道具の欠点を知ると、使い方がうまくなる。
道具を選ぶとき、僕たちはつい「何ができるか」を見ます。
速い。
高性能。
便利。
多機能。
新しい。
評判がいい。
もちろん、それも大事です。
でも、長く使っている道具ほど、僕は別のところを見るようになりました。
「この道具は、何が苦手なんだろう。」
実は、道具の欠点を知ることは、その道具を上手に使うための大事な情報だったりします。
完璧な道具は、たぶんない
どんな道具にも得意不得意があります。
HHKBは、最初から誰にでも打ちやすいキーボードではありません。
一般的なキーボードとキー配列が違うので、慣れるまで戸惑う人もいるでしょう。
でも、その特徴を知って使えば、
「これは文章を書く仕事に向いている」
「自分はこの配列に慣れているから、こう使おう」
という判断ができます。
ギターもそうです。
GibsonとFenderを比べて、
「どちらが優れているか」
だけで決めようとすると、話がおかしくなります。
音も違う。
弾き心地も違う。
重さも違う。
操作感も違う。
それぞれに、得意なことと苦手なことがあります。
だからこそ、
「このギターなら、こういう場面で使おう」
と考えられる。
道具の欠点は、必ずしも欠点のままではありません。
使う人が、その特徴を理解した瞬間に「個性」になることがあります。
欠点を知らないほうが、危ない
仕事で使う道具についても、これは同じです。
たとえばWebサービス。
「これ一つで全部できます」
というサービスがあったとしても、本当に全部任せていいとは限りません。
どこかに、
・細かい設定が苦手
・別サービスとの連携が弱い
・担当者が変わると分かりにくい
・データを移しにくい
・自由度が低い
・逆に自由すぎて設定が複雑
といった特徴があるかもしれません。
問題なのは、欠点があることではありません。
欠点を知らないまま使うことです。
得意なことしか知らなければ、
「なんでここだけうまくいかないんだろう」
と、必要以上に悩むことになります。
逆に、
「この道具は、ここが苦手」
と最初から分かっていれば、別の方法を考えられます。
道具を責めなくていい。
自分を責めなくてもいい。
単純に、役割を変えればいい。
これは結構大きな違いです。
Webサイトにも「苦手」がある
Webサイトも万能ではありません。
Webサイトを作れば、すべての問題が解決するわけではありません。
認知を広げるならSNSが強いこともある。
細かなやり取りならLINEのほうが向いていることもある。
商品を売るならECサービスのほうが管理しやすい場合もある。
地域で知ってもらうなら、Googleマップや口コミのほうが重要な場面もある。
問い合わせを増やしたいのに、ただページ数を増やしても解決しないことがあります。
ここで大切なのは、
「Webサイトを作るかどうか」
だけではありません。
「何をWebサイトに任せるのか」
を決めることです。
これは道具選びとまったく同じです。
「できること」より「任せないこと」を決める
僕がWebや仕組みを整理するとき、最近かなり意識するのが、
「これは何をするためのものか」
だけではなく、
「これは何をしないのか」
ということです。
たとえば、
ホームページは会社や活動の全体像を伝える。
SNSは日々の動きや人柄を伝える。
オンラインショップは商品の購入を受け付ける。
LINEは継続的な連絡に使う。
Googleマップは場所や営業情報を伝える。
それぞれに役割があります。
全部を一つにまとめようとすると、かえって分かりにくくなることがあります。
逆に、役割が決まれば、
「これはここまででいい」
と判断できます。
これは仕事を楽にします。
欠点があるから、使い方が決まる
道具の欠点を知ると、工夫が生まれます。
僕はそれが、道具を使い込むということなんじゃないかと思っています。
最初は、
「この機能が足りない」
と思っていたことが、
「じゃあ、こう使えばいい」
に変わっていく。
「ちょっと面倒だな」
と思っていたことが、
「この作業は最初にまとめてやろう」
に変わっていく。
「ここは苦手だな」
と思っていたことが、
「ここだけ別の道具に任せよう」
に変わっていく。
道具そのものが変わらなくても、使い方は変えられます。
むしろ、長く使っている道具ほど、
「この道具のクセなら分かる」
という感覚が出てきます。
欠点を消そうとしすぎない
最近は、何か問題があるとすぐに、
「もっといいツールはないか」
と検索できます。
AIに聞くこともできます。
便利な時代です。
でも、ここには少し落とし穴があります。
今使っている道具に一つ不満がある。
検索する。
もっと高機能な道具を見つける。
乗り換える。
また覚える。
設定する。
データを移す。
そして、新しい道具にも別の欠点がある。
これを繰り返していると、
仕事を楽にするための道具選びそのものが、仕事になってしまいます。
だから僕は、
「この欠点は、本当に乗り換えるほどの問題なのか」
と考えるようにしています。
多少の不便なら、そのまま使う。
大きな問題なら変える。
その境界を考える。
これだけでも、道具との付き合い方はかなり変わります。
人間にも得意不得意がある
これは道具だけの話ではありません。
人にも得意不得意があります。
文章を書くのが得意な人。
人と話すのが得意な人。
細かい作業が得意な人。
全体を見るのが得意な人。
新しいことを始めるのが得意な人。
続けることが得意な人。
だから仕事でも、
「一人ですべてやる」
ことが必ずしも正解ではありません。
自分の苦手を知る。
相手の得意を知る。
道具の得意を知る。
そのうえで役割を分ける。
僕がWebの仕事で「整理」を大切にしているのも、たぶん同じ理由です。
何でもできる仕組みを作るより、
「これは誰が、何をするのか」
が分かる仕組みのほうが、長く続きます。
「使いこなす」は、全部できることではない
道具を使いこなすというと、
すべての機能を知っていることのように思われがちです。
でも、僕は少し違うと思っています。
使いこなすとは、
「できないことを知っていること」
でもある。
この道具では、ここまで。
自分はここまで使う。
これは別の道具に任せる。
ここは手作業でいい。
ここは自動化する。
そこまで決められたら、十分に使いこなしていると思います。
機能を全部覚える必要はありません。
使わない機能を無理に使う必要もありません。
むしろ、
「これは使わない」
と決めることも、道具との付き合い方の一つです。
欠点を知ると、道具に振り回されなくなる
道具に振り回されるときは、
「道具に合わせて仕事を変えている」
ことがあります。
本当はやりたいことがある。
でも、そのサービスではこういう設定だから。
このツールではこういう仕様だから。
このSNSではこうだから。
そんな理由で、いつの間にか目的より道具が前に出てしまう。
そこで一度、
「この道具は何が得意で、何が苦手なのか」
と考えてみる。
すると、少し距離が取れます。
道具は主人ではありません。
仕事をするためのものです。
だから、道具の特徴を知ったうえで、
使う。
使わない。
組み合わせる。
やめる。
を自分で決めればいい。
欠点まで知って、初めて「自分の道具」になる
新品の道具には、まだ自分との関係がありません。
使ってみる。
失敗する。
ちょっと困る。
工夫する。
慣れる。
そして、
「ここは苦手だけど、こう使えばいい」
という自分なりの答えができてくる。
その頃には、ただの商品ではなくなっています。
少しくらい不便でも手放したくない。
クセはあるけれど使いやすい。
他の人には勧めにくいけれど、自分にはちょうどいい。
そういう道具があります。
僕は、そういう道具が結構好きです。
完璧だから好きなのではない。
欠点まで分かっているから、使いやすい。
人も、仕事も、仕組みも、たぶん似ています。
全部を完璧にする必要はない。
苦手なところを知って、
得意なところを活かして、
必要なら誰かや別の道具に任せる。
そのほうが、無理なく続きます。
道具選びで大切なのは、
「一番いいものを探すこと」
だけではありません。
「自分にとって、どこまでなら許せるか」
を知ることなのかもしれません。
そしてそれは、Webサイトや仕事の仕組みを考えるときにも、かなり役に立ちます。
便利なものを増やす前に。
新しいものへ乗り換える前に。
一度、今使っている道具の「苦手なところ」を見てみる。
そこに、その道具との付き合い方を変えるヒントがあるかもしれません。