ブランド体験とは|人は商品ではなく「体験」を覚えている

SI — Structural Intelligence

「このブランドが好きです」。そう言う人は、何を好きになっているのでしょうか。商品でしょうか。デザインでしょうか。会社の考え方でしょうか。もちろん、それらもあると思います。でも、その奥には、「そのブランドに触れたときの体験」があることも多いのではないでしょうか。お店に入ったときの感じ。商品を手に取ったときの感じ。Webサイトを見たときの分かりやすさ。SNSの投稿を読んだときの印象。問い合わせをしたときの対応。商品が届いたときの気持ち。その一つひとつが、ブランドに対する記憶になっていきます。今回は、そんな「ブランド体験」について考えてみます。

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ブランド体験は、買う前から始まっている

ブランド体験とは、簡単に言えば、「顧客がブランドとの接点を通して経験すること」です。少し広く考えてみると、ブランド体験は商品を買う瞬間だけではありません。ブランドを初めて知る。検索してWebサイトを見る。SNSを読む。口コミを見る。店舗を訪れる。問い合わせる。商品を購入する。商品を使う。購入後にサポートを受ける。人に紹介する。こうした一連の経験が、ブランド体験になります。

面白いのは、商品を買う前からブランド体験が始まっていることです。たとえば、Googleなどで検索して、あるお店のWebサイトを見つけたとします。そこで、「何のお店なのか分からない」「どこにあるのか分からない」「どうやって問い合わせればいいのか分からない」となれば、それもブランド体験です。逆に、「何をしているのかすぐ分かる」「知りたい情報が見つかる」「問い合わせ方法も明確」となれば、安心感につながるかもしれません。つまり、Webサイトの使いやすさもブランド体験の一部です。SNSも同じです。投稿の写真、文章、投稿する頻度、コメントへの返信、プロフィール。こうしたものを通して、見る人はそのブランドについて少しずつ判断しています。

「接点」全部がブランド体験になる

ブランド体験を考えるとき、「接点」という言葉が便利です。ブランドと顧客が接する場所を全部並べてみる。検索結果、Webサイト、ブログ、SNS、店舗、商品、パッケージ、名刺、メール、電話、接客、イベント、購入後の連絡。これだけあります。そして、それぞれの接点で受けた印象が積み重なって、ブランド全体の印象になります。だから、ロゴだけをきれいにしても、ブランド体験全体が良くなるとは限りません。

ここで、「ブランドの約束」と「実際の体験」が一致するか、が重要になります。たとえば、「安心して相談できる」という価値を約束しているブランドがあるとします。ところが、問い合わせフォームが複雑で、返信も何日もなく、質問しづらい雰囲気だったらどうでしょう。言葉では「安心」を掲げていても、体験としては「不安」になってしまいます。このズレは、ブランドにとってかなり大きな問題です。逆に、ブランドが掲げていることと実際の体験が一致すると、「言っていることと、やっていることが同じだ」という信頼につながります。

良い体験は「豪華な体験」とは限りません。欲しい情報がすぐ見つかる。営業時間が正確に書いてある。問い合わせの方法が分かる。注文した商品が予定通り届く。困ったときにきちんと対応してくれる。こうした「普通のこと」も、立派なブランド体験です。むしろ小さな事業では、派手な演出よりも、「毎回ちゃんとしている」ことのほうが強い場合があります。「この店なら、いつも丁寧に対応してくれる」という期待があり、実際に行ってみて、やっぱり丁寧だった。この「いつも通り」が、安心につながります。ブランドにとって、毎回大きな感動を生み出す必要はありません。期待されていることを、安定して提供する。それも非常に大切なブランド体験です。

小さな事業では「人」そのものが体験になります。店主との会話、スタッフの対応、電話の声、メールの文章、SNSでの言葉、イベントでの振る舞い。こうしたものが、そのままブランドの印象になります。「Webでは丁寧なのに、店舗では急に雑になる」「SNSでは親しみやすいのに、問い合わせると冷たい」といったズレが続くと、ブランドイメージにも影響します。

ブランド体験を「流れ」で見る

ブランド体験は、一つひとつの接点だけを見るのではなく、流れとして見る方法もあります。検索する、Webサイトを見る、SNSを見る、興味を持つ、問い合わせる、サービスを利用する、商品を受け取る、使ってみる、もう一度利用する、人に紹介する。この途中で、どこかに「分からない」「面倒」「不安」があれば、そこで離れてしまうかもしれません。逆に、流れ全体が自然につながっていれば、ブランドへの理解や信頼が積み上がっていきます。

そのとき、「何を感じてほしいか」だけでなく、「その体験のあと、何をしてほしいか」も考えてみます。Webサイトを見て、問い合わせてほしい。SNSを見て、店に来てほしい。商品を使って、また買ってほしい。こう考えると、ブランド体験と顧客行動がつながってきます。一方で、すべてを「購入につなげるため」と考えてしまうのも少し違います。すぐには買わなくても、その経験が記憶に残ることがあります。そして数か月後、何か必要になったときに思い出す。「そういえば、あのお店があったな」。これもブランド体験の力です。

ブランド体験を整理するなら、次の5つの質問が使えます。初めて知った人は、最初に何を見るだろう。その人は、最初にどんな印象を持つだろう。問い合わせや購入までに、迷う場所はないだろうか。実際に利用したとき、ブランドが約束したことと一致しているだろうか。利用した後に、どんな記憶を残したいだろうか。この5つを順番に考えるだけでも、WebサイトやSNSの改善点が見つかることがあります。

ブランド体験というと「感動体験」をつくることだけに注目されがちですが、小さな事業の場合、もっと重要なのは、「どの接点でも、そのブランドらしさが感じられること」なのではないかと思います。Webサイトでは丁寧。SNSでも丁寧。問い合わせても丁寧。商品も丁寧。購入後も丁寧。こうした一貫性があると、少しずつ信頼が積み上がります。ブランド体験を考えることは、「全部を豪華にすること」ではなく、「全部を同じ方向に整えること」なのだと思います。

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