「お客様に喜んでもらいたい。」
仕事をしている人なら、たぶん誰もが一度は考えることだと思います。
だからこそ、
もっとサービスを増やそう。
もっと丁寧に対応しよう。
もっと要望に応えよう。
もっと期待を超えよう。
と頑張ります。
でも、ここには少し落とし穴があります。
「お客様の期待に100%応えること」と、
「お客様にとって良い仕事をすること」は、
必ずしも同じではありません。
むしろ、期待に応えようとすることばかり考えていると、仕事そのものが苦しくなることがあります。
今回は、
「期待に100%応えても、なぜ満足されないことがあるのか?」
というところから、小さな事業やサービスのつくり方を考えてみます。
「期待」は、相手の頭の中にある
まず考えておきたいのは、
「期待」は商品やサービスの中に書いてあるものではない、ということです。
お客様が、
「これくらいしてくれるだろう」
「これくらいできるだろう」
「きっとこういうサービスだろう」
と想像しているもの。
それが期待です。
つまり、同じサービスでも、人によって期待が違います。
Aさんは、
「最低限、きちんと対応してくれればいい」
と思っている。
Bさんは、
「せっかくお金を払うのだから、細かいところまでやってほしい」
と思っている。
Cさんは、
「自分では思いつかない提案までしてほしい」
と思っている。
同じサービスでも、スタート地点が違います。
だから、
「100%応える」
という数字だけでは、実は何もわかりません。
満足は「実際の体験」と「期待」の差で変わる
たとえば、あるサービスを利用する前に、
「ものすごく良いサービスなんだろう」
と期待していたとします。
実際には、とても良いサービスだった。
でも、
「思っていたほどではなかった」
と感じるかもしれません。
逆に、
「正直、そこまで期待していなかった」
ところに、
ちょっとした気遣いがあった。
すると、
「思っていたより良かった」
となる。
同じサービスでも、受け取られ方が変わります。
だからマーケティングでは、
「何を提供するか」
だけでなく、
「利用する前に、相手は何を期待しているのか」
を見ることが大切になります。
「期待を超える」は、何でも足せばいいわけではない
「期待を超えるサービスをしよう」
という言葉は、とても聞こえがいい。
でも、
無料で追加する。
作業を増やす。
営業時間外も対応する。
何でも相談に乗る。
サービス範囲を広げる。
という方向に行ってしまうと、提供する側が疲弊してしまいます。
そして一度やったことが、
「前回はやってくれたのに」
という新しい期待になってしまうこともあります。
これは小さな事業ほど注意したいところです。
頑張っているのに、どんどん自分の首が締まっていく。
そんな状態は避けたい。
「応える」と「合わせる」は違う
ここは、かなり大切な違いだと思っています。
お客様の要望に合わせることと、
お客様にとって必要なことを考えることは、同じではありません。
例えば、
「ホームページに情報を全部載せてください」
と言われたとします。
そのまま情報を全部追加するのが、
本当に「応える」ことでしょうか。
もしかすると必要なのは、
情報を減らすことかもしれません。
順番を変えることかもしれません。
ページを分けることかもしれません。
そもそも載せる必要がない情報を整理することかもしれません。
「言われたことをそのままやる」
のではなく、
「その要望の奥に何があるのかを見る」。
これも、仕事の一つだと思います。
良いサービスには「できること」と「できないこと」がある
何でもできることが、良いサービスとは限りません。
むしろ、
「ここまではできます」
「ここから先は別の専門家にお願いしたほうがいいです」
と言えることも大切です。
例えばWebの仕事でも、
デザインはできる。
情報整理もできる。
Webサイトの構築もできる。
でも、写真撮影については専門のカメラマンに頼んだほうがいい。
法律については専門家に確認したほうがいい。
広告運用については専門会社の力を借りたほうがいい。
そうやって役割を分ける。
一人ですべてを抱え込まない。
これも、結果的にはお客様にとって良いことがあります。
「期待値」を上げすぎない
仕事を頼んでもらうために、
「何でもできます」
「全部お任せください」
「必ず成果を出します」
と言いたくなることがあります。
でも、約束を大きくすればするほど、その後の期待値も上がります。
そして、実際の仕事とのギャップが生まれやすくなる。
だから僕は、
「できることを、できるだけ正確に伝える」
ほうが長く続く関係には向いていると思っています。
できないことは、できない。
まだ経験がないことは、まだ経験がない。
一緒に考えることなら、一緒に考える。
必要なら他の人につなぐ。
そのほうが、結果として信頼をつくりやすい。
Webサイトにも「期待値」がある
これはWebサイトにも、そのまま当てはまります。
例えばホームページを見て、
「ここなら何でも相談できそう」
と思ったのに、実際には対応していなかった。
「すぐ予約できる」
と思ったのに、予約方法がわからない。
「料金が書いてある」
と思ったのに、実際には条件が複雑だった。
こういう小さなズレが、体験を悪くします。
だからWebサイトでは、
「魅力を大きく見せる」
だけではなく、
「実際に利用したときとのズレを減らす」
ことも大切です。
できること。
できないこと。
料金。
流れ。
時間。
場所。
対象となる人。
必要な情報を、必要な場所に置いておく。
これは地味ですが、とても重要な情報設計です。
「期待を超える」より「期待を裏切らない」
少し言い換えるなら、
「期待を超えること」ばかりを目指すより、
「期待を裏切らないこと」
を丁寧に積み重ねる。
そのうえで、
「思っていたよりちょっと良かった」
が生まれる。
この順番のほうが、長く続く事業には向いているのではないでしょうか。
派手なサプライズより、
「ちゃんとわかる」
「ちゃんとできる」
「ちゃんと返事がくる」
「ちゃんと約束を守る」
という積み重ね。
実は、こういう当たり前の部分が強い。
だから「伝える」ことが大切になる
期待値は、情報発信によってもつくられます。
ホームページの文章。
SNSの投稿。
広告。
商品説明。
スタッフの説明。
全部が、
「このサービスは、どんなものなのか」
を伝えています。
だからマーケティングは、
「どうやって期待を高めるか」
だけではなく、
「どんな期待を持ってもらうのが適切なのか」
まで考える必要があります。
良く見せる。
大きく見せる。
すごく見せる。
それだけではなく、
「実際の体験と一致するように伝える」
こと。
これも情報設計の仕事です。
期待を整理すると、サービスも整理できる
「お客様の期待に応えなければ」
と考えて苦しくなったときは、
一度、こう整理してみるといいかもしれません。
・お客様は何を期待しているのか
・その期待は、どこから生まれたのか
・こちらは何を約束しているのか
・実際には何を提供しているのか
・期待と実際にズレはないか
・できること/できないことは明確か
・もっと良くするなら、何を足すのかではなく何を整えるのか
こうして見ると、
「もっと頑張らなければ」
ではなく、
「ここを整理すればいい」
という問題が見つかることがあります。
100点を目指す前に、採点基準を合わせる
仕事では、
「100点のサービスを提供しよう」
と思います。
でも、100点というのは、
「誰にとっての100点なのか?」
という問題があります。
だから、
「相手が何を期待しているのか」
を理解する。
そして、
「こちらが何を提供するのか」
を明確にする。
その二つを近づける。
それだけでも、サービスの質は変わっていきます。
期待を超えることは、もちろん素晴らしい。
でも、その前に、
期待を正しく理解する。
約束を明確にする。
実際の体験とのズレを減らす。
そのうえで、
「ちょっと嬉しい」
をつくる。
僕は、この順番が大切なんじゃないかと思っています。
小さな事業に必要なのは、
「何でもできます」
ではなく、
「何を、どこまで、誰のために提供するのか」
がわかること。
そして、その約束がWebサイトやSNSにもきちんと反映されていること。
期待を増やす前に、期待を整理する。
それもまた、
「活動を整理し、動ける形にする」
ための一つの方法なのだと思います。