つい商品を集めたくなるブランドや、見かけると少し気分が上がるキャラクター。好きだから、見ていると楽しいから、自分らしさを感じられるから。商品そのものの機能や価格とは別のところにも、選びたくなる理由があります。今回はサンリオの最近の取り組みをきっかけに、「好き」という気持ちをどうすれば商品やサービスの価値につなげられるのかを考えます。
サンリオが発表した2つの取り組み
2026年10月、サンリオから興味深い発表が続きました。一つは、ハローキティと一緒に楽しめる体験型イベント「Hello Kitty's Lounge」。2026年10月28日から11月8日に東京・表参道ヒルズで開催予定で、自分だけのBGMづくり、好きなリボンを選ぶオリジナルシュシュづくり、ハローキティとの写真撮影などを楽しめます。
もう一つは、レゴグループとの複数年にわたるパートナーシップです。2026年10月6日に発表され、ハローキティをはじめとするサンリオキャラクターやその世界観を再現した「レゴ サンリオ」セットが、2027年以降に発売予定とされています(出典はいずれもサンリオ公式ニュースリリース)。
この2つに共通するのは、キャラクターを商品として届けるだけでなく、その世界観を別の形でも楽しめるようにしていることです。イベントでは自分でつくる、写真を撮る、誰かと楽しむ。レゴでは、ブロックを組み立てながら世界観に触れる。サンリオの公式発表では、イベントについて「好き」をきっかけに人とのつながりを感じる体験が掲げられています。ブランドの価値を、商品だけに閉じ込めない考え方といえます。
「好き」をつくるのではなく、「好き」が育つ接点をつくる
お客様に好きになってもらいたいからといって、商品の数を増やしたり、派手なイベントを開催したりすればよいわけではありません。人が何かを好きになる理由はそれぞれ違います。デザインが気に入った、つくり手の考え方に共感した、使ってみたら便利だった、誰かからプレゼントされて思い出ができた。きっかけは一つではありません。
だから事業者ができるのは、「好きになってください」と押しつけることではなく、魅力に触れられる機会をつくることです。商品を実際に使ってみる機会、つくり手が制作の背景を発信すること、商品が生まれる過程の紹介、使う場面や楽しみ方の提案、お客様が感想を共有できる場、実店舗やイベントなど実際に触れられる場所。それぞれの接点がブランドの魅力を伝える役割を持ち、SNSで知り、ホームページで理解し、店頭で触れ、購入後も楽しめる、という流れでつながっていることが大切です。
キャラクターの個性は、見た目だけではつくれない
キャラクターをつくるとき、最初に考えるのは色、形、表情、名前といった見た目かもしれません。ただ、長く育てていきたいなら、どんな性格なのか、何を大切にしているのか、どんな場面で登場するのか、どんな人にどんな気持ちを届けたいのか、どんな物語や活動とつながっているのかも整理しておきたいところです。こうした設定があると、イラスト、商品、物語、イベント、SNS投稿を展開するときの判断基準ができます。
これはキャラクターだけの話ではなく、お店のブランドにも応用できます。見た目を整える前に、何を大切にするブランドなのかを整理する。そうすれば、ロゴや写真、文章、商品、接客の判断にも一貫性を持たせやすくなります。
異なるブランドが組むと、新しい楽しみ方が生まれる
サンリオとレゴの組み合わせのように、異なるブランドが組むことで、既存の魅力を別の形で楽しめる可能性が生まれます。ただし、名前を並べれば成功するものではありません。それぞれが大切にしていることを理解し、組み合わせる理由を考える必要があります。
小さな事業でも考え方は同じです。地域の食品をつくる事業者と食器をつくる作家、アクセサリー作家と写真を撮るクリエイター、イベントを企画する人と会場を提供するお店。お互いの強みを生かせるか、お客様にとって組み合わせる意味があるか、負担が一方に偏らないか。コラボレーションは話題づくりだけでなく、これまで接点のなかった人に魅力を届ける機会にもなります。
大切なのは、自分たちがすでに持っている魅力を見つけ、それを相手が理解しやすい形に整えることです。そして今どの段階にあるのか――まだ知られていないのか、知られているが魅力が伝わっていないのか、興味は持たれているが購入につながらないのか――に合った方法を選ぶこと。新しいものをつくる前に、今ある魅力がきちんと伝わっているかを見直してみるのもよさそうです。
