2026年版|「クレームを減らしたい」なら、まず情報を疑ってみる。トラブルは発信で防げることがある

SI — Structural Intelligence

「ちゃんと説明したのに……」

仕事をしていると、そんな場面があります。

こちらとしては説明したつもり。

ホームページにも書いてある。

SNSでも案内した。

それなのに、

「知らなかった」

「聞いていない」

「そんな条件だとは思わなかった」

と言われる。

こういうとき、つい「ちゃんと読んでほしい」と思ってしまいます。

でも、少し見方を変えてみる。

もしかすると、それは「お客様が読まなかった」という問題だけではなく、

「こちらが、必要な情報を必要なタイミングで伝えられていなかった」

という問題なのかもしれません。

クレームをすべて情報発信で防げるわけではありません。

商品そのものの問題や、サービス上の問題、人と人との行き違いもあります。

ただ、情報の不足やズレが原因になっているトラブルなら、発信の設計によって減らせる可能性があります。

今回は、「クレームをなくす」というより、

「同じ行き違いを繰り返さないために、情報をどう整理するか」

という視点から考えてみます。

目次

クレームの前に「期待」がある

お客様が不満を感じるとき、その前には何らかの期待があります。

「こうしてくれると思っていた」

「これくらいできると思っていた」

「この料金なら、ここまで含まれると思っていた」

「予約したら、こういう流れになると思っていた」

実際のサービスと、その人が想像していたもの。

この差が大きくなると、不満が生まれやすくなります。

だから、クレームを考えるとき、

「どう謝るか」

だけではなく、

「そもそも、なぜその期待が生まれたのか」

を見ることが大切です。

「書いていないこと」も情報になる

例えば、サービス料金が10,000円だったとします。

お客様は、

「10,000円なら全部やってもらえる」

と思っている。

でも事業者側では、

「10,000円は基本料金で、追加作業は別料金」

という認識だった。

どちらが正しいかを議論する前に、

「追加料金が発生する条件は、申し込み前に分かっただろうか?」

と考えてみます。

もし分からなかったのであれば、そこには情報設計の改善余地があります。

料金を書く。

それだけでは足りないことがあります。

「何が含まれるのか」

「何が含まれないのか」

「追加料金が発生するのはどんな場合か」

まで整理する。

これだけでも、期待値のズレを減らせます。

「できること」より「できないこと」を書く

事業者は、自分たちができることを伝えたくなります。

当然です。

商品の魅力。

サービスの特徴。

実績。

こだわり。

できること。

どれも大切です。

でも、トラブルを防ぐという意味では、

「できないこと」

を明確にすることも同じくらい重要です。

例えば、

・対応できる地域

・対応できない地域

・予約が必要なケース

・当日対応できないケース

・キャンセルできる期限

・対象外の商品

・追加料金になる作業

・利用できる条件

こうした情報は、華やかではありません。

でも、事業を続けるためには非常に重要です。

「何ができるか」だけでなく、

「どこから先はできないのか」

を伝える。

これは、期待値を適切に整えるための情報です。

「注意事項」は、最後に小さく書けばいい?

Webサイトでよくあるのが、

大切な条件がページの一番下に小さく書かれているケースです。

確かに、注意事項としては書いてあります。

でも、

「書いてある」

と

「事前に理解できる」

は違います。

申し込みを決めたあとに、初めて重要な条件が出てきたら、

「最初に言ってほしかった」

と思う人もいるでしょう。

だから、重要な情報は、

「どこに書いてあるか」

だけではなく、

「いつ見せるべきか」

まで考えます。

申し込み前に知っておくべきことなら、申し込み前に。

来店前に必要なら、来店前に。

利用直前に必要なら、そのタイミングで。

情報は、置く場所だけでなく「出すタイミング」も設計するものです。

よくある質問は「面倒な質問」ではない

「また同じ質問が来た」

と思うことがあります。

でも、その質問は改善のヒントかもしれません。

例えば、

「駐車場はどこですか?」

「支払い方法は何がありますか?」

「予約は必要ですか?」

「子どもでも参加できますか?」

「どのくらい時間がかかりますか?」

こうした質問が何度も来るなら、

「その人たちが知りたい情報が、まだ見つけにくい」

という可能性があります。

FAQをつくる。

案内ページをつくる。

予約ページに追加する。

SNSの固定投稿にする。

Googleの店舗情報など、適切な場所に掲載する。

質問を「対応しなければならない面倒なもの」とだけ考えず、

「情報設計を改善するためのデータ」

として見る。

この視点はかなり大切だと思っています。

クレームは「情報の穴」を教えてくれることがある

もちろん、すべてのクレームをそのまま正しいものとして受け入れる必要はありません。

理不尽な要求もあります。

ルール上できないこともあります。

事業者側が守るべき条件もあります。

だから、

「クレームが来たから全部こちらが悪い」

と考える必要はありません。

ただ、

「同じ内容が何度も起きている」

なら、そこには何か原因があるかもしれません。

説明不足だったのか。

情報の場所が悪かったのか。

言葉が分かりにくかったのか。

タイミングが遅かったのか。

そもそもルール自体が分かりにくかったのか。

一つずつ分解してみる。

すると、クレームが「嫌な出来事」から「改善の材料」に変わることがあります。

「伝える」より「迷わせない」

情報発信について考えていると、

「どう伝えるか」

という言葉をよく使います。

でも、僕はもう一つ、

「どう迷わせないか」

も大切だと思っています。

例えば、

料金を見る。

↓

自分が対象か確認する。

↓

利用条件を見る。

↓

予約方法を確認する。

↓

予約する。

この流れの途中で、

「結局、自分は対象なの?」

「この料金で全部含まれるの?」

「予約は電話?フォーム?」

となると、そこで止まってしまいます。

WebサイトやSNSの役割は、情報をたくさん並べることだけではありません。

「次に何を確認すればいいか」

が分かる状態をつくること。

それも情報設計です。

「分からない」を減らすことは、親切でもある

情報を整理することは、事業者側の負担を減らすだけではありません。

お客様にとっても、

「何を聞けばいいのか分からない」

という状態から抜けられます。

問い合わせること自体が苦手な人もいます。

忙しくて電話できない人もいます。

営業時間外に調べる人もいます。

初めて利用することに不安を感じる人もいます。

そういう人が、

「ここを見れば分かる」

と思える場所がある。

これは、一つのサービスだと思います。

2026年は「正しい情報」だけでは足りない

2026年の今、情報を探す方法は増えています。

Webサイト。

SNS。

検索。

地図。

レビュー。

動画。

AIによる検索や要約。

一人の人が、一つの場所だけを見て判断するとは限りません。

だからこそ、

「どこかに書いてある」

だけではなく、

「複数の入口から見ても、情報が大きく食い違わない」

ことが大切になります。

営業時間。

住所。

料金。

サービス内容。

予約方法。

開催日。

こうした基本情報が場所によって違えば、利用する側は迷います。

情報発信を増やす前に、

「今出ている情報は、ちゃんとつながっているか?」

を確認する。

これはこれからますます重要になると思います。

AIに聞かれる時代だからこそ、元の情報を整える

AI検索やAIアシスタントを使って、

「この店は何時から?」

「このサービスはいくら?」

「予約は必要?」

と調べる人も増えています。

そのとき、元になる情報が整理されていなければ、正しく伝わりにくくなります。

だから「AI向けに文章を書く」というより、

まず自分たちの情報を正しく整理する。

何を提供しているのか。

誰向けなのか。

料金はいくらなのか。

どこで利用できるのか。

どんな条件があるのか。

何ができないのか。

こうした基本情報を明確にする。

結果として、それは人にもAIにも理解されやすい情報になります。

情報発信は「売るため」だけではない

WebサイトやSNSというと、

「集客する」

「売上を増やす」

という目的が先に出てきます。

もちろん、それも重要です。

でも、情報発信にはもう一つの役割があります。

「期待値を合わせること」です。

できること。

できないこと。

料金。

条件。

流れ。

時間。

場所。

そうしたことを事前に伝えることで、

「思っていたのと違った」

を減らす。

これは、売上を増やすこととは少し違う価値です。

むしろ、

「合わない人には、申し込む前に分かってもらう」

ことも大切です。

一見すると機会損失のように見えるかもしれません。

でも、利用してから「思っていたものと違った」となるより、事前に分かっていたほうがお互いに負担が少ない。

「売らない情報」が、結果的に信頼をつくる

商品の魅力を伝えるだけではなく、

「こういう方には向いていません」

「こういう場合は対応できません」

「この条件があります」

と書く。

これは、短期的には売りにくくなるように感じるかもしれません。

でも、

「何でもできます」

と言うより、

「ここまではできます。ここから先はできません」

と言えるほうが、安心して相談できる場合があります。

できないことを隠さない。

条件を分かりやすくする。

不利に見える情報も必要なら出す。

こうした情報発信は、派手ではありません。

でも、長く仕事を続けるための土台になります。

小さな事業ほど「説明を仕組みにする」

一人や少人数で仕事をしていると、

同じ説明を何度もすることがあります。

電話で説明。

DMで説明。

メールで説明。

来店時に説明。

また別のお客様にも同じ説明。

これが積み重なると、かなりの時間になります。

そこで、

「この説明は、仕組みにできないかな?」

と考えてみる。

Webページにまとめる。

FAQにする。

予約フォームに表示する。

自動返信メールに入れる。

SNSのプロフィールから案内する。

必要な情報を、必要な場所に置く。

これだけでも、人が毎回説明する量を減らせます。

そして、人にしかできない相談やコミュニケーションに時間を使えるようになります。

「クレームゼロ」を目指さなくてもいい

クレームを完全になくすことは難しいと思います。

人が関わる以上、感じ方の違いもあります。

予想外のことも起こります。

だから、

「クレームゼロ」

だけを目標にしなくてもいい。

それより、

「同じ行き違いを繰り返さない」

「事前に分かることを増やす」

「困ったときに確認できる場所をつくる」

という方向のほうが、現実的です。

一つのクレームから、一つの情報を改善する。

それを積み重ねる。

すると、少しずつ事業の説明が分かりやすくなっていきます。

松井構造室が考える「情報を整える」ということ

松井構造室では、WebサイトやSNSを単純に「情報を載せる場所」とは考えていません。

人が知る。

↓

興味を持つ。

↓

比較する。

↓

不安を確認する。

↓

判断する。

↓

問い合わせる。

↓

利用する。

この流れの中で、

「どこで迷うのか」

「どこで誤解が起きるのか」

「どこに情報が必要なのか」

を整理します。

情報を増やすことが目的ではありません。

必要な情報が、必要な場所にある状態をつくる。

そして、事業者側も毎回同じ説明をしなくて済む状態にする。

お客様にとっても。

事業者にとっても。

「分からない」を少し減らす。

それが、情報設計の一つの役割だと思っています。

「ちゃんと書いてある」を、一度疑ってみる

もし、

「ちゃんと書いてあるのに、また聞かれた」

「何度説明しても伝わらない」

「同じようなクレームが繰り返される」

ということがあったら。

情報を増やす前に、

「本当に、必要な人が、必要なタイミングで、その情報を見つけられているだろうか?」

と考えてみる。

そして、

「初めて知る人だったら、どこで迷うだろう?」

と考えてみる。

それだけでも、見えてくるものがあります。

クレームをなくすためだけに情報を整理する必要はありません。

情報が整理されると、

お客様が判断しやすくなる。

事業者も説明しやすくなる。

スタッフも迷いにくくなる。

WebもSNSも使いやすくなる。

結果として、仕事そのものが少し動きやすくなる。

「伝える」ということは、

魅力を伝えることだけではありません。

誤解を減らすこと。

不安を減らすこと。

迷いを減らすこと。

そして、お互いの期待を近づけること。

それもまた、情報発信の大切な仕事なのだと思います。

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