「お客さんのニーズを考えましょう」。では「ウォンツ」とは何でしょうか。ニーズとウォンツはセットで説明されることが多いのですが、この違いを知っているだけでも商売の見え方が変わります。
ニーズは「必要」、ウォンツは「具体的に欲しいもの」
ウォンツ(wants)とは、「ニーズを満たすために欲しい、具体的な商品やサービス」のことです。たとえば「喉が渇いた」という状態には「水分を取りたい」というニーズがあり、そこから「水が飲みたい」「お茶が飲みたい」「炭酸飲料が飲みたい」という具体的な欲求が出てきます。
同じニーズでも選ぶものは違います。「お腹を満たしたい」というニーズがあっても、ラーメンを食べる人、カレーを食べる人、おにぎりを食べる人、パンを食べる人がいます。雨の日に「濡れたくない」というニーズがあっても、選ぶ傘は「とにかく安い傘でいい」「丈夫な傘が欲しい」「軽くて持ち歩きやすい傘が欲しい」と人それぞれです。「何が必要か」は比較的合理的に考えられますが、「何が欲しいか」には、その人らしさが出ます。逆に一つの商品でも、欲しい理由は違います。同じ焼き菓子を「自分のおやつに」「友達への手土産に」「北海道らしいものを贈りたいから」と買う人がいます。
「欲しいと言ったもの」をそのまま作らない
注意したいのは、お客さんが「○○が欲しい」と言ったからといって、それをそのまま商品化すればいいとは限らないことです。「もっと大きなサイズが欲しい」という言葉の奥には、「一つでは足りない」という不満や「家族みんなで使いたい」という背景があるかもしれません。欲しいものだけではなく、「なぜ、それが欲しいのか」を見ることが大切です。
「もっと安い商品が欲しい」も同じです。初めてだから試してみたい、失敗したくない、予算が決まっている、他の商品との違いが分からない。もし理由が「失敗したくない」なら、価格を下げる以外にも、お試しサイズを用意する、使い方を分かりやすくする、実際の利用例を紹介する、といった方法が考えられます。
反対に、同じような商品なのに高くても選ばれることもあります。デザインが好き、品質に安心感がある、お店の雰囲気が好き、作り手を応援したい、贈り物として選びやすい。また、欲しいのは商品そのものとは限らず、「安心したい」「楽をしたい」「誰かに喜んでもらいたい」という「こんな状態になりたい」という欲求もあります。
ウォンツを考えると伝え方が変わる
同じ商品でも、「北海道産です」だけで紹介するのと、「北海道のお土産を探している人に」「遠方の友人に北海道らしいものを贈りたい人へ」という切り口では、見せ方が変わります。包装、サイズ、持ち運び、日持ち、贈り方、商品の背景など、伝える情報も変わってきます。SNSでも、「新商品を発売しました」だけではなく、「休日に家族と楽しみたい人へ」のように、欲しいと思う場面を見せることができます。また、商品を知ることで「こんなものがあったら欲しい」という新しい欲求が生まれることもあります。ニーズに応えることと、新しい選択肢を提案することは、対立するものではありません。
考えるための問いは5つ。お客さんは具体的に何を欲しがっているか。なぜ、それが欲しいのか。それを手に入れることで、どんな状態になりたいのか。他の商品ではなく自分の商品を選ぶ理由は何か。まだ知られていないけれど提案できる選択肢はないか。小さな事業なら、実際のお客さんに「どうしてこれを選んだんですか?」と聞いてみるだけでも、気づいていなかった選ばれる理由が見つかることがあります。
