道具を捨てるとき、何を残すかを考える。

道具を捨てるとき、何を残すかを考える。

道具を長く使っていると、いつか手放すときが来る。

壊れたから。

使わなくなったから。

新しいものに替えたから。

置く場所がなくなったから。

理由はいろいろある。

でも、僕は道具を捨てるときに、少しだけ迷う。

「もう使わないんだから、捨てればいい」

というのは、理屈としては正しい。

それでも、なかなか捨てられないものがある。

それは、その道具に価値が残っているからとは限らない。

その道具と一緒に過ごした時間が残っているからだ。

目次

道具には、機能以外のものが残る

例えば、一本のペン。

今なら、もっと書きやすいペンがあるかもしれない。

もっと安いものもある。

もっと高性能なものもある。

それでも、その一本を使って書いたものがたくさんあると、簡単には手放せない。

仕事のメモ。

企画のアイデア。

誰かと話したときの記録。

最初に考えた文章。

何年も使っていると、道具そのものに記憶が付いてくる。

もちろん、全部を取っておけばいいという話ではない。

物が増え続ければ、今度は管理することが負担になる。

だから僕は、

「これは残すべきか」

よりも、

「これは何を残してくれたのか」

と考えるようになった。

捨てるのは、過去を否定することではない

古いパソコンを処分する。

昔使っていたスマートフォンを手放す。

使わなくなったケーブルを整理する。

古い書類を処分する。

こういうとき、少しだけ寂しくなることがある。

でも、考えてみれば、その道具を手放すことと、その時代を否定することは別の話だ。

そのパソコンで仕事をしていた。

そのスマートフォンで写真を撮った。

そのノートにアイデアを書いた。

その道具があったから、今がある。

だから、役目を終えた道具を手放すことは、

「いらなかった」

という意味ではない。

むしろ、

「十分に役目を果たしてくれた」

と考えてもいい。

残すべきなのは、物そのものとは限らない

ここは仕事でも重要だと思っている。

事業を整理するとき、

「昔の資料は全部残しておきましょう」

となることがある。

もちろん、必要な記録は残したほうがいい。

でも、何でも残せばいいわけではない。

古い企画書。

過去のキャンペーン資料。

使わなくなった画像。

昔のWebページ。

過去のSNS投稿。

全部を残してしまうと、今度は必要な情報を探すのが大変になる。

そこで考えたいのが、

「物を残す」のではなく、

「意味を残す」

という考え方だ。

古い資料から、何を残すのか

例えば、昔の企画書がある。

その企画自体はもう終わっている。

では、全部捨てていいのか。

そうとも限らない。

なぜその企画を始めたのか。

誰を対象にしたのか。

何がうまくいかなかったのか。

何が評価されたのか。

次にやるなら何を変えるのか。

こういう情報には価値がある。

だから、企画書そのものを永久保存する必要はなくても、

「この企画から何がわかったのか」

を短く残しておくことは意味がある。

これは、仕事の歴史を残すということでもある。

Webサイトも、全部を残す必要はない

ホームページのリニューアルでも、同じことがある。

「今までのページを全部新しいサイトに移しましょう」

という方法は、一見すると安心できる。

でも、ページが増えるほど、利用者にとっては探しにくくなる。

古い情報が混ざれば、何が最新なのかわからなくなる。

検索エンジンにとっても、似た内容のページが増えれば整理しにくい。

だからリニューアルでは、

「何を追加するか」

だけではなく、

「何を終わらせるか」

も考えたほうがいい。

残す。

統合する。

書き直す。

アーカイブする。

削除する。

選択肢はいくつもある。

サイトを新しくするというのは、ページを新しくすることではない。

情報の寿命を整理することでもある。

「残す」と「持ち続ける」は違う

ここは、個人的にも大事だと思っている。

何かを残すことと、手元に持ち続けることは同じではない。

写真なら、現物のアルバムを残す方法もある。

データとして保存する方法もある。

必要なものだけ印刷する方法もある。

思い出として覚えておく方法だってある。

仕事の資料も同じだ。

全部をいつでも手元に置く必要はない。

必要な記録を、必要な方法で残せばいい。

「保存場所を変える」という発想を持つだけでも、かなり整理しやすくなる。

仕事には「捨てられないもの」が多すぎる

小さな事業ほど、こういう問題が起きやすい。

昔から使っているExcel。

前の担当者が作ったフォルダ。

何年も前のWordファイル。

昔のロゴ。

古い名刺。

過去のSNSアカウント。

使っていないWebサービス。

契約したままのツール。

「いつか使うかもしれない」

という理由で、残り続ける。

でも、「いつか」は便利な言葉でもある。

いつか使う。

いつか整理する。

いつか確認する。

いつか更新する。

その「いつか」が何年も来ないことがある。

使っていないものには、管理コストがある

物理的な道具なら、場所を取る。

デジタルなら、場所を取らない。

だからデジタルは増えやすい。

でも、場所を取らないからコストがないわけではない。

アカウントを管理する。

パスワードを管理する。

更新メールが届く。

請求が発生する。

誰が使っているかわからなくなる。

古い情報が残っている。

必要な情報を探すときに邪魔になる。

つまり、使っていないものにも「管理コスト」がある。

これは意外と大きい。

道具を減らすと、判断も減る

机の上にペンが20本ある。

その中から一本を選ぶ。

毎回それをやる必要はない。

普段使う一本を決めてしまえばいい。

パソコンの中に画像編集ソフトが5つ入っている。

どれを使うか毎回考える。

これも小さな判断だ。

Webサービスも同じ。

SNSがたくさんある。

連絡手段がたくさんある。

ファイルの保存場所がたくさんある。

決済サービスも複数ある。

便利そうに見えて、実は判断する場所が増えているだけかもしれない。

道具を減らすことには、

「物を減らす」

以上に、

「選択肢を減らす」

という意味がある。

ただし、減らしすぎる必要もない

ここは難しいところだ。

シンプルにすれば、必ず良くなるわけではない。

仕事によっては複数のツールが必要だ。

複数のSNSを使う意味もある。

紙とデジタルを併用したほうがいい場合もある。

複数のカメラやレンズが必要な人もいる。

だから、

「一つにまとめましょう」

というのも、万能な答えではない。

大事なのは、

「なぜ複数あるのか」

を説明できることだと思う。

役割が違うなら、複数あっていい。

違いが説明できないなら、一度整理してみる。

それくらいでいい。

「捨てる」より「役割を終える」と考える

僕は最近、

「捨てる」

という言葉より、

「役割を終える」

と考えるほうがしっくりくる。

その道具には、その道具の仕事があった。

そのサービスにも、そのサービスの役割があった。

そのページにも、そのページが必要だった時期があった。

でも、状況が変わった。

役割が終わった。

それだけのことかもしれない。

これは、事業でも同じだ。

昔は必要だった商品。

昔は必要だったサービス。

昔は必要だったページ。

昔は必要だった作業。

今も本当に必要なのか。

一度見直してみる。

役割を終えたものを残すと、次のものが見えにくくなる

新しいことを始めるためには、何かを追加する必要があると思いがちだ。

新しい商品。

新しいSNS。

新しいWebサイト。

新しいサービス。

新しいツール。

でも、実際には逆の場合もある。

古いものを一つ終わらせる。

使っていないサービスを解約する。

不要なページを整理する。

役割が重なっているものを一つにする。

そうすると、新しく何かを始めなくても、少し余白が生まれる。

その余白が、次の仕事を始める場所になる。

「何を捨てるか」は「何を大切にするか」でもある

結局、整理というのは、減らすことだけではない。

何を残すのかを決めることだ。

そして、何を残すのかを決めるためには、

「自分は何を大切にしたいのか」

を考える必要がある。

スピードを大切にする人なら、時間のかかる作業を減らす。

正確さを大切にするなら、確認の仕組みを残す。

人との関係を大切にするなら、効率だけでは消せない時間を残す。

ブランドを大切にするなら、過去の積み重ねを記録として残す。

人によって、残すものは違う。

だから、他人の整理術をそのまま持ち込んでも、うまくいかないことがある。

道具を手放すとき、自分の現在地がわかる

道具を捨てることは、過去を捨てることではない。

むしろ、

「今の自分には何が必要なのか」

を確認する作業なのだと思う。

昔の自分には必要だった。

今の自分には必要ない。

それがわかるだけでも、十分意味がある。

そして、残したものを見ると、

「自分はこれを大切にしているんだな」

ということも見えてくる。

道具の整理は、物の整理で終わらない。

仕事の整理にもなる。

情報の整理にもなる。

そして、自分自身の整理にもなる。

だから、たまには道具箱を開けてみる。

「これはまだ使う?」

と一つずつ見てみる。

すぐに捨てなくてもいい。

ただ、

「今の自分に、この道具の役割は残っているだろうか」

と考えてみる。

それだけでも、少しずつ身の回りの構造が変わっていく。

そして、何かを手放したあとに残ったものは、

「捨てられなかったもの」

ではなく、

「これからも使いたいもの」

なのかもしれない。

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