2026年版|「いい商品なのに売れない」を、商品だけの問題にしない。価値が伝わるまでを考える

目次

「商品には自信があるんだけど、なかなか売れない。」

小さな事業をしていると、そんな悩みがあります。

品質には自信がある。

こだわって作っている。

他にはない特徴もある。

それなのに、思ったように選ばれない。

そんなとき、

「もっと良い商品にしなきゃ」

「もっと安くしなきゃ」

「もっと広告を出さなきゃ」

と考えてしまいます。

でも、もしかすると問題は「商品」そのものではなく、

「その商品の価値が、相手に届くところまで整理されているか」

なのかもしれません。

商品には価値がある。

でも、その価値を相手が理解できるとは限らない。

今回は、「価値」と「伝わること」の間にあるものを、Web・SNS・情報設計の視点から考えてみます。

「良い商品」と「選ばれる商品」は同じではない

まず、ここは分けて考えたいところです。

良い商品であること。

選ばれる商品であること。

この二つは、必ずしも同じではありません。

どれだけ品質が高くても、

「何が良いのかわからない」

「自分に必要なのかわからない」

「他の商品との違いがわからない」

「使ったらどうなるのかわからない」

となれば、選択肢に入りにくい。

反対に、商品そのものは似ていても、

「これは自分のための商品だ」

と感じられるものが選ばれることがあります。

ここで重要なのは、

「選ばれなかった=商品が悪い」

とは限らないということです。

商品と、それを受け取る人の間に、まだ整理されていないものがある。

そこを見る必要があります。

「こだわり」は、そのままでは価値にならないことがある

作り手にとって、

「素材にこだわっています」

「一つひとつ丁寧につくっています」

「長年の経験があります」

というのは、大切なことです。

でも、それを聞いたお客様が、

「だから、自分にとって何がいいんだろう?」

と思ったら、もう一歩説明が必要です。

たとえば、

「北海道産の素材を使っています」

という情報。

これは事実です。

でも、その先に、

「だから、どんな特徴があるのか」

「なぜその素材を選んでいるのか」

「食べる人にどんな体験をしてほしいのか」

までつながると、意味が変わってきます。

こだわりは、作り手の中では価値です。

でも、伝えるときには、

「そのこだわりが、相手にとってどんな意味を持つのか」

まで翻訳する必要があります。

「特徴」と「価値」は違う

これは、Webサイトを作るときにもよく出てくる問題です。

商品の特徴を書く。

機能を書く。

スペックを書く。

もちろん必要です。

でも、

特徴=価値

ではありません。

たとえば、

「軽量です」

というのは特徴。

「持ち運びやすい」

は、その特徴によって得られる利便性。

「毎日持ち歩く負担が減る」

までいくと、生活との関係が見えてきます。

つまり、

特徴

メリット

相手にとっての意味

と考えていく。

商品説明をつくるとき、

「何があるか」

だけではなく、

「それによって、相手の何が変わるのか」

を考える。

これはマーケティングというより、翻訳に近い作業なのかもしれません。

「自分たちは知っている」が、伝わらない原因になる

事業を続けていると、自分たちの商品について詳しくなります。

どんな素材を使っているか。

どこで仕入れているか。

どうやって作っているか。

どんな苦労があったか。

どんな歴史があるか。

全部知っています。

だからこそ、説明するときに情報を省略してしまうことがあります。

「このくらいはわかるだろう」

と思ってしまう。

でも、初めて商品を見る人には、その前提がありません。

これは前の記事で書いた、

「お客様は知っているはず」

という問題ともつながっています。

伝える側にとっての常識が、

受け取る側にとっての常識とは限らない。

だから、商品説明でも、

「初めてこの商品を見る人なら、何を知りたいだろう?」

と考えることが大切です。

「なぜこれを作っているのか」は、商品以上に伝わることがある

商品そのものだけではなく、

「なぜ、この商品をつくったのか」

という背景も、人の判断材料になります。

もちろん、ストーリーを書けば売れるという単純な話ではありません。

長い創業物語を読ませればいいわけでもない。

大切なのは、

「この商品には、どういう考えが込められているのか」

が伝わることです。

たとえば、

「こういう困りごとがあった」

「だから、こう考えた」

「こういうものをつくった」

という流れ。

これが見えると、商品そのものに意味が生まれます。

そして、その意味に共感する人が、

「これを選びたい」

と思うことがあります。

価格だけで勝負しなくていい

「売れない」と感じると、

値下げ

という選択肢が浮かぶことがあります。

もちろん、価格設定は重要です。

でも、

「売れないから安くする」

だけでは、問題が解決しない場合があります。

なぜなら、

「なぜこの価格なのか」

が伝わっていない可能性があるからです。

材料。

製造方法。

時間。

技術。

アフターサポート。

購入後の体験。

そこにどんな価値があるのか。

価格だけを見るのではなく、

「この価格で何を受け取るのか」

を整理する。

そうすると、値段そのものではなく、

「この内容なら、この価格なのか」

という判断ができるようになります。

高い・安いではなく、「自分に必要か」

人が商品を選ぶとき、

必ずしも一番安いものを選ぶわけではありません。

「自分に必要か」

「自分の問題を解決できるか」

「安心できるか」

「好きか」

「応援したいか」

「使っている自分を想像できるか」

さまざまな理由があります。

だから、

「価格を下げれば売れる」

とは限りません。

逆に、

「うちは高品質だから、この価格です」

と説明するだけでも足りない。

必要なのは、

「なぜ、この人がこれを選ぶのか」

を考えることです。

Webサイトは「商品の説明書」ではなく、判断材料を整理する場所

商品ページを作るとき、

写真。

商品名。

価格。

サイズ。

素材。

説明。

これだけでも最低限のページは作れます。

でも、初めての人が知りたいのは、それだけではありません。

「自分には合っている?」

「どんな場面で使う?」

「他の商品と何が違う?」

「実際のサイズ感は?」

「誰がつくっている?」

「購入後はどうなる?」

「返品や交換は?」

「どこから買える?」

こうした疑問を先回りして整理しておく。

それが、

「売るためのWebページ」

ではなく、

「選ぶためのWebページ」

につながります。

SNSでは「商品の存在」だけを知らせない

SNSで、

「新商品発売しました!」

だけを投稿する。

もちろん、それも必要です。

でも、それだけでは、

「へえ、新商品なんだ」

で終わることがあります。

そこで、

「なぜ作ったのか」

「どんな人に向いているのか」

「実際に使うとどうなるのか」

「制作の途中で何を考えたのか」

「どんな質問が多いのか」

などを、少しずつ発信していく。

一つの商品についても、

商品紹介

制作背景

使い方

お客様の疑問

実際の使用場面

購入方法

と、いろいろな入口をつくれます。

これは投稿を無理に増やすというより、

一つの価値を、いろいろな角度から見せるという考え方です。

「価値」は、こちらが決めるだけでは完成しない

ここは、今回のテーマで一番大事なところかもしれません。

「この商品の価値はこれです」

と、作り手が決める。

もちろん、それは必要です。

でも、実際にその商品を使う人が、

「私はここが良かった」

と感じたものが、別の価値になることがあります。

作り手が想定していなかった使い方。

思いもしなかった便利さ。

意外と喜ばれた部分。

お客様からの一言。

そこには、商品を改善したり、伝え方を変えたりするヒントがあります。

だから、

「自分たちは何が良いと思っているか」

だけではなく、

「実際に使った人は、何を良いと言っているか」

も見ておく。

口コミやレビューは、単なる評価ではありません。

価値を発見するための材料でもあります。

「選ばれる理由」は、後から見つかることもある

商品を作る段階では、

「これが強みだ」

と思っていた。

でも、実際に販売してみると、

お客様が別のところを評価してくれた。

そんなことがあります。

これは失敗ではありません。

むしろ、

「市場に出したことで、価値が見えてきた」

とも考えられます。

だから、最初から完璧な強みを決めなくてもいい。

仮説を立てる。

出してみる。

反応を見る。

聞いてみる。

整理する。

また伝え方を変える。

この繰り返しが、商品やサービスの価値を少しずつ明確にしていきます。

2026年は「説明できること」の価値がさらに大きくなる

AIを使えば、

商品説明を書くこと自体は、以前より簡単になりました。

キャッチコピーも作れる。

SNS投稿も作れる。

商品紹介文も作れる。

画像も作れる。

だからこそ、

「文章が書けること」

そのものの差は小さくなっています。

これから重要になるのは、

「何を伝えるのか」

「なぜそれを伝えるのか」

「誰に必要なのか」

「どんな意味があるのか」

を整理できること。

AIに文章を書いてもらうことはできても、

「そもそも何を伝えるべきか」

を決めるのは、まだ人の仕事として残ります。

そして、その判断には、

実際の顧客。

商品。

現場。

地域。

経験。

これまで積み重ねてきたもの。

そうした文脈が関係します。

旭川で小さな事業をするなら、「地域」も価値の一部になる

旭川で仕事をしていると、

「旭川だから」

ということを、どう扱うかも考えることがあります。

旭川で作っている。

旭川に店がある。

旭川の人に利用されている。

旭川から発信している。

こうした情報は、単なる所在地ではありません。

場合によっては、

「どんな場所で、どんな人たちが、どんな考えで仕事をしているのか」

という背景になります。

ただし、

「旭川だから価値がある」

と決めつける必要もありません。

地域名を入れれば売れるわけでもない。

大切なのは、

「この場所で仕事をしていることが、商品やサービスとどう関係しているのか」

を考えること。

これは、旭川のデザイン都市という文脈ともつながります。

デザインを見た目だけではなく、

人、場所、仕事、情報の関係を考えること

として捉えるなら、

地域でつくられる商品やサービスにも、さまざまな「設計」があります。

「売る」前に、「選べる」状態をつくる

私は、Webや情報発信を考えるとき、

「どうすれば売れるか」

だけを考えないようにしています。

その前に、

「どうすれば、その人が判断できるか」

を考える。

これは、

売らない

という意味ではありません。

むしろ、

選ぶために必要な情報を整理することで、

結果として選ばれる可能性が生まれる。

という考え方です。

商品を買う人は、

「買わされたい」

わけではありません。

自分で納得して選びたい。

だから、

商品の特徴。

価格。

背景。

使い方。

対象となる人。

向いていない人。

他との違い。

購入後のこと。

こうした情報を整理しておく。

「買ってください」

より先に、

「判断できる材料があります」

という状態をつくる。

商品を変える前に、伝え方を変えてみる

「もっと良い商品にしよう」

という努力は大切です。

でも、その前に、

「今ある良さが、ちゃんと伝わっているだろうか?」

と確認してみる。

商品の特徴は伝わっているか。

その特徴が、相手にとってどんな意味なのか。

誰に向いているのか。

どんな場面で役立つのか。

なぜ作っているのか。

価格にどんな理由があるのか。

購入する前の不安は何か。

こうしたことを整理すると、

「商品を変える必要はなかった」

ということもあります。

逆に、

「伝えようとして初めて、商品の弱点に気づいた」

ということもあります。

どちらにしても、

伝えることは、商品を見直すことにつながります。

松井構造室が考える「価値を伝える」ということ

松井構造室では、

「いいものを、もっと上手に売りましょう」

というところだけを目指しているわけではありません。

その前に、

「その商品には、どんな価値があるのか」

「誰にとって、その価値が必要なのか」

「その価値は、どうすれば理解できるのか」

「どこで出会うのか」

「何を見れば判断できるのか」

を整理する。

そのうえで、

Webサイト。

SNS。

ECサイト。

プロフィール。

商品ページ。

文章。

導線。

必要な道具を選んでいく。

Webは目的ではありません。

SNSも目的ではありません。

AIも目的ではありません。

それらは、

「価値と人の間にある距離を縮めるための道具」

だと思っています。

「いい商品なのに、なぜか伝わらない」

そんなとき。

すぐに商品を変えたり、価格を下げたり、発信量を増やしたりする前に、

一度、

「この商品の良さを、初めて見る人はどう理解するだろう?」

と考えてみる。

作り手が知っている価値と、

お客様が感じる価値。

その間をつなぐ。

そこに、Webや文章、デザイン、情報設計の仕事があります。

良いものを作ること。

そして、

その良さが、必要な人にちゃんと伝わる状態をつくること。

どちらも大切です。

だから「売れない」という問題に出会ったとき、

商品だけを見るのではなく、

商品と人の間にある「情報」も、一度見直してみたいと思っています。

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