「普段、何してるんですか?」たまに、そんなことを聞かれます。
仕事をしている時間なら、Webのことを考えていたり、文章を書いていたり、パソコンに向かっていたり。誰かと打ち合わせをしている日もあれば、一人で黙々と作業している日もあります。でも、それだけが僕の日常ではありません。むしろ、何気ない時間の中にあるもののほうが、「松井良幸」という人間をよく表しているのかもしれません。
朝から予定通り、とは限らない
僕は、毎日きっちり同じ時間に起きて、決まったルーティンをこなして、完璧な一日をスタートする、みたいなタイプではありません。もちろん、予定がある日はちゃんと動きます。でも、毎日がそんなに整然としているわけでもない。
今日はこれをやろうと思っていたのに、別のことを調べ始めてしまったり。ふと思いついたことをメモしていたら、いつの間にか時間が経っていたり。パソコンの前に座って「さて、やるか」と思ったところで、別のことが気になったり。まあ、人間なんてそんなものです。
仕事柄、パソコンを使っている時間はかなり長いです。Webサイトを見る、文章を書く、資料をつくる、画像を確認する、メールを見る、SNSを見る、調べものをする、いろんなサービスを試す。気がつくと、一日のかなりの時間を画面の前で過ごしています。だからこそ、パソコンまわりの環境にはけっこうこだわります。モニター、モニターライト、モニターアーム、キーボード、マウス、机、椅子。こういうものを、少しずつ自分に合う形にしていく。仕事道具だから、という理由もあります。でも、単純にこういうものが好きなんです。
道具と音楽と、「構造が見えてくる瞬間」
新しい道具を買うとき、性能だけを比較して終わり、ということがあまりありません。どういう考え方でこの形になったんだろう。なぜ、このボタンの位置なんだろう。実際に使ったら、どう感じるんだろう。高ければいいわけでも、新しければいいわけでもない。「何がいいか」よりも、「自分にとって何が合っているか」。結局、仕事で考えていることとあまり変わらないんですよね。
音楽を聴くこともあります。僕はギターが好きで、プログレッシブ・ロックも好きです。一度聴いただけではよくわからない曲を、何度も聴いていくうちに構造が見えてくる。そうすると、最初とは違う聴こえ方になる。仕事でも似たようなことがあります。最初は、何が問題なのかわからない。でも、話を聞いて、情報を並べて、一つずつ整理していく。すると、「ああ、ここがつながっていたのか」と見えてくる。たぶん僕は、そういう「構造が見えてくる瞬間」が昔から好きなんだと思います。
ギターは弾くだけではなく、ギターそのものを見るのも好きです。木の感じ、ネックの形、パーツ、塗装、経年変化。アンプも同じで、音を出すための道具なのに、そこに設計思想がある。文房具も好きです。万年筆、ノート、紙、インク、ボールペン。一つ一つの違いが小さいようで、実際に使ってみるとけっこう違います。時計も好きです。以前、時計の仕事をしていた経験もあるので、少し職業的な目線が入ることもありますが、結局は好きだから見ているだけです。道具って、使い込むほど自分との関係ができてくる。「とにかく新しいもの」というより、「長く使えるもの」に惹かれることがあります。
整理する人でも、散らかることはある
「整理する人」として仕事をしていると、さぞかし自分の生活も全部きれいに整理されているんでしょうね、と思われるかもしれません。そんなことはありません。考えごとが増えることもある。机の上にものが増えることもある。頭の中がごちゃごちゃすることもある。だから、自分自身も定期的に整理が必要です。「今、何をやってるんだっけ?」と立ち止まる。「これは本当に必要?」と考える。「これは後でいいか」と横に置く。自分ができていないからこそ、整理することの大切さもわかるのかもしれません。
一人で考える時間も必要です。誰かと話していると、その場では出てこなかった考えが、帰り道やお風呂や寝る前に、突然「あ、そういうことか」と浮かんでくることがあります。一方で、人と話す時間も好きです。特に、その人が今考えていることを聞くのが好きで、話しているうちに本人も気づいていなかったことが出てくる瞬間は面白い。「何もしない時間」も必要です。効率だけを考えたら無駄に見える時間かもしれませんが、そういう時間があるからこそ、また何かを考えられる。
結局のところ、僕の場合、仕事と日常を完全に分けることはあまりできないのかもしれません。ギターを見ていてデザインのことを考える。文房具を使って道具の使いやすさを考える。音楽を聴いて構造について考える。人と話して言葉の伝わり方を考える。お店を見て商品の見せ方を考える。職業病と言えば職業病です。でも、そういう何気ないところから仕事のヒントが生まれることもあります。
仕事をしているときだけが、その人ではありません。何を好きなのか、何にこだわるのか、どういうものを選ぶのか、どういう時間を過ごすのか。そういう小さな積み重ねが、少しずつその人をつくっていくんだと思います。特別な毎日ではありません。好きなものがあって、仕事をして、考えて、迷って、人と話して、音楽を聴いて、ものを選んで、たまには何もしたくなくなって、また動き出す。そんな普通の繰り返しです。僕は、この「普通」をけっこう大切にしたいと思っています。
