機械式時計は効率が悪い。でも、それが悪いとは思わない
時計が好きです。
正確に言えば、
機械式時計が好きです。
ゼンマイを巻く。
腕につける。
時間を見る。
それだけです。
スマートフォンでも、
正確な時間は分かります。
電波時計なら、
もっと正確です。
スマートウォッチなら、
時間だけではなく、
通知も、
健康データも、
メールも、
いろいろ確認できます。
それなのに、
なぜ機械式時計なのか。
たまに自分でも考えます。
そして、
たぶん答えは、
「効率が悪いから」
なのだと思います。
機械式時計は、効率だけなら負けている
機械式時計は、
便利とは言いにくい道具です。
毎日つけなければ、
止まります。
止まったら、
時間を合わせます。
長期間使わなければ、
また動かす必要があります。
クォーツ時計の方が、
ずっと楽です。
スマートフォンなら、
さらに便利です。
時間を見るだけなら、
機械式時計を選ぶ合理的な理由は、
あまりありません。
それでも、
僕は機械式時計が好きです。
「正確であること」だけが価値ではない
時計の役割を、
「正確な時間を表示すること」
だけに限定すれば、
機械式時計は効率が悪い。
でも、
時計には、
それ以外の価値もあります。
デザイン。
質感。
装着感。
歴史。
技術。
作り手の考え方。
長く使う楽しさ。
そして、
自分がその時計を選んだ理由。
時間を確認するだけなら、
どんな時計でもいい。
でも、
「何を身につけるか」
まで含めると、
話が変わります。
道具には、性能以外の価値がある
これは、
時計だけではありません。
万年筆。
ギター。
カメラ。
家具。
革製品。
靴。
自転車。
車。
いろいろなものに、
「性能だけでは説明できない価値」
があります。
もちろん、
性能は大切です。
使えなければ困ります。
壊れやすければ困ります。
でも、
性能だけで全部を決めてしまうと、
少し味気ない。
僕は、
道具には、
「使う人との関係」
もあると思っています。
長く使うと、道具との関係が変わる
機械式時計は、
長く使うことができます。
定期的なメンテナンスは必要です。
オーバーホールも必要になります。
傷もつきます。
経年変化もあります。
新品のときと、
何年か使ったあとでは、
少し違う表情になります。
でも、
その傷や変化も含めて、
自分の時計になっていく。
ここが面白いところです。
新品の状態が、
完成ではない。
使いながら、
時間を重ねる。
そうして、
自分との関係ができていく。
メンテナンスが必要なのも、悪くない
機械式時計は、
放っておけばいい道具ではありません。
定期的にメンテナンスが必要です。
これは、
一見すると面倒です。
でも、
僕はそこも嫌いではありません。
むしろ、
「長く使うなら、手をかけるのは当然」
と思っています。
これは、
Webサイトにも似ています。
Webサイトも、
一度作ったら終わりではありません。
情報を更新する。
リンクを確認する。
古くなった情報を直す。
必要なら構成を変える。
お問い合わせ方法を見直す。
サービス内容が変われば、
サイトも変える。
メンテナンスが必要です。
「作って終わり」に違和感がある
Web制作では、
「サイトを完成させる」
ことが、
ゴールになりやすい。
公開した。
納品した。
終わり。
でも、
本当はそこから使い始めるわけです。
機械式時計で言えば、
買った瞬間は、
スタートです。
Webサイトも、
公開した瞬間が、
スタート。
そこから、
使う。
見る。
直す。
育てる。
この繰り返しがある。
僕は、
この感覚が好きです。
新しいものだけが正解ではない
Webの世界は、
新しいものがどんどん出てきます。
新しいSNS。
新しいAI。
新しいCMS。
新しい広告手法。
新しいマーケティング。
新しいツール。
もちろん、
新しいものには、
新しい価値があります。
でも、
「新しいから正しい」
わけではありません。
古いものにも、
残っている理由があります。
機械式時計が、
何百年にもわたって改良されながら残っているように、
長く使われている仕組みには、
それなりの理由があります。
「古い」と「使えない」は違う
ここは、
仕事でもよくあります。
古いホームページを見ると、
「リニューアルした方がいい」
となりがちです。
でも、
本当にそうでしょうか。
情報が古い。
スマートフォンで見にくい。
更新できない。
問い合わせにつながらない。
そうなら、
改善する必要があります。
でも、
単純に、
「デザインが古いから」
だけで作り直す必要はありません。
今のサイトに、
使える部分があるかもしれない。
大切なのは、
新しいか古いかではなく、
今の目的に合っているか。
そこです。
効率化しすぎると、失うものもある
仕事では、
効率化が大切です。
時間を短くする。
作業を減らす。
自動化する。
ミスを減らす。
これは、
とても大切です。
僕自身、
Webやツールを使って、
仕事を効率化することを考えます。
でも、
「効率化できるものは全部効率化する」
とは思っていません。
人がやった方がいいことまで、
効率化する必要はない。
例えば、
お客さんの話を聞くこと。
相手の言葉を考えること。
文章を何度も読み返すこと。
アイデアを寝かせること。
誰かと話しながら考えること。
こういう時間は、
効率だけでは測れません。
AI時代だからこそ、時間をかける意味がある
AIを使えば、
文章は速く作れます。
情報も整理できます。
アイデアもたくさん出せます。
これは、
ものすごく便利です。
僕も使います。
でも、
「速くできること」と、
「速くやるべきこと」は、
同じではありません。
AIに10秒で文章を書いてもらえても、
その文章が自分の仕事に合っているか、
確認する時間は必要です。
むしろ、
AIが速くなればなるほど、
人間が考える時間の価値は、
上がるのかもしれません。
速さと価値は、別のもの
速い。
安い。
便利。
効率的。
これは、
とても分かりやすい価値です。
でも、
それだけではない価値があります。
丁寧。
長く使える。
愛着が湧く。
信頼できる。
自分に合っている。
気持ちよく使える。
思い出がある。
これらは、
数字にしにくい。
でも、
確かに存在します。
機械式時計を好きなのは、
たぶん、
そういう価値が好きだからです。
良い道具は「使う時間」まで含めて価値になる
例えば、
一本のペンを買ったとします。
書ければいいなら、
安いボールペンでも十分です。
でも、
そのペンを毎日使う。
手になじむ。
書き味が好きになる。
大切なことを書く。
何年も使う。
そうなると、
単なる筆記具ではなくなります。
その人にとっての意味が、
少しずつ増えていく。
時計も同じです。
買ったときの価値だけではなく、
使った時間が積み重なっていく。
これは、
デジタルの道具とは、
少し違う感覚かもしれません。
「道具を育てる」という考え方
僕は、
道具を「育てる」
という言い方が好きです。
もちろん、
時計が勝手に成長するわけではありません。
使う。
手入れする。
修理する。
調整する。
自分の使い方に合わせる。
そうして、
長く付き合っていく。
Webサイトも、
似ています。
公開する。
使う。
反応を見る。
直す。
情報を追加する。
不要なものを削る。
また使う。
こうして、
少しずつ、
その事業に合ったWebサイトになっていく。
最初から完璧じゃなくていい
機械式時計も、
Webサイトも、
最初からすべてが完璧である必要はありません。
むしろ、
使ってみなければ分からないことがあります。
実際に腕につけてみて、
分かることがある。
実際に仕事で使ってみて、
分かることがある。
実際にお客さんに見てもらって、
分かることがある。
だから、
最初に全部を決めようとしすぎない。
まず使う。
そして、
必要なところを直す。
この考え方は、
松井構造室でWebを考えるときにも、
大切にしています。
道具は、効率だけで選ばなくていい
もちろん、
仕事では効率が大切です。
僕も、
効率化できるところは、
どんどん効率化したい。
でも、
自分が毎日使う道具まで、
効率だけで選ばなくてもいい。
好きだから使う。
気持ちいいから使う。
長く使えるから選ぶ。
そんな理由があってもいい。
仕事道具だからといって、
全部を合理性だけで決めなくてもいいと思っています。
機械式時計は、時間を効率化しない
ちょっと考えてみれば、
面白い道具です。
時計は、
時間を測るためのもの。
でも、
機械式時計を持つことによって、
時間が効率化されるわけではありません。
むしろ、
ゼンマイを巻く時間が必要になる。
メンテナンスも必要になる。
時間も少しずれる。
それでも、
好きで使う。
なぜか。
たぶん、
時間を「管理する」だけではなく、
時間を「感じる」道具でもあるからです。
仕事にも、そういう部分があっていい
仕事も、
全部を効率化しなくていい。
考える。
迷う。
話す。
書く。
作る。
直す。
ときには、
遠回りする。
もちろん、
無駄を減らすことは大切です。
でも、
一見すると遠回りに見える時間が、
結果的に良い仕事につながることもあります。
だから、
「効率が悪い=悪い」
とは限らない。
ここは、
僕自身が仕事をするときにも、
忘れないようにしたいところです。
道具を選ぶことは、自分の時間を選ぶこと
時計を選ぶ。
ペンを選ぶ。
キーボードを選ぶ。
椅子を選ぶ。
パソコンを選ぶ。
これは、
何を買うかという話だけではありません。
毎日、
何に触れるのか。
どんな環境で働くのか。
どんな時間を過ごすのか。
そういうことでもあります。
だから、
道具選びは、
意外と人生に近い。
少し大げさかもしれません。
でも、
毎日使うものなら、
あながち大げさでもないと思っています。
効率だけでは測れないものを大切にしたい
機械式時計は、
効率が悪い。
これは、
事実です。
でも、
それでいい。
効率だけでは測れないものがあるからです。
長く使える。
愛着が湧く。
手をかける。
時間を重ねる。
自分のものになっていく。
そういう価値があります。
そして、
これはWebにもつながっています。
新しいサイトを作ることだけが、
仕事ではない。
今あるものを整理する。
必要なところを直す。
使いやすくする。
自分で更新できるようにする。
長く使える形にする。
僕は、
そんなWebの方が好きです。
道具は、人生を少し豊かにする
時計を見て、
時間を確認する。
それだけなら、
スマートフォンで十分です。
でも、
腕に機械式時計があると、
少しだけ違う。
ゼンマイが動いている。
歯車が動いている。
針が進んでいる。
そのことを知りながら、
時間を見る。
それだけで、
少し面白い。
道具には、
そういう力があります。
仕事を速くするだけではなく、
仕事を少し好きにする。
毎日の小さな行動を、
少し気持ちよくする。
僕は、
そんな道具が好きです。
だから、
これからも、
効率のいい道具を探しながら、
効率だけでは選ばない道具も、
大切にしていきたいと思います。
機械式時計は、
効率が悪い。
でも、
それが悪いとは思わない。
むしろ、
「効率だけが価値じゃない」
ということを、
腕の上で静かに教えてくれる。
僕にとっては、
そんな道具です。
おまつの道具箱。
次は、
また別の道具を開けてみます。