
HHKBも使う。
万年筆も使う。
ノートも使う。
機械式時計も好きです。
でも、
「好きだから必要」
とは限らない。
ここは分けています。
好きだから使う。
必要だから使う。
仕事だから使う。
この三つは、
それぞれ違います。
道具には「役割」を持たせる
例えば、
ホームページは、
公式情報の場所。
SNSは、
日々の活動を伝える場所。
オンラインショップは、
商品を販売する場所。
メールは、
個別の連絡。
フォームは、
問い合わせを受ける場所。
Googleマップは、
場所や営業時間などを確認してもらう場所。
AIは、
整理や壁打ちをする道具。
こうやって役割を決めると、
ツール同士を比較する必要が減ります。
「どれが一番すごいか」
ではなく、
「どの仕事を担当させるか」
になります。
一つの道具に全部やらせない
逆に、
「全部一つでやりたい」
という考え方もあります。
これも気持ちはわかります。
管理する場所を減らせるからです。
ただ、
一つのサービスに全部を依存すると、
そのサービスが変わったときに困ることがあります。
だから、
何でも分散すればいいわけでもない。
何でも一つにまとめればいいわけでもない。
重要なのは、
役割と依存関係を理解しておくことです。
ツールを選ぶときの順番
僕なら、
こんな順番で考えます。
- 何をしたいのか
- 誰が使うのか
- 今どうやっているのか
- 何が困っているのか
- 今ある道具で解決できないか
- できないなら、何の機能が必要なのか
- その機能を持つ道具を探す
- 導入した後、誰が管理するのか考える
- 半年後も使っているか考える
- 使わなくなったとき、どうやめるか考える
最後の二つは、
意外と重要です。
「導入」より「やめる」ほうが難しい
新しいツールを入れるのは簡単です。
登録する。
設定する。
使い始める。
でも、
やめるとなると、
データをどうする。
連携をどうする。
契約をどうする。
アカウントをどうする。
誰に知らせる。
代替手段は何にする。
といった問題が出てきます。
だから、
始める前に、
「もし半年後にやめたらどうなる?」
と考えておく。
これだけでも、
不要な導入が減ります。
小さな事業ほど、道具を増やしすぎない
一人で仕事をしている。
家族で経営している。
少人数で運営している。
地域で小さな店をやっている。
そういう事業では、
「大企業と同じ仕組み」
が必要とは限りません。
むしろ、
複雑すぎる仕組みは、
運用できなくなることがあります。
高機能。
多機能。
自動化。
全部入り。
それが悪いわけではありません。
でも、
使う人にとって重すぎるなら、
意味がありません。
「続けられるか」は重要な機能
ツールの比較表を見ると、
機能。
料金。
連携。
容量。
対応サービス。
こういう項目が並びます。
でも、
僕ならもう一つ加えたい。
「続けられるか」
です。
毎日使えるのか。
月に一度でも迷わず使えるのか。
誰かに引き継げるのか。
設定を忘れても復旧できるのか。
担当者が変わっても使えるのか。
これも立派な性能だと思います。
「便利」と「簡単」は違う
高機能なツールは、
できることが多い。
でも、
できることが多いほど、
覚えることも増える。
だから、
「便利だけど難しい」
ということがあります。
一方、
「機能は少ないけれど、迷わず使える」
という道具もあります。
どちらがいいかは、
使う人によります。
選択は、正解探しではない
ツール選びで、
「一番おすすめはどれですか?」
と聞きたくなります。
でも、
絶対的な一番はありません。
ある人には最高。
別の人には不要。
ある会社には便利。
別の会社には過剰。
だから、
他人のランキングを、
そのまま自分の答えにしない。
レビューは参考にする。
専門家の意見も聞く。
でも、
最後は自分の条件に合わせる。
ツールを選ぶということは、仕事を選ぶことでもある
これは、
Web制作にもそのまま当てはまります。
WordPressを選ぶ。
Shopifyを選ぶ。
BASEを選ぶ。
SNSを選ぶ。
メールフォームを選ぶ。
予約システムを選ぶ。
こういう判断の裏には、
「この仕事を、どう回したいのか」
という考えがあります。
だから、
ツール選びだけを切り離すことはできません。
道具は、仕事の形を変える
例えば、
予約システムを導入すると、
予約の受け方が変わる。
オンラインショップを作ると、
商品の見せ方が変わる。
AIを使うと、
文章を作るスピードが変わる。
クラウドを使うと、
情報の共有方法が変わる。
つまり、
ツールは単なる機能ではありません。
仕事のやり方そのものに影響します。
だからこそ、
「とりあえず導入」
ではなく、
「この道具を入れたら、仕事の何が変わる?」
と考えたい。
ツールを選べる人は、やめることも選べる
新しいツールを入れる。
だけではありません。
古いツールをやめる。
使っていないサービスを整理する。
SNSを一つ減らす。
ページを一つなくす。
自動化をやめて手動に戻す。
場合によっては、
ホームページを作らない。
そういう判断もあります。
減らすことも、
選択です。
最後に
僕は、
「何でもできます」
という言い方が、
あまり好きではありません。
もちろん、
できることが多いのは悪いことではない。
でも、
本当に大切なのは、
「何ができるか」
だけではなく、
「何をやらないか」
を決めることだと思っています。
AIも。
WordPressも。
Canvaも。
SNSも。
オンラインショップも。
全部、
道具です。
道具には、
それぞれ得意なことがあります。
だから、
道具に仕事を合わせるのではなく、
自分の仕事に合う道具を選ぶ。
そして、
必要がなくなったら、
変える。
やめる。
減らす。
それも含めて、
道具を使うということだと思います。
ツールを使える人になる。
それは大事です。
でも、その先に、
「これは今の自分には必要ない」
と言えるようになる。
「この機能はいらない」
と判断できるようになる。
「今あるもので十分」
と決められるようになる。
僕は、
そちらのほうが、
これからの時代には大切だと思っています。
便利なものが増え続ける時代だからこそ、
何を使うかより、
何を選ばないか。
そして、
選んだ道具を、
ちゃんと仕事の中で使い続けられるか。
そこまで考えて、
初めて、
「道具を使う」
ということなのだと思います。
次に新しいツールを見つけたとき、
すぐに登録する前に、
一度だけ考えてみる。
「これで、何を変えたいんだっけ?」
もし答えがはっきりしているなら、
使ってみればいい。
もし答えが出てこないなら、
まだ必要ないのかもしれません。