「Webの人」という印象を持たれることがあります。でも、僕は最初からWebの仕事をしていたわけではありません。むしろ、今振り返ってみると、Webとは一見関係なさそうな仕事や経験が、今の僕の仕事につながっているように思います。今回は、そんな「Webの前」の話です。
最初に身についたのは、「人を見ること」だった
Webの仕事より前に経験した仕事の中で、僕が覚えているのは、商品やサービスそのものだけではありません。どんな人が来るのか。何を求めているのか。どんな言葉なら伝わるのか。どこで迷うのか。仕事をしていると、自然とそういうことを考えるようになります。これは後になってWebの仕事をするようになったとき、かなり役に立ちました。Webも結局は、画面の向こう側に「人」がいるからです。
以前、時計の販売に関わっていた時期があります。商品を覚えること。商品の特徴を伝えること。お客さんの話を聞くこと。そして、最後に選んでもらうこと。「売る」ということは、商品を並べれば終わりではありません。その人が何を探しているのかを知って、必要な情報を渡して、選びやすくする。今のWebの仕事とは形が違いますが、僕の中では、この経験と今の仕事はかなりつながっています。Webサイトもネットショップも、結局は「見た人がどう判断するか」を考える仕事だからです。
ECで「仕組み」を、就労支援の現場で「使う人の目線」を
その後、EC、つまりネットショップに関わる仕事も経験しました。ECは、ただ商品を登録して売るだけではありません。商品情報を整理する、写真を用意する、説明を書く、カテゴリーを考える、注文を受ける、発送する、問い合わせに対応する。いろいろな作業がつながって、ようやく一つの「商売」になります。ここで僕は、「一つひとつの作業を見るだけではなく、全体を見る」という感覚を身につけたんだと思います。
その後、就労支援に関わるNPOで、ITやECの環境づくりに関わった経験もあります。ここで大きかったのは、「分かる人にとっての正解」が、必ずしも「使う人にとっての正解」ではない、ということでした。ITが得意な人なら簡単にできることでも、初めて触る人には難しい。言葉一つでも、分かる人には分かるけれど、分からない人には何を言っているのか分からない。だから、使う人の目線に立って、手順や情報を整理する必要があります。この経験は、今の僕の「分かるように整理する」という仕事の考え方に、かなり影響しています。
そして、Webの仕事へ
こうした経験を重ねたあと、僕はWebの仕事を本格的にやるようになりました。WordPressを使ったWebサイト制作。サーバーやドメイン、メールなどの設定。ECサイトの制作や運営。商品情報の整理。Webページの更新。
最初は、技術的なことを覚える必要がありました。でも、仕事を続けていると、技術だけでは解決できない相談が増えていきました。「何を載せればいいですか?」「どんなページを作ればいいですか?」「SNSは何を投稿したらいいですか?」。こういう質問の奥には、「そもそも何を伝えればいいのか分からない」という問題が隠れていることがあります。
経歴は、あとからつながって見えるものです。昔の仕事をしているときは、それが将来Webの仕事につながるなんて、もちろん考えていませんでした。時計を売っていた経験がECやWebにつながる。ECをやっていた経験が情報整理につながる。ITやECの環境づくりをしていた経験が「使う人の立場で考える」ことにつながる。そして、それらが今の企画・編集・Web・情報整理につながっている。当時は、そんなふうには見えていませんでした。
今の僕は、Webの仕事をしています。でも、自分の仕事をWebだけで説明するのは、ちょっと違う気がしています。商品を売った経験、ECを運営した経験、ITを使う人を支えた経験、Webサイトをつくってきた経験。そういうものが全部混ざって、今の僕の仕事になっています。人や事業が持っているものを整理して、伝わる形にして、次に動ける状態をつくる。そのためにWebを使っている。今は、そんな感覚に近いです。
