「この商品は、こんなに良いです」「こんなサービスができます」「私たちは、こんなことが得意です」。事業をしていると、どうしても自分が提供できるものから考えたくなります。でも、お客さんが見ているのは少し違うところかもしれません。「それで、私に何がいいの?」です。
バリュープロポジションとは何か
バリュープロポジション(Value Proposition)は、直訳すると「価値の提案」です。ただし、単に商品の価値を説明することではありません。大切なのは、「誰に、どんな価値を、なぜ提供できるのか」という関係で、誰のためなのか、どんな課題や欲求があるのか、何を提供するのか、どんな価値を感じてもらえるのか、なぜ自分たちが提供できるのかまで含めて考えます。
「良い商品なのに売れない」という状態が起きる原因の一つは、「良さ」と「欲しさ」がつながっていないことです。素材や技術、経験年数といった情報は大切でも、それだけでは「だから私に何がいいのだろう」が残ります。特徴と価値の間には、もう一段階あるのです。
たとえば「軽いバッグ」という特徴は、「長時間歩いても楽」という価値を経て、「旅行をもっと身軽に楽しめる」という体験へつながります。特徴、機能的なメリット、価値、体験という順です。「Webサイトを作りたい」という相談でも、本当に欲しいものはサイトそのものではなく、「問い合わせを増やしたい」「情報を整理したい」という先にある目的だということがあります。
考えるための3つの視点
1. お客さんが求めているもの。何に困っているのか、何を避けたいのか、どんな状態になりたいのか。
2. 自分が提供できるもの。商品、サービス、経験、技術、知識、仕組み。
3. 競合や代替手段との違い。別の店やサービスだけではなく、自分でやる、何もしないという選択肢まで含めます。
この3つが重なるところに、その事業ならではの価値が見つかることがあります。必ずしも「他では絶対に存在しないもの」である必要はなく、「この人にとって、この条件なら選びやすい」という組み合わせでも構いません。
USPとの違いと、注意したいこと
言葉を整理すると、強みは自分たちが得意なこと、差別化は他との違い、ポジショニングはどう認識されるか、USPは選ばれる理由として提示する独自の提案、バリュープロポジションは顧客にとって意味のある価値を整理したもの、という関係になります。「自分は何ができる?」から始めて、「それは誰にとって、どんな意味がある?」へ進んでいくイメージです。
また、「すべてのお客様に価値を提供します」は一見良さそうですが、実際には難しいものです。人によって、価格を重視するのか、品質か、手軽さか、安心感か、誰から買うかで、価値の感じ方は違うからです。「誰に向けるのか」が曖昧なままでは、「何が価値なのか」も曖昧になりやすくなります。
整理の入口として、「誰が?」「何に困っている?」「自分は何を提供できる?」「その結果、どんな良い変化が起こる?」の4つを書いてみる方法があります。最後の「良い変化」が重要です。また、実際のお客さんの言葉――「これがあると安心」――には、自分では気づいていなかった価値のヒントがあります。
まとめ
価値は、売る側だけでは完成しません。売る側が「価値があります」と言っても、相手にとって必要なければ伝わりませんし、逆に自分では普通だと思っていたことが、お客さんにとって大きな価値になっていることもあります。顧客を見て、自分が提供できるものと重ねてみる。バリュープロポジションを考えることは、そんな「価値の翻訳」なのかもしれません。
