道具に慣れすぎない。惰性で使うと、見えなくなる。
道具は、使えば使うほど手になじんできます。
最初は使いにくかったものが、いつの間にか普通になる。
考えなくても使える。
迷わなくても操作できる。
いつもの場所に置いてある。
いつもの方法で仕事をする。
それは、とてもいいことです。
道具に慣れるというのは、仕事の負担を減らしてくれます。
でも、ときどき思うことがあります。
「慣れたこと」と「合っていること」は、同じではない。
ここは、意外と大事なところです。
慣れると、不便が見えなくなる
新しい道具を使い始めたときは、ちょっとした不便にも気づきます。
このボタンは分かりにくい。
この操作は面倒だ。
ここだけ手作業が必要だ。
この画面は見づらい。
でも、半年、1年、3年と使っていると、それが当たり前になります。
「まあ、こういうものだ」
で終わってしまう。
人間は、かなり上手に慣れる生き物です。
最初は不便だったことでも、何度も繰り返せば、それなりにできるようになる。
だから困らなくなる。
でも、
「困らなくなった」
と
「問題がなくなった」
は、少し違います。
僕たちは「いつものやり方」を疑わなくなる
仕事でも同じことがあります。
昔決めた手順がある。
だから、そのまま続ける。
昔作ったExcelがある。
だから、そのまま使う。
昔作ったホームページがある。
だから、そのまま更新する。
昔始めたSNSがある。
だから、投稿し続ける。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
長く続けてきたものには、積み重ねがあります。
問題なのは、
「なぜ今もこの方法なのか」
が誰にも分からなくなっていることです。
理由があるなら、そのままでいい。
でも、
「昔からそうだから」
だけになっていたら、一度立ち止まってもいい。
「慣れている」は強い。でも、それだけでは足りない
僕は道具を選ぶとき、
「慣れている」
ということをかなり重視します。
慣れている道具には、それだけで価値があります。
操作を覚え直さなくていい。
失敗が少ない。
自分の癖が分かっている。
仕事の流れを止めない。
これは、新しい高性能な道具にはない強さです。
だから、
「新しいものに変えればいい」
とは思いません。
むしろ、簡単に変えないほうがいい場合も多い。
ただし、
「慣れているから使い続ける」
という理由だけになったら、話は別です。
慣れていることは、継続する理由の一つ。
でも、継続する理由のすべてではありません。
道具ではなく、目的を見る
たとえばWebサイト。
5年前に作ったサイトがある。
普通に表示される。
問い合わせも来る。
会社情報も載っている。
だったら、無理に作り直す必要はありません。
でも、
・スマートフォンで見づらい
・情報が古い
・誰が更新するのか分からない
・サービス内容が今の事業と違う
・問い合わせまでの流れが分かりにくい
・SNSとのつながりがない
という状態なら、
「古いから作り直す」
ではなく、
「今の目的に合っているか」
を考えたほうがいい。
場合によっては、全部作り直す必要はない。
一部を直すだけでいいかもしれない。
情報を整理するだけでいいかもしれない。
更新方法を変えるだけでいいかもしれない。
逆に、根本から作り直したほうがいい場合もあります。
大事なのは、
「新しくすること」
ではなく、
「今の目的に合う状態にすること」
です。
慣れた道具を捨てる必要はない
僕は、古いものをすぐ捨てる考え方があまり好きではありません。
長く使ってきた道具には、理由があります。
手になじんでいる。
使い方を理解している。
仕事の流れに組み込まれている。
過去のデータや記録が残っている。
そういうものは、単純なスペック比較では測れません。
だから、
「最新だから正解」
とも思いません。
でも同時に、
「長く使っているから正解」
とも思いません。
どちらも極端です。
見るべきなのは、
「今の自分たちに合っているか」
です。
道具は、ときどき健康診断する
だから僕は、仕事の道具や仕組みも、たまに見直したほうがいいと思っています。
全部を変える必要はありません。
むしろ、変えないことを前提に確認する。
例えば、
「今もこの作業は必要?」
「この情報は誰が使っている?」
「このサービスは何のために契約している?」
「このSNSは本当に続ける意味がある?」
「このページは今も必要?」
「この手順は、誰かに引き継げる?」
「もっと簡単にできない?」
こんなことを確認するだけでもいい。
健康診断みたいなものです。
病気を探すためだけではありません。
今の状態を知るためにやる。
仕事の仕組みも同じです。
「昔は必要だった」を否定しない
ここは結構大事です。
昔必要だったものを、今必要ないからといって、
「昔のやり方は間違っていた」
と考える必要はありません。
その時は、それが必要だった。
環境が変わった。
事業が変わった。
お客さんが変わった。
使う人が変わった。
技術が変わった。
だから、今は別の方法が合う。
ただそれだけです。
仕組みは、その時々の状況に合わせて変わっていきます。
昔の自分を否定する必要はない。
今の自分に合わせて、少し調整すればいい。
「慣れ」は、変化を止めることもある
慣れているものには安心感があります。
だからこそ、変えるのが怖い。
新しい道具を覚えるのは面倒です。
データを移すのも面倒。
説明するのも面倒。
周りの人に覚えてもらうのも面倒。
だから、
「まあ、今のままでいいか」
となる。
これはよく分かります。
僕自身もそうです。
道具を変えると、その道具を覚える時間が必要になります。
設定も必要になる。
以前のやり方を捨てる必要もある。
だから、変えないという判断には、ちゃんと合理性があります。
ただ、
「変えるコスト」
だけではなく、
「変えないコスト」
も見たほうがいい。
毎日5分余計にかかる作業なら、1年ではかなりの時間になります。
毎回誰かに聞かないと分からない仕組みなら、担当者がいなくなったときに困ります。
更新されないWebサイトなら、積み重ねるほど情報が古くなります。
変えないことにも、コストがあります。
変えるかどうかは、感情ではなく構造で考える
新しい道具を見つけると、
「こっちのほうが良さそう」
と思います。
逆に、長く使っている道具を手放すときは、
「もったいない」
と思います。
どちらも自然な感情です。
でも、最後の判断は少し冷静にしたい。
今の問題は何なのか。
その問題は本当に道具が原因なのか。
使い方を変えれば解決するのか。
別の道具に変えると、何が良くなるのか。
逆に何が失われるのか。
移行するために、どれくらい手間がかかるのか。
その手間を払ってまで変える価値があるのか。
ここまで考えると、
「新しいから変える」
でも、
「慣れているから変えない」
でもなくなります。
道具を見直すと、自分の仕事も見えてくる
面白いのは、道具を見直していると、
「自分は何に時間を使っているんだろう」
と気づくことです。
使っていないサービス。
重複している作業。
誰も見ていないページ。
意味が分からないルール。
昔のまま残っている資料。
毎回手作業でやっていること。
こういうものが出てきます。
つまり、
道具を見直すことは、仕事を見直すことでもあります。
だから僕は、
「もっと便利な道具を探しましょう」
だけではなく、
「今ある道具と仕事の関係を、一度整理しましょう」
と考えます。
道具に慣れる。でも、慣れきらない
道具には慣れていい。
むしろ、しっかり慣れたほうがいい。
でも、慣れきらない。
たまに、
「今もこれでいいんだっけ?」
と考えてみる。
そのくらいの距離感が、ちょうどいいのかもしれません。
お気に入りのペンも。
毎日使うキーボードも。
長く使っているパソコンも。
仕事で使っているWebサービスも。
ホームページも。
SNSも。
仕事の仕組みも。
一度、自分の手元にあるものを眺めてみる。
「これは、なぜここにあるんだろう。」
そう考えるだけでも、見え方が変わります。
慣れているから残す。
慣れているけれど変える。
使い続ける。
役割を変える。
手放す。
どれが正解ということではありません。
その道具が、
「今の自分の仕事をちゃんと支えているか」
それを確認する。
道具に慣れることと、
道具に縛られることは違います。
使い慣れた道具ほど、ときどき少し離れて眺めてみる。
その距離があると、
今まで見えていなかった「当たり前」が、少し見えてくるのだと思います。