商品を売るだけでは、ブランドにならない。猫のパッケージが印象的な、北海道発のチョコレートブランド「CACAOCAT(カカオキャット)」。お店で見かけると、思わず手に取りたくなる。自分用だけでなく、誰かへのプレゼントにもよさそう。そんな印象を持つ人もいるのではないでしょうか。ここで考えたいのは、パッケージがかわいいという話だけではありません。チョコレートという商品に、デザイン、世界観、選ぶ楽しさ、贈る体験を組み合わせることで、どのようにブランドの魅力をつくっているのかを整理します。
チョコレートの魅力は、味だけでは構成されていない
CACAOCATは、北海道発のスイーツ企業DADACAが展開するチョコレートブランドです。公式サイトでは、北海道の自社工場で製造するチョコレートを紹介し、なめらかな口どけや素材へのこだわりを打ち出しています。そして、ブランドを印象づけているのが、猫をモチーフにしたパッケージです。個性豊かな猫たちがデザインされた商品には、切り絵、ペン画、写真など、さまざまな表現を用いるアーティストとのコラボレーション作品も使われています。さらに、フレーバーの豊富さや、缶・箱などのパッケージ展開もあります。
つまり、CACAOCATの魅力は、商品(チョコレートのおいしさや口どけ)、デザイン(猫をモチーフにした印象的なパッケージ)、選ぶ楽しさ(さまざまなフレーバー)、作品性(アーティストとのコラボレーション)、体験(自分で楽しむ、誰かに贈るという時間)が組み合わさることでつくられています。実際にどの要素が購入の決め手になるかは人によって異なります。大切なのは、一つの商品の中に、複数の魅力を設計していることです。
「おいしい」だけでは、違いが伝わりにくい
チョコレートを販売するとき、「おいしいチョコレートです」「素材にこだわっています」「なめらかな口どけが特徴です」という説明は大切です。しかし、同じような表現を使っている商品が複数あったら、購入する人は何を基準に選べばいいのでしょうか。そこで重要になるのが、商品そのものの特徴に加えて、「この商品を選びたい」と思える理由をつくることです。猫のパッケージは商品を見分ける目印になるだけでなく、猫が好きな人には興味を持つきっかけに、アートが好きな人にはパッケージそのものが魅力に、贈り物を探している人には相手が喜びそうな見た目が選ぶ理由になります。
商品の特徴と、選ぶ理由は違います。「何が入っているのか」「どんな素材なのか」を説明することと、「なぜ、この商品を選びたくなるのか」を考えること。この二つを整理すると、商品紹介の方向性が変わってきます。小さなお店でも同じです。焼き菓子のお店なら、材料や製法を説明するだけでなく、どんな時間に食べてほしいのか、誰への贈り物に向いているのかまで考えられます。商品を大げさに見せる必要はありません。すでにある魅力のうち、どの部分を、誰に向けて伝えるのか。まずはそこを整理することが大切です。
パッケージは、商品が出会う前から働いている
初めて見る商品では、使ったり食べたりする体験がまだありません。購入する人は、見た目、価格、説明、評判など、目に入る情報をもとに「試してみようか」と考えます。そのとき、パッケージや商品写真は購入前の情報として働きます。商品名を読まなくても猫のデザインが目に入る、商品を手に取る、ほかのフレーバーやパッケージも気になる。こうした行動が起きる可能性があります。デザインには、商品の特徴を伝え、ブランドを見分けやすくし、興味を持つきっかけをつくる役割があります。
小さなお店なら、イベント出店の売り場でも応用できます。遠くから見ても何の商品かわかる、商品名や価格が読みやすい、一番伝えたい特徴がすぐに目に入る、ブランドの雰囲気と売り場の印象が合っている、興味を持った人が購入方法をすぐに理解できる。お金をかけて豪華にすることよりも、誰に何を伝えたいのかを先に考えることが大切です。
また、フレーバーが多いことは選ぶ楽しさにもつながりますが、商品数を増やすこと自体が目的ではありません。選択肢を増やせば、製造、在庫管理、商品説明、販売管理の負担も増えます。商品を「選ぶ理由」で整理する――初めての人向けに人気商品を試せるセット、自分用に好きな味を選べる商品、贈り物向けに見た目や内容量に配慮したギフト、リピーター向けに新しい味や季節限定の商品――と、購入する人が自分に合うものを見つけやすくなります。商品が多いことと、選びやすいことは、必ずしも同じではありません。
北海道発という背景を、どう価値に変えるか
CACAOCATは、北海道の自社工場で製造していることをブランドの特徴として紹介しています。ただし「北海道産」「北海道発」と書けば、それだけで商品の価値が伝わるわけではありません。何が北海道と関係しているのか、どこで作られているのか、どんな人が関わっているのか、地域とのつながりが商品にどう表れているのか。こうした情報が具体的になるほど、読み手は商品の背景を理解しやすくなります。
これは旭川や上川地域の事業者にとっても考える価値のあるポイントです。地元の素材を使った商品、地域で長く続くお店、土地の文化を活かしたサービス、地域の作り手と協力して生まれた商品。地域とのつながりは、さまざまな形で事業の特徴になります。ただし、地域性を前面に出すことがすべての事業にとって正解とは限りません。何を強みにするかは、届けたい相手と商品によって変わります。商品を変える前に、伝え方を整理してみる。新しい商品を増やすことも、デザインを変えることも選択肢の一つですが、その前に、今ある商品の魅力がきちんと伝わっているかを確認してみてください。変えるべきなのは、商品そのものではなく、商品の価値を伝える仕組みかもしれません。
