富良野市の情報発信から考える、地域の魅力の伝え方。魅力があることと、魅力が伝わることは、同じではありません。地域の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい、地元に関心を持ってもらいたい、実際に訪れてもらったり商品を買ってもらったり、地域と関わる人を増やしたい。これは自治体だけの課題ではなく、小さなお店や個人事業主にとっても共通するテーマではないでしょうか。
今回注目したのは、富良野市が2026年10月14日に公開した「プレスリリースによる富良野市のシティプロモーション」という情報です。富良野市では、地域の魅力を再発見したり、新たな魅力を生み出したりしながら、市内外に効果的に発信する取り組みを進めています。その目的には、富良野の認知度を高めることや、地域に関わる人を増やすこと、移住・定住やふるさと納税などにつなげることが含まれています。また、10月14日付の発信では、人気サッカー漫画「キャプテン翼」のデザインマンホール蓋の第2弾設置についても紹介されています(詳細は富良野市公式サイトをご確認ください)。
シティプロモーションは、地域の魅力を伝える「営業活動」
シティプロモーションとは、地域の魅力を知ってもらい、その地域に関心を持つ人や関わる人を増やしていくための取り組みです。観光地として知ってもらう、地域の商品を知ってもらう、住んでみたいと思ってもらう、地域の活動に参加してもらう。こうした行動につながるように、地域の情報を整理し、さまざまな方法で発信していきます。富良野市の公式情報でも、シティプロモーションを地域を活性化させるための「営業活動」と捉えています。地域の魅力を知ってもらうということは、単に情報を公開するだけではありません。相手に関心を持ってもらい、次の行動につながるきっかけをつくることでもあるのです。
これは小さな事業の情報発信にも通じます。地域で飲食店を営んでいるとします。おいしい料理を提供している、食材にもこだわっている、お客様に喜んでもらえるように工夫している。それでも、そのお店を知らない人は、その魅力を知ることができません。技術があること、商品にこだわりがあること、丁寧に仕事をしていることは大切な価値ですが、相手に伝わる形になっていなければ、選ぶための判断材料にならない場合があります。事業の情報発信で考えるべきは、誰に知ってもらいたいのか(地元のお客様なのか、観光客なのか、企業なのか)、何を知ってもらいたいのか(商品の特徴、サービスの内容、事業者の考え方)、どんな行動につなげたいのか(来店、問い合わせ、購入、予約、イベントへの参加)の3つです。
「キャプテン翼」のマンホールから考える、魅力の見せ方
富良野市の発信のひとつに、「キャプテン翼」のデザインマンホール蓋があります。マンホールは普段の暮らしの中ではあまり意識されない存在かもしれません。しかし、そこに作品の世界観や地域とのつながりが加わることで、単なる道路設備とは違う見方が生まれます。「どこに設置されているのだろう」「実際に見てみたい」「写真を撮って紹介したい」。そんな関心が生まれる可能性があります。もちろん、デザインマンホールを設置すれば必ず観光客が増えるというわけではありません。ただ、地域にあるものに新しい意味や楽しみ方を加え、それを発信することは、地域を知ってもらうきっかけになり得ます。
これは小さな事業の商品づくりにも通じる考え方です。同じ商品でも、ただ機能や価格を紹介するだけでなく、背景にあるストーリーや、使う場面、作り手の思いを伝えることで、受け取る側の理解が深まることがあります。大切なのは見せ方だけを工夫することではなく、その商品や活動が持っている価値を見つけ、相手が理解しやすい形に整えることです。
発信する場所より先に、伝える内容を整理する
情報発信を始めようとすると、まずSNSのアカウントを作ったり、ホームページを制作したりすることがあります。もちろん、それらは情報を届けるための大切な手段です。ただ、どこで発信するかを決める前に考えておきたいのは、伝える内容です。地域の魅力を伝える場合、風景の写真を掲載するだけでなく、どこで撮影したのか、どんな季節に楽しめるのか、周辺にどんな場所があるのかを伝えれば、見る人が具体的にイメージしやすくなります。小さなお店なら、商品の写真だけでなく、利用方法、営業時間、購入できる場所なども必要になるでしょう。情報が足りなければ、興味を持った人がいても次の行動に移れないことがあります。誰に向けた情報なのか、何を知ってもらいたいのか、相手が知りたい情報は何か、どこで詳しい情報を確認できるのか、興味を持った人に次に何をしてほしいのか。これらを整理してから、ホームページやSNSなどの使い分けを考えていきます。
一度発信して終わりにしない
地域の魅力も、小さな事業の商品やサービスも、一度紹介しただけですべての人に伝わるわけではありません。情報を見ていない人もいれば、見ていてもまだ関心を持つタイミングではなかった人もいます。大切なのは、伝える相手や目的に合わせて必要な情報を届け続けることです。ひとつの商品について発信するなら、商品の特徴、どんな場面で使えるのか、作り手の考え方や制作背景、よくある質問への回答、購入方法や販売場所と、切り口を変えられます。ひとつの魅力を、ひとつの投稿で伝えきろうとしなくてもよいのです。
情報発信の成果は、投稿数だけでは測れません。アクセスが増えても問い合わせにつながらない場合は、情報の内容や問い合わせまでの流れを見直す必要があるかもしれません。逆に、アクセス数が多くなくても、必要としている人から問い合わせが来ることもあります。大切なのは目的に合った指標を選び、結果を見ながら改善すること。情報発信は、投稿を作る作業だけではなく、人と事業との接点をつくる活動でもあります。魅力を持っていることと、魅力が伝わることは違う。新しいものを作る前に、今ある価値を見つける。そして、必要としている人が理解できる形に整える。あなたの事業にも、まだ十分に伝わっていない魅力があるかもしれません。新しいことを始める前に、まずは今ある情報を見直してみる。その整理が、次の一歩につながることもあります。
