道具を長く使うと、自分の仕事の弱点が見えてくる。

道具を長く使うと、自分の仕事の弱点が見えてくる。

道具を長く使っていると、その道具のことがよくわかるようになる。

どこが便利なのか。
どこが不便なのか。
どう使えば一番楽なのか。
どんな場面では使わないほうがいいのか。

でも、もう一つ見えてくるものがある。

それは、その道具を使っている「自分の仕事の癖」だ。

最近、道具について考えていると、道具そのものよりも、むしろ自分の仕事のやり方のほうが気になることが増えた。

長く使っている道具には、自分の弱点がかなり正直に残る。

目次

HHKBを使っていると、文章の書き方が見えてくる

たとえばHHKB。

使い始めたころは、キーボードそのものに慣れることに意識が向く。

キー配列が違う。
キーの位置が違う。
今まで当たり前に押していたキーが、少し違う場所にある。

最初は「このキーボード、使いにくいな」と思うこともある。

でも、しばらく使っていると、問題がキーボードだけではないことに気づく。

自分はどんなショートカットを多用しているのか。

どの作業で手が止まるのか。

文章を書くとき、どこで考えているのか。

調べものをしながら書くのか。
先に書いてから調べるのか。

コピー&ペーストが多いのか。
マウス操作が多いのか。

キーボードを長く使っていると、こういうことが少しずつ見えてくる。

つまり、道具を使い込むということは、道具の性能を理解することだけではない。

自分の仕事を観察することでもある。

「時間がかかる場所」は、弱点かもしれない

仕事をしていると、なんとなく時間がかかっている作業がある。

毎回同じファイルを探している。

同じ文章を何度も書いている。

SNSの投稿を作るたびに、過去の情報を探している。

ホームページを更新するとき、どこを触ればいいかわからなくなる。

お客様から質問されるたびに、同じ説明をしている。

こういうことは、一回だけなら大した問題ではない。

でも、何度も繰り返しているなら話は変わる。

「自分は仕事が遅い」と考える前に、

「どこで毎回止まっているんだろう」

と見てみる。

すると、そこに仕事の弱点があることがある。

そして面白いのは、その弱点が「能力不足」とは限らないことだ。

単純に、仕組みがないだけかもしれない。

仕事が遅いのではなく、探している時間が長い

たとえば、ホームページの更新に時間がかかるとする。

文章を書く能力がないから時間がかかっていると思うかもしれない。

でも実際には、

写真を探す。
過去の記事を探す。
ログイン情報を探す。
どのページを編集するか確認する。
画像サイズを確認する。
カテゴリーを確認する。
公開後の確認場所を探す。

そんな作業に時間を取られているかもしれない。

そうなると、問題は「文章を書くのが遅い」ではない。

情報が整理されていない。

作業の順番が決まっていない。

必要なものが必要な場所にない。

つまり、仕事の構造に問題がある。

これは、Webの仕事をしているとかなりよく見る。

本人は「パソコンが苦手なんです」と言う。

でも話を聞いてみると、パソコンが苦手なのではなく、

「何をどこに置けばいいのかわからない」

だけだったりする。

道具は、問題を隠すこともある

便利な道具を導入すると、一時的に仕事が楽になることがある。

便利なアプリを入れる。
AIを使う。
自動化する。
新しいサービスを契約する。

もちろん、それ自体は悪くない。

僕も新しい道具は好きだ。

ただ、少し気をつけたいことがある。

道具によって問題が見えなくなることがあるからだ。

たとえば、ファイルが整理されていないのに検索機能だけを強化する。

情報が整理されていないのに、AIに探してもらう。

仕事の手順が決まっていないのに、自動化する。

これでも、その場では仕事が進む。

でも、根本的な問題は残っている。

むしろ、道具が優秀になるほど、その問題に気づきにくくなることもある。

「困っていない」は、本当に問題がないのか

ここは少し難しいところでもある。

非効率だからといって、全部改善すればいいわけではない。

たとえば僕が、紙に書いたメモを後から整理しているとする。

今ならAIを使えば、もっと早く整理できるかもしれない。

それでも紙に書くことが、自分にとって考える時間になっているなら、単純に効率化すればいいとは思わない。

大切なのは、

「時間がかかっているか」

だけではない。

「その時間に意味があるか」

を見ることだ。

仕事には、減らしたほうがいい時間と、残したほうがいい時間がある。

ここを一緒にしてしまうと、効率化そのものが目的になってしまう。

時計を長く使うと、時間との付き合い方も見えてくる

機械式時計も似ている。

長く使っていると、時間を見るためだけの道具ではなくなってくる。

巻き上げる。

時間を合わせる。

少しずつ進み方を確認する。

定期的にメンテナンスする。

こういう小さな行為が、自分の生活の中に入ってくる。

そこで気づくのは、

「正確な時間を知る」

という機能だけでは、人が道具を選んでいる理由を説明できないということだ。

仕事も同じだと思う。

最短で終わらせることだけが、良い仕事ではない。

確認する時間。
考える時間。
人と話す時間。
あえて手を動かす時間。

そういう一見すると効率の悪い時間の中に、仕事の質を支えているものがある。

道具は、自分の仕事を映す鏡になる

長く使った道具には、持ち主の癖が残る。

キーの打ち方。
ペンの持ち方。
ノートの使い方。
時計を見るタイミング。
机の上の物の置き方。

そして、仕事のやり方にも同じような癖が残る。

いつも同じ場所で止まる。

いつも同じ作業を後回しにする。

いつも同じ情報を探す。

いつも同じところで確認が必要になる。

それは、自分の仕事の「弱点」かもしれない。

でも、弱点という言葉が少し厳しいなら、「改善できる場所」と考えてもいい。

大事なのは、見つけることだ。

Webサイトにも、仕事の癖は残る

これはWebサイトでも同じだ。

長く運営されているホームページを見ると、その会社や人がどう仕事をしてきたのかが、かなり見えることがある。

ページの増え方。

メニューの構成。

お問い合わせの流れ。

写真の使い方。

文章の長さ。

更新されているページと、されていないページ。

「とりあえず追加してきた」という歴史が、そのまま構造になっていることもある。

だから、古いWebサイトを見て、

「これはダメだから全部作り直しましょう」

とすぐに言うのは、少し違うと思っている。

なぜこうなったのか。

誰が使っていたのか。

何のために作られたのか。

どこが今も役に立っているのか。

そこを見る。

長く使われた道具には、その道具なりの理由がある。

Webサイトも同じだ。

改善とは、全部変えることではない

仕事の整理をするとき、僕が大事だと思っているのは、

「何を変えるか」

だけではない。

「何を変えないか」

も同じくらい大事だ。

今まで問題なく使えているもの。

本人が自然にできているもの。

その人らしさにつながっているもの。

お客様との関係をつくってきたもの。

そういうものまで、全部新しくする必要はない。

逆に、

毎回困っている。
誰かがいないとできない。
探すのに時間がかかる。
説明が毎回変わる。
担当者が変わると仕事が止まる。

こういう部分は、整理したほうがいい。

「新しくする」ではなく、

「残すものと変えるものを分ける」

という考え方だ。

道具を変える前に、自分を見る

新しいキーボードを買う前に、自分の入力作業を見る。

新しいアプリを入れる前に、今の仕事を見る。

新しいAIサービスを契約する前に、何に時間がかかっているのかを見る。

ホームページを作り直す前に、今のホームページがどう使われているのかを見る。

そうすると、

「道具を変えれば解決する問題」

「仕事のやり方を変えれば解決する問題」

が少しずつ分かれてくる。

ここが分かると、無駄な買い物も減るし、無駄な制作も減る。

そして何より、自分の仕事が少しわかりやすくなる。

道具は、使うほど自分を教えてくれる

道具を長く使うことには、もう一つ面白さがある。

最初は、

「この道具は何ができるのか」

を見ている。

しばらくすると、

「この道具をどう使えばいいのか」

を見るようになる。

さらに長く使うと、

「自分は、どういう使い方をしているのか」

が見えてくる。

そこまで来ると、道具は単なる道具ではなくなる。

自分の仕事や生活を観察するための、一つの窓になる。

だから僕は、道具を選ぶときだけではなく、長く使った後にも、その道具について考えてみたいと思っている。

新しいものを探すことより、

今あるものを使って、自分の仕事を見直す。

そのほうが、意外と大きな発見がある。

道具を長く使う。

その中で、自分の癖を見る。

そして、必要なところだけ少し変える。

仕事を整えるというのは、案外そういうところから始まるのかもしれない。

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