道具は、どこに置くかで使い方が変わる。仕事の環境をつくるということ
同じ道具でも、置いてある場所が違うと、使い方が変わる。
机の上にある。
引き出しの中にある。
棚の奥にある。
すぐ手が届く場所にある。
少し立ち上がらないと取れない場所にある。
たったそれだけの違いなのに、使う頻度が変わる。
そして、使う頻度が変わると、仕事の流れも変わる。
最近、仕事の道具について考えるとき、僕は「何を使うか」だけではなく、「どこに置くか」をかなり意識するようになった。
道具は、持っているだけでは仕事をしてくれない
例えば、よく使うペンがあるとする。
毎日使うのに、引き出しの奥に入れている。
使うたびに引き出しを開ける。
取り出す。
書く。
終わったら戻す。
一回ならたいしたことはない。
でも、それを一日に何度も繰り返していたらどうだろう。
たぶん、そのうち面倒になる。
そして、別のペンを使うようになる。
ペンそのものが悪いわけではない。
置き場所が悪いだけだ。
「使わない」のではなく、「使いにくい」のかもしれない
仕事でも、似たようなことがある。
便利なツールを導入した。
でも、誰も使わない。
高機能なサービスを契約した。
でも、更新されない。
共有フォルダを作った。
でも、ファイルが入ってこない。
こういうとき、
「みんな使わないな」
で終わってしまうことがある。
でも、一度考えてみたい。
本当に使う必要がないのか。
それとも、使うまでの手順が面倒なのか。
ログインが必要なのか。
どこにあるのか分からないのか。
使い方が分からないのか。
そもそも、使う場面が決まっていないのか。
「使わない」と「使いにくい」は、似ているようで全然違う。
人は、近いものを使いやすい
机の上にあるものは、自然と手に取る。
スマートフォンが目の前にあれば、つい見る。
お菓子が机の上にあれば、つい食べる。
逆に、箱の中にしまってあるものは、必要にならない限り出さない。
当たり前の話に見える。
でも、仕事の環境を作るときには、意外と忘れられている。
「必要だから置く」
だけではなく、
「使ってほしいから、使いやすい場所に置く」
という考え方がある。
机の上は、小さな情報設計
僕の仕事では、情報設計という言葉をよく使う。
情報を、
どこに置くか。
どの順番で見せるか。
どこからアクセスするか。
何を目立たせるか。
これはWebサイトだけの話ではない。
机の上も、ある意味では情報設計だと思う。
モニター。
キーボード。
マウス。
ノート。
ペン。
スマートフォン。
飲み物。
書類。
これらが全部同じ場所に置かれていても、使いやすいとは限らない。
何をどこに置くかによって、手の動きが変わる。
視線の動きが変わる。
そして、仕事の流れが変わる。
「よく使うもの」は、近くに置く
これはシンプルだけれど、かなり強いルールだと思う。
毎日使うものは近く。
週に一度使うものは少し離す。
月に一度なら収納する。
たまにしか使わないなら、別の場所でもいい。
全部を手元に置こうとすると、机がいっぱいになる。
逆に、全部を収納すると、今度は取り出すのが面倒になる。
だから、使用頻度で距離を変える。
これだけでも、かなり変わる。
「目に入る場所」には意味がある
机の上に置いてあるものは、必ず目に入る。
だから、そこには「今の自分が見るべきもの」を置いたほうがいい。
仕事で使う資料。
今日やること。
よく使うノート。
必要な道具。
逆に、今必要ではないものまで視界に入っていると、頭の中にも入り込んでくる。
机の上に昔の資料がある。
終わった仕事のメモがある。
読んでいない本がある。
買ったまま使っていない道具がある。
それを見るたびに、脳のどこかで、
「これ、まだやってないな」
と反応する。
小さなことだけれど、積み重なる。
だから、机の上は「今」を置く
僕は机の上を完全に何もない状態にしたいわけではない。
むしろ、ある程度ものがあるほうが落ち着く。
ただ、
「今の仕事に関係するもの」
が中心になっているほうがいいと思っている。
終わったものは片づける。
あとで使うものは所定の場所へ移す。
今考えていることは、紙に残す。
必要な道具だけを手元に置く。
そうすると、机そのものが「今やっていること」を教えてくれる。
Webサイトのトップページも同じ
これはWebサイトにもそのまま当てはまる。
トップページには、何でも置ける。
会社紹介。
サービス。
ブログ。
ニュース。
SNS。
採用情報。
商品。
イベント。
問い合わせ。
全部置こうと思えば置ける。
でも、全部置いたら、何を見ればいいのか分からなくなる。
だから、
「このサイトを訪れた人に、まず何を見てほしいのか」
を決める。
それを一番見やすい場所に置く。
つまり、Webサイトのトップページも「机の上」なのだ。
ナビゲーションは、引き出しに近い
Webサイトのメニューも面白い。
すべての情報をトップページに置く必要はない。
必要なものは、メニューから取り出せればいい。
これは机の引き出しに似ている。
よく使うものは机の上。
たまに使うものは引き出し。
ほとんど使わないものは収納。
Webサイトも同じだ。
全部をトップページに出すのではなく、
「必要な人が、必要なときに見つけられる」
ようにする。
これが情報設計だと思う。
すべてを見せることは、親切とは限らない
Webサイトを作るとき、
「情報は多いほうが親切ですよね」
と言われることがある。
確かに、必要な情報がないのは困る。
でも、情報が多すぎると、今度は探せなくなる。
例えばホテルの部屋に、
「使うかもしれないもの」を100個置かれていたらどうだろう。
歯ブラシ。
タオル。
ドライヤー。
充電器。
お茶。
コーヒー。
説明書。
パンフレット。
地域情報。
クーポン。
その他いろいろ。
便利そうだけれど、必要なものを探すだけで疲れる。
だから、必要なものを必要な場所に置く。
それが親切なのだと思う。
仕事のツールも「入口」を決める
僕は、仕事で使うサービスが増えたら、
「どこから入るか」
をなるべく決めるようにしている。
例えば、
メールはここ。
ファイルはここ。
スケジュールはここ。
タスクはここ。
Webサイトはここ。
SNSはここ。
請求関連はここ。
全部を一つの場所にまとめる必要はない。
むしろ、それぞれ専門の道具を使ったほうがいい場合もある。
でも、
「どこを見ればいいか分からない」
状態にはしない。
入口を決めるだけでも、かなり楽になる。
「探す時間」は、仕事の時間ではない
ファイルを探している。
ログイン情報を探している。
過去のメールを探している。
画像を探している。
「あのページ、どこだっけ?」
と検索している。
もちろん、これも仕事の一部ではある。
でも、できれば減らしたい時間だ。
なぜなら、何かを生み出している時間ではないからだ。
もちろん、検索そのものが必要な仕事もある。
でも、
「自分で作ったものを自分で探す」
という状態は、仕組みで改善できることが多い。
置き場所を決めると、判断が減る
整理の良さは、片づいて見えることではない。
判断しなくてよくなることだと思っている。
「これはどこに置こう」
を毎回考えなくていい。
「この資料はどこ?」
と聞かなくていい。
「最新の画像はどれ?」
と探さなくていい。
ルールが決まっていれば、自然に戻せる。
これは、仕事を属人化させないためにも大切だ。
「自分しか分からない場所」は、意外と危ない
小さな事業では、
「僕は分かっているから大丈夫」
という状態になりやすい。
パソコンの中にある。
自分なら分かる。
このフォルダに入っている。
このアカウントを使えばいい。
この人に聞けば分かる。
でも、それでは自分が休んだときに止まってしまう。
本人にとって当たり前のことを、他の人には分からない。
だから、置き場所を決める。
名前を付ける。
共有する。
必要なら簡単な説明を残す。
これは、会社を大きくするためだけの話ではない。
一人で仕事を続けるためにも役に立つ。
道具の「住所」を決める
僕は、これを「道具の住所を決める」と考えると分かりやすいと思っている。
ペンはここ。
ノートはここ。
仕事のファイルはここ。
写真はここ。
契約書はここ。
SNSの素材はここ。
Webサイトのログイン情報はここ。
住所が決まっていれば、戻せる。
戻せれば、次に使う人も困らない。
そして、自分自身も迷わない。
住所がないものは、だんだん迷子になる
机の上に置いた書類。
ダウンロードフォルダに残した画像。
デスクトップに置いたPDF。
スマートフォンに残した写真。
LINEで送られてきた資料。
メールに添付されたファイル。
その場では便利だ。
でも、数ヶ月後に必要になったとき、
「どこだっけ?」
になる。
そのとき初めて、「住所がなかった」ことに気づく。
置き場所は、未来の自分のために作る
整理するとき、僕は今の自分だけを見ないようにしている。
未来の自分が困らないか。
半年後の自分が見つけられるか。
誰かに引き継げるか。
忙しくなっても維持できるか。
ここまで考える。
整理というのは、今きれいにすることではなく、
「あとで迷わない状態を作ること」
でもあるからだ。
道具は、使う人との距離まで設計する
結局、道具選びも環境づくりも、全部つながっている。
何を使うか。
どこに置くか。
いつ使うか。
誰が使うか。
どう戻すか。
どこからアクセスするか。
何を見せるか。
何を見せないか。
これを考えていくと、単なる「デスク環境」の話ではなくなる。
仕事そのものの設計になる。
便利な道具を買うより、机の上を10cm動かす
大げさな話ではない。
キーボードを少し手前に置く。
モニターを少し上げる。
ペンを右側に置く。
ノートを左側に置く。
スマートフォンを少し遠ざける。
よく使うものを一つだけ手元に残す。
それだけでいい。
新しい道具を買わなくても、仕事のしやすさは変わる。
僕は、こういう小さな調整が結構好きだ。
「最適な配置」は、人によって違う
もちろん、万人に共通する正解はない。
右利きと左利きでも違う。
紙を書く人と、ほとんど書かない人でも違う。
電話をよく使う人と、ほとんど使わない人でも違う。
モニターを一枚使う人と三枚使う人でも違う。
だから、
「このデスク環境が正解」
という話ではない。
大事なのは、
「自分は何をよく使っているのか」
を観察することだ。
自分の手の動きを見る
仕事中に一度、自分の動きを観察してみる。
どの道具を何回使っているか。
どこを何度も探しているか。
どこで手が止まるか。
どの画面を何度も開いているか。
どの作業で迷うか。
そこに改善のヒントがある。
「もっと高性能な道具が必要」
ではなく、
「今の道具の置き方を変えたらいい」
という答えが見つかるかもしれない。
道具箱は、使う人に合わせて変わっていく
仕事のやり方は、ずっと同じではない。
仕事内容が変わる。
お客さんが変わる。
使うサービスが変わる。
生活も変わる。
だから、机も道具箱も固定する必要はない。
使いにくくなったら変える。
使わなくなったら遠ざける。
よく使うようになったら近づける。
必要なら、新しい道具を入れる。
つまり、環境も運用する。
完璧なデスクより、調整できるデスク
僕は、完璧な仕事環境を作ろうとは思っていない。
完璧にすると、逆に変えにくくなるからだ。
少し余白がある。
動かせる。
試せる。
戻せる。
そんな環境のほうがいい。
これは、電動昇降デスクの記事でも書いたけれど、
「完璧より、調整できる」
という考え方は、かなり大切だと思っている。
Webサイトも、完成して終わりではない
サイトを公開した瞬間を「完成」と考えてしまうと、その後の変化に弱くなる。
事業が変わる。
サービスが増える。
不要になるものもある。
スタッフが変わる。
問い合わせ内容も変わる。
だから、Webサイトも調整する。
メニューを変える。
ページを整理する。
古い情報を消す。
必要な情報を追加する。
それは、デスクの配置を変えるのと似ている。
使っているうちに、
「ここはもう少しこうしたほうがいい」
が見えてくる。
道具は、環境の中で初めて生きる
どんなにいい道具でも、置き場所が悪ければ使いにくい。
どんなに優れたWebサービスでも、運用方法がなければ定着しない。
どんなに良いWebサイトでも、更新できなければ古くなる。
だから僕は、道具そのものだけを見るのではなく、
「その道具が、どんな環境の中で使われるのか」
を見るようにしている。
ペリカンの万年筆も、
ロディアも、
HHKBも、
MX Ergoも、
モニターも、
Macも、
iPhoneも、
単体で仕事をしているわけではない。
全部が、自分の仕事の流れの中にある。
そして、Webサイトも同じだ。
Webサイトだけを良くするのではなく、
SNSとのつながり。
問い合わせとのつながり。
商品の販売とのつながり。
日々の更新とのつながり。
実際の仕事とのつながり。
そこまで考えて、初めて「使えるWeb」になる。
道具を選ぶ。
道具を減らす。
道具を置く。
道具を使う。
道具を見直す。
この繰り返しが、仕事の環境をつくっていく。
だから今日は、新しい道具を探す前に、
机の上を少しだけ見てみようと思う。
よく使うものは、ちゃんと手の届くところにあるか。
使っていないものが、場所を取り続けていないか。
探しているものが、いつも同じではないか。
そして、
「これは、どこに置けば一番使いやすいだろう」
と考えてみる。
新しいものを買わなくても、
少し動かすだけで変わることがある。
仕事も。
机も。
Webサイトも。
道具は、持っているだけでは仕事をしてくれない。
置き場所が決まり、
役割が決まり、
使う人との距離が決まったとき、
初めて、その道具はちゃんと働き始める。
おまつの道具箱。
次に何を入れるかを考える前に、
今ある道具を、どこに置くか。
そんなことも、たまには考えてみたい。