「誰もが最初は新規客」から考える。はじめて選んでもらうために必要なこと

「新しいお客様を増やしたい」

仕事をしていると、そんな相談を受けることがあります。

新規客を増やすために、広告を出す。
SNSを始める。
ホームページを作る。
チラシを配る。
キャンペーンをする。

もちろん、どれも入口として間違っているわけではありません。

ただ、その前に一度考えておきたいことがあります。

それは、

「その人にとって、ここは“初めて見る場所”かもしれない」

ということです。

自分たちにとっては、何年も続けている仕事でも。

常連のお客様にとっては、よく知られたサービスでも。

初めて知る人からすれば、すべてが新しい。

この当たり前のことを意識すると、WebサイトやSNSの作り方も少し変わってきます。

目次

自分たちにとっての「普通」は、お客様にとっての「普通」ではない

仕事をしていると、どうしても内側から物事を見ます。

「これは説明しなくてもわかるだろう」

「このくらいは知っているだろう」

「業界では普通のことだから」

「前にもSNSで書いたから」

でも、初めて見る人には、その前提がありません。

たとえば、あるサービスについて、

「○○方式を採用しています」

と書いてあったとしても、それが何なのか知らない人には意味がわからないかもしれません。

店舗なら、

「うちは昔からこの場所でやっています」

という情報も、初めて知る人には、その価値が伝わらないことがあります。

だからといって、何でもかんでも長く説明すればいいわけでもありません。

大切なのは、

「初めてこの情報を見る人は、どこで迷うだろう?」

と考えることです。

これは、情報設計の基本的な視点でもあります。

「新規客」は、まだ何も知らない人

新規客という言葉を使うと、

「まだ買っていない人」

という意味だけに見えてしまいます。

でも、もう少し細かく考えると、その人にはいくつもの段階があります。

存在を知らない。

存在を知る。

少し興味を持つ。

調べる。

比較する。

不安をなくす。

問い合わせる。

来店する。

購入する。

利用する。

そして、もう一度利用する。

つまり「新規客を増やす」というのは、単純に広告を増やすことではありません。

この途中にある、

「知らない」

「知る」

「気になる」

「調べる」

「やってみる」

という流れを、どこまで自然につなげられるか。

そこを考えることでもあります。

Webサイトは「説明書」だけではない

ホームページを作るとき、

「会社概要」
「サービス内容」
「料金」
「お問い合わせ」

を載せれば完成。

という考え方もあります。

もちろん必要な情報です。

でも、初めて訪れた人の立場から考えると、それだけでは足りないことがあります。

「ここは自分に関係あるのか?」

「自分の悩みに合っているのか?」

「どんな人がやっているのか?」

「いくらくらいなのか?」

「問い合わせても大丈夫なのか?」

「申し込んだら何が起きるのか?」

そんな疑問が浮かびます。

だからWebサイトは、単に情報を置く場所ではなく、

「初めての人が判断できる状態をつくる場所」

として考えることができます。

これは、以前の記事で書いた「次の行動」にもつながっています。

情報を見せる。

理解してもらう。

不安を減らす。

自分に合うか判断してもらう。

必要なら次の行動へ進んでもらう。

この流れがあると、Webサイトは単なる会社案内から少し変わってきます。

SNSも「知っている人向け」になっていないか

SNSでは、もっと注意が必要です。

長く運用していると、投稿する側には過去の投稿が大量にあります。

「以前も書いたから」

「もうフォロワーは知っているから」

と思ってしまう。

でも、新しく見つけてくれた人にとっては、その投稿が最初の一枚かもしれません。

昨日の投稿を見る人もいれば、半年ぶりにプロフィールを見る人もいる。

検索やおすすめから、いきなり一つの投稿だけを読む人もいます。

だからSNSでは、

「今いるフォロワーに向けて発信する」

だけではなく、

「今日初めて見た人が、ここから理解できるか」

という視点も持っておきたい。

プロフィール。

固定投稿。

代表的な投稿。

Webサイトへの導線。

問い合わせ方法。

こうした入口を整えておくだけでも、初めて来た人の迷いは減らせます。

「知ってもらう」だけでは、選んでもらえない

マーケティングの話をすると、

「認知を増やしましょう」

という言葉がよく出てきます。

もちろん、知られなければ選ばれることもありません。

でも、

知ることと、選ぶことの間には距離があります。

たとえば、検索して見つけた会社があったとしても、

何をしているのかわからない。

料金がわからない。

場所がわからない。

誰がやっているかわからない。

自分に合うのかわからない。

問い合わせ方法がわからない。

こうした状態なら、知ってもらえていても、行動にはつながりにくい。

だから私は、

「見つけてもらう」

だけではなく、

「見つけたあとに迷わない」

ことも大切だと思っています。

初めての人に必要なのは「売り込み」ではなく「判断材料」

新規客を増やそうとすると、つい売り込みが強くなります。

「今だけ」

「おすすめです」

「ぜひお申し込みください」

もちろん、必要な場面もあります。

ただ、初めて知った人にとっては、その前に知りたいことがあります。

「これは何?」

「自分に関係ある?」

「どんなもの?」

「いくら?」

「どうやって利用する?」

「誰がやっている?」

「実際に利用した人は?」

こうした情報が整理されていると、自分で判断できます。

私は、良い情報発信とは、

「相手を説得すること」

ではなく、

「相手が判断できる材料を渡すこと」

でもあると思っています。

2026年は「入口」がさらに複雑になった

2026年の今は、以前より入口が増えています。

Googleなどの検索。

SNS。

地図。

動画。

口コミ。

Webサイト。

AIによる検索・回答。

イベント。

紹介。

リアル店舗。

どこから最初に知ってもらうのか、わからなくなってきました。

だからこそ、一つ一つの媒体だけを見るより、

「どこから来ても、必要な情報につながれるか」

を考えることが重要になります。

SNSでは営業時間が書いてある。

Webサイトでは住所が違う。

Googleの情報が古い。

イベント告知では問い合わせ方法がない。

そんな小さなズレが積み重なると、初めての人ほど迷います。

逆に言えば、

Web、SNS、地図、店舗、イベントなどの情報がつながっていれば、

それぞれが大きな広告をしなくても、入口として機能しやすくなります。

小さな事業ほど「初めての人」の視点が大切

大きな企業には、広報やマーケティングの担当者がいることがあります。

一方で、小さな事業では、

経営者が発信もする。

商品もつくる。

接客もする。

Webも更新する。

SNSも投稿する。

問い合わせにも答える。

そんなことが珍しくありません。

だから、

「もっとSNSを頑張りましょう」

だけでは、解決にならないことがあります。

むしろ、

「今ある情報を、一度整理してみましょう」

のほうが効果的な場合もあります。

どこから人が来ているのか。

何を見ているのか。

どこで迷っているのか。

何を何度も質問されるのか。

問い合わせの前に、どんな情報を見ているのか。

ここには、改善するためのヒントがあります。

「新規客を増やす」前に、入口を見直してみる

新しい人を集めることばかり考える前に、

今ある入口を一度見直してみる。

これは、派手ではありません。

でも、意外と大切な作業です。

たとえば、

・Googleで検索したとき、何が出てくるか

・SNSプロフィールを初めて見た人が何を理解できるか

・Webサイトを開いて、何をしている会社なのかわかるか

・料金や利用方法が見つかるか

・問い合わせ先がすぐわかるか

・初めての人が不安に思いそうなことが書かれているか

・SNS、Web、地図の情報が食い違っていないか

・問い合わせから利用までの流れがわかるか

こうしたことを、一つずつ確認していく。

新しいものを増やす前に、今あるものをつなぎ直す。

それだけでも、変えられるところはあります。

誰もが、最初は新規客だった

今では常連になっている人も、

最初はその店を知らなかった。

今ではファンになっている人も、

最初はその人を知らなかった。

今では当たり前に使っているサービスも、

最初は「何だろう?」から始まっています。

だから、

「そんなことも知らないの?」

ではなく、

「初めて見た人には、どう見えるだろう?」

と考えてみる。

この視点は、Webサイトにも、SNSにも、店舗にも、商品にも使えます。

そしてこれは、新規客を増やすためだけの考え方ではありません。

「初めての人にわかる」ということは、

結果的に、既存のお客様にとってもわかりやすいことが多いからです。

松井構造室では「増やす前に整理する」

私がWebや情報発信について考えるとき、

「何を使うか」から始めないようにしています。

ホームページを作る。

SNSを増やす。

広告を出す。

AIを使う。

その前に、

「誰に、何を知ってほしいのか」

「どこから来てもらいたいのか」

「何を判断してもらいたいのか」

「そのあと、何をしてほしいのか」

を整理する。

そのうえで、必要な道具を選ぶ。

Webサイトが必要なら作る。

SNSが必要なら使う。

AIが役立つなら使う。

必要なければ、無理に増やさない。

大切なのは、道具を増やすことではなく、

人と活動がつながる状態をつくることだと思っています。

「新規客を増やしたい」

という相談の奥には、

「初めての人に、ちゃんと伝わる状態になっているだろうか?」

という問いが隠れているのかもしれません。

新しい入口をつくる前に。

一度、今ある入口から入ってみる。

自分自身が「初めてのお客様」になったつもりで、Webサイトを開き、SNSを見て、地図を見て、問い合わせまで進んでみる。

すると、自分たちでは気づかなかった「迷う場所」が見えてくることがあります。

増やす前に、整理する。

新規客を考えるときにも、まずはそこから始めてみたいと思います。

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