僕が「おまつの道具箱」を続ける理由。
「おまつの道具箱」という名前で、道具について書き始めて、気づけばいろいろなものを書いてきた。
HHKB。
ロディア。
機械式時計。
モンブランのボールペン。
GibsonとFender。
Marshall。
Mac。
MX Ergo。
モニターアーム。
電動昇降デスク。
モニターライト。
iPhone。
ペリカンの万年筆。
そして、AI。
こうして並べると、ずいぶんバラバラだ。
キーボードと時計に何の関係があるのか。
ギターとWebサイトに何の関係があるのか。
万年筆と仕事の仕組みに何の関係があるのか。
たぶん、普通に考えれば関係ない。
でも、僕の中では、全部つながっている。
道具の話をしたかったわけではない
最初から「道具について詳しい人になろう」と思っていたわけではない。
そもそも、僕は道具の専門家ではない。
キーボードの専門家でもない。
時計の専門家でもない。
文房具の専門家でもない。
ギターの専門家でもない。
まして、最新ガジェットを全部追いかけているわけでもない。
それでも、道具について書きたくなった。
なぜか。
道具を見ていると、その向こう側にいる「人」が見えるからだ。
同じ道具でも、人によって意味が違う
HHKBを使っている人が全員、同じ理由で使っているわけではない。
万年筆を使う人もそう。
機械式時計を選ぶ人もそう。
Macを使う人もそう。
「これが一番いい道具です」
という答えは、案外存在しない。
ある人には最高でも、別の人には合わない。
性能が高いからといって、使いやすいとは限らない。
価格が高いからといって、価値が高いとも限らない。
逆に、安い道具だからといって価値が低いわけでもない。
結局、
「誰が、何のために、どこで、どう使うのか」
によって変わる。
これは、僕がWebの仕事をしてきて感じていることと、かなり近い。
Webサイトも、同じだと思う
「このホームページが正解です」
というものはない。
大企業のサイトと、小さな個人店のサイトは違う。
飲食店と工務店では違う。
ネットショップと士業では違う。
地域で商売をしている人と、全国から仕事を受ける人でも違う。
必要な情報も違う。
お客様との距離も違う。
更新できる時間も違う。
使える予算も違う。
だから、他人の成功例をそのまま持ってきても、うまくいくとは限らない。
大切なのは、
「その人には、なぜそれが必要だったのか」
を見ることだと思う。
道具選びは、仕事の設計に似ている
僕が道具について考えるとき、いつも気になるのは、
「何ができるか」
だけではない。
「何をしなくていいようになるか」
も気になる。
便利な道具を使えば、作業が一つ減ることがある。
でも、別の管理作業が増えることもある。
新しいサービスを導入すれば、仕事が早くなるかもしれない。
でも、覚える時間が必要になる。
AIを使えば文章を作る時間は減るかもしれない。
でも、何を書くべきかを決める仕事は残る。
だから、
「便利だから使う」
だけでは足りない。
その道具によって、仕事全体がどう変わるのかを見る。
これはWebサイトや業務の整理でも同じことだ。
僕が仕事でやっていることも、実は「道具箱」に近い
僕の仕事は、Webサイトを作ることだけではない。
SNSの整理をすることもある。
情報を整理することもある。
オンラインショップを整えることもある。
使っているサービスを確認することもある。
誰が何を担当するのかを整理することもある。
更新方法を考えることもある。
場合によっては、
「そもそも今のやり方を変えたほうがいいんじゃないか」
というところから考える。
つまり、何か一つの道具を売る仕事ではない。
その人の仕事に必要な道具を、一緒に選び直すような仕事に近い。
「全部できる」は、意外と危ない
Webの世界では、いろいろなサービスがある。
ホームページ。
SNS。
Google。
オンラインショップ。
予約システム。
メール。
チャット。
クラウドストレージ。
決済。
AI。
それぞれが便利だ。
でも、全部使えばいいわけではない。
むしろ、全部使おうとすると、何がどこにあるのかわからなくなる。
お客様から見ても、
「どこを見ればいいの?」
となる。
本人も、
「何を更新すればいいんだっけ?」
となる。
だから僕は、
「使えるものを増やす」
より、
「必要なものを、必要な場所に置く」
ほうが大事だと思っている。
これは机の上でも、パソコンの中でも、Webサイトでも同じだ。
道具には、それぞれ役割がある
バンドをやっていた経験があるからかもしれない。
ギターにはギターの役割がある。
ベースにはベースの役割がある。
ドラムにはドラムの役割がある。
ボーカルにはボーカルの役割がある。
全部が同じことをやったら、たぶん音楽はうまくいかない。
Webも似ている。
ホームページにはホームページの役割。
SNSにはSNSの役割。
メールにはメールの役割。
オンラインショップにはショップの役割。
AIにはAIの役割。
紙には紙の役割。
人には、人にしかできない役割がある。
道具を増やすことより、役割を整理する。
僕はそこに興味がある。
「道具に振り回されない」ということ
便利な道具が増えるほど、
「使わなければ損」
という感覚も強くなる。
新しいSNSが出た。
やったほうがいい。
新しいAIが出た。
使ったほうがいい。
新しい機能が追加された。
設定したほうがいい。
でも、本当にそうだろうか。
使わないという選択もある。
古い方法を残すこともある。
紙に書くこともある。
電話することもある。
直接会うこともある。
あえて手作業にすることもある。
便利な時代だからこそ、
「使わない」
という判断も、ちゃんと持っておきたい。
道具を好きになることと、道具に依存することは違う
僕は道具が好きだ。
好きなものは、長く使いたい。
触ったときの感覚も大事にしたい。
デザインも気になる。
音も気になる。
質感も気になる。
だからといって、道具が仕事の中心になってはいけないと思っている。
道具は、自分の代わりに人生を生きてくれない。
仕事をしてくれるわけでもない。
最終的に、
「何をしたいのか」
を決めるのは人だ。
だから、道具は好きでいい。
でも、主役にはしない。
「おまつの道具箱」は、レビューサイトではない
だから、このシリーズを普通のレビューサイトにはしたくない。
「このキーボードがおすすめです」
「このパソコンが最強です」
「このAIを使えば仕事が10倍速くなります」
みたいな話をする場所ではない。
もちろん、実際に使って感じたことは書く。
良かったところも書く。
気になったところも書く。
向いていないと思う人についても書く。
でも、最後に考えたいのは、
「この道具を買うべきか」
だけではない。
その道具を通して、
「自分は、どう仕事をしたいのか」
を考えること。
それが、この道具箱の目的だ。
道具の話をすると、自分の仕事が見えてくる
例えば、モニターアームについて書いたとき。
最初は机の話だった。
でも、考えているうちに、
「必要なものを必要な場所に置く」
という話になった。
これはWebサイトのナビゲーションにも似ている。
モニターライトについて書いたときは、照明の話だった。
でも、そこから、
「何を見るべきかを整える」
という話になった。
これはWebページの情報設計にもつながる。
機械式時計について書いたときは、時計の話だった。
でも、
「効率が悪いことにも意味がある」
という話になった。
これは仕事の進め方にもつながる。
道具を入口にすると、意外といろいろなものが見えてくる。
そして、道具には「人」が残る
長く使われた道具には、その人の癖が残る。
机の傷。
ペンの減り方。
キーボードの使い方。
時計の傷。
ギターの塗装。
ノートの書き方。
そういうものを見ると、
「この人は、これを大切に使ってきたんだな」
と感じることがある。
Webサイトにも、同じようなものが残る。
文章の癖。
写真の選び方。
サービスの作り方。
お客様への接し方。
更新の仕方。
それまで積み重ねてきた仕事が、どこかに残っている。
だから、Webサイトを整理するときも、単純に新しくすればいいとは思わない。
残すべきものを探す。
いらないものを手放す。
必要なものを組み直す。
その人らしさを残しながら、使いやすくする。
これも「道具箱」の考え方につながっている。
これからも、たぶん道具は増える
新しいキーボードを買うかもしれない。
新しい時計が欲しくなるかもしれない。
新しいAIを試すかもしれない。
新しいノートを見つけるかもしれない。
それは、それでいいと思っている。
道具を減らすことが目的ではない。
道具を増やさないことが正義でもない。
大切なのは、
「なぜ、それを選ぶのか」
を自分でわかっていること。
そして、
「今の自分には必要ない」
と判断できること。
どちらも同じくらい大切だと思う。
道具箱の中身は、自分の現在地
結局、道具箱に入っているものを見ると、その人が何を大切にしているのかが少し見える。
僕の道具箱にも、
考えるためのもの。
書くためのもの。
働くためのもの。
楽しむためのもの。
時間を感じるためのもの。
いろいろ入っている。
それは、たぶん僕自身の現在地でもある。
仕事だけではない。
趣味だけでもない。
効率だけでもない。
好きという気持ちだけでもない。
その全部が混ざっている。
だから「おまつの道具箱」は、これからも続けていきたい。
新しい道具を紹介するためだけではなく、
道具を入口にして、
仕事のこと。
Webのこと。
情報のこと。
仕組みのこと。
そして、自分らしく働くことについて考える。
そんな場所にしていきたい。
道具は、人生を変えてくれる魔法ではない。
でも、自分が何を大切にしているのかを教えてくれることがある。
そして、仕事のやり方を少し変えてくれることもある。
だから僕は、これからも道具を見る。
買うこともある。
買わないこともある。
使い続けることもある。
手放すこともある。
そのたびに、
「これは、自分の仕事や暮らしに何をもたらしてくれるんだろう」
と考えてみる。
たぶん、それが僕にとっての「おまつの道具箱」なのだと思う。