こんにちは、おまつこと松井良幸です。最近、SNSを見ていて「なんだ、この人は?」と思わず手を止めてしまうアカウントに出会いました。それが、Instagramの「abu.shalab」です。特徴的な髪型、口ひげ、白い服。そして、なんとも説明しにくい独特の存在感。短い動画の中で踊ったり、さまざまな格好をしたりするキャラクターが、短期間で大きな注目を集めました。2026年10月に公開された分析記事では、アカウント開設から短期間で数十万規模のフォロワーを獲得し、動画の再生数も大きく伸びたと報じられています。この人物は実在するのか、それともAIなのか。公開情報からは、AIによって生成されたキャラクターである可能性が高いと考えられています。ただし、アカウントの運営者や制作体制の詳細まで、すべて明らかになっているわけではありません。僕が面白いと思ったのは、AIで人物を作れるという技術の話だけではありません。なぜ、このキャラクターは人の目を止め、記憶に残るのか。今回は、abu.shalabの現象を「キャラクター」「SNS」「ブランド」「収益化」という4つの角度で整理してみます。
人は、必ずしも「すごいもの」を見たいわけではない
abu.shalabの特徴は、ひと目で認識しやすいことです。髪型、口ひげ、服装、表情、動き。細かい設定を知らなくても、数秒で「あの人だ」と認識できる要素があります。記憶に残るキャラクターの要素は、ひと目で識別できる特徴、何度見ても同じキャラクターだと分かる一貫性、説明しすぎなくても気になる余白、繰り返し見たくなる動きや状況、といったところです。ここで考えたいのは、キャラクターの完成度と、記憶への残りやすさは、必ずしも同じではないということです。精巧で美しいデザインでも、ほかのキャラクターと見分けがつかなければ、流れていく投稿の中で埋もれてしまいます。反対に、少し変わっていて、ひと目で識別できる存在は、記憶に残る入口をつくれます。目立つことと、覚えられることは違う。目立つ投稿は一瞬で流れていくかもしれない。でも、覚えられる特徴は、次の投稿を見つける手がかりになります。
AIの強みは、制作費の削減だけではありません。同じキャラクターを、違う状況に何度も登場させられること。今日は踊る、次は違う服装、今度は別のシチュエーション。キャラクターの核を保ちながら、投稿ごとに変化をつけられる。これは、継続的なコンテンツ制作と相性がいい仕組みです。ただし、AIで大量に作れば必ず伸びるわけではありません。一貫性が崩れたり、内容が似たり寄ったりになったりすれば、見飽きられる可能性もあります。大事なのは、AIを使うこと自体ではなく、何を固定し、何を変えるのかを設計することです。固定するものは、顔立ち、シルエット、性格の核、世界観、口調など。変化させるものは、衣装、動き、場所、シチュエーション、投稿の切り口など。この分け方ができていれば、投稿を増やしてもブランドがばらばらになりにくいのです。
伸びることと、ブランドが育つことは同じではない
動画が何千万回も再生される、フォロワーが急増する。これは、認知を獲得するという意味では大きな成果です。しかし、再生数が伸びたからといって、そのまま商品が売れるとは限りません。フォローした人が、キャラクターの名前を覚えているとは限らない。動画を面白いと思っても、グッズを買いたいとは限らない。分けて考えたい4つの段階があります。01見られる:動画が再生される。02覚えられる:キャラクターが認識される。03好きになる:次の投稿も見たいと思う。04行動する:共有、購入、参加などにつながる。この4つはつながっていますが、同じものではありません。たくさん見られることと、長く愛されること。短期的に話題になることと、継続的に収益を生むこと。ブランドを作るなら、両方を区別して考える必要があります。
本当に見るべきなのは、プロフィールの先に何があるか、という点です。公開されている関連サイトには、キャラクターの画像をカスタマイズする仕組みや、暗号資産トークン「$ABU」への導線も用意されています。つまり、キャラクターを見てもらうだけでなく、その先の行動につなげる仕組みも組み合わされています。ただし、これらの仕組みがどの程度の収益を生んでいるのか、運営者の意図までは公開情報だけでは判断できません。また、暗号資産トークンには価格変動、流動性、偽トークンなどのリスクがあり、話題になっていることは投資対象として安全であることを意味しません。ここで参考にしたいのは、暗号資産そのものではなく、認知を獲得した後に何を用意するかという考え方です。公式サイト、デジタル商品、グッズ、イベント、ファンが参加できる企画やコミュニティ、世界観を広げる物語。誰に届けたいのか、何に価値を感じてもらいたいのか、その人が次に何をしたくなるのか。そこから逆算して、必要なものだけを作ればいいのです。
小さな事業者は何を学べるのか
「何百万回も再生されるAIキャラクター」と聞くと、自分の仕事とは遠い話に感じるかもしれません。でも、考え方の一部は小さなお店や個人の活動にも応用できます。例えば、Instagramで商品を紹介しているお店。毎回違う写真、違う文章、違う雰囲気で投稿していると、投稿単体は魅力的でも、お店全体の印象が残りにくくなる場合があります。反対に、色、言葉、写真の雰囲気、伝えたい価値がある程度そろっていれば、投稿を重ねること自体が認知の積み重ねになります。ここで必要なのは、AIキャラクターを作ることではありません。自分の事業を、覚えてもらいやすい形に整理することです。1.何を覚えてもらうか。店名、商品、特徴、雰囲気。まずは一つ、中心となるものを決める。2.何を繰り返し伝えるか。核となる価値を違う角度から見せる。3.見た人に次に何をしてほしいか。プロフィールを見る、商品を確認する、予約する、店に来るなど、目的に合った行き先を用意する。投稿を頑張ることと、投稿が積み重なってブランドになることは違います。
まとめ
abu.shalabの現象から考えられることを整理します。ひと目で分かる特徴は認知の入口になる。AIは、キャラクターを継続的に展開する選択肢を広げる。再生数、ファン化、収益は、それぞれ分けて考える。認知を集めた先に、適切な行き先を用意する。制作技術だけでなく、企画とブランドの設計が重要になる。AIを使って何かを作ることは、これからますます簡単になるでしょう。だからこそ、作る前に考える。誰に届けるのか、何を覚えてもらうのか、どんな関係を作りたいのか。AIが作ったキャラクターでも、面白ければ好きになる。そんな時代が、もう始まっているのかもしれません。でも、好きになることと、信頼することは別。そして、信頼することと、お金を預けることは、さらに別です。面白いものは楽しむ、仕組みは冷静に見る。そのくらいの距離感が、今のSNSにはちょうどいいのかもしれませんね。
※本記事は2026年10月時点で確認できた公開情報をもとにした考察です。アカウントの運営者、制作体制、収益の実態について、公開情報だけでは確認できない点があります。特定の運営者による不正行為を断定するものではありません。暗号資産には元本割れを含む大きなリスクがあるため、話題性のみを理由とした購入はおすすめしません。
