ブランドガイドラインとは|「らしさ」を守るための小さな事業の基準づくり

SI — Structural Intelligence

ブランドについて考えていると、あるところでこんな問題が出てきます。「ブランドの方向性は決めたけれど、実際に使うときはどうすればいいんだろう?」。ブランドコンセプトを決めた。ブランドメッセージも考えた。ロゴもある。色も決めた。文章の雰囲気もなんとなく決まっている。ところが、実際にWebサイトを更新したり、SNSを投稿したり、チラシを作ったりすると、少しずつバラバラになっていく。こういうことは、珍しくありません。そこで役に立つのが、「ブランドガイドライン」という考え方です。簡単に言えば、「このブランドを、どんな考え方・ルールで表現していくのか」を整理したもの。ブランドを守るためだけではなく、ブランドを日々使いやすくするための道具でもあります。

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ブランドガイドラインは「禁止事項集」ではない

ブランドガイドラインと聞くと、少し堅苦しく感じるかもしれません。「ロゴはここから何mm離す」「この色以外は使ってはいけない」「このフォント以外は禁止」。そんな細かなルールを思い浮かべる人もいると思います。もちろん、そうしたルールもブランドガイドラインの一部です。でも、本質はそこだけではありません。もっと大事なのは、「なぜ、このブランドはこう表現するのか?」という考え方を共有できることです。ルールだけを並べても、なぜそうするのかが分からなければ、少し状況が変わっただけで判断できなくなります。

なぜブランドガイドラインが必要なのか

ブランドは、一度つくって終わりではありません。Webサイトを更新します。SNSを投稿します。新しい商品をつくります。チラシをつくります。スタッフが増えるかもしれません。外部のデザイナーや制作会社に依頼することもあります。そのたびに「今回はどうしよう?」とゼロから考えていると、少しずつ判断がズレていきます。最初は落ち着いたブランドだったのに、SNS担当者が変わったことで急に文章が派手になった。新しいチラシを作ったら、ロゴや色の使い方が以前と違った。こうした小さなズレが積み重なると、ブランドイメージも少しずつ変わっていきます。だからこそ、「迷ったときに戻れる場所」としてブランドガイドラインが役に立ちます。

「うちは一人でやっているから、そんなものはいらない」と思うかもしれません。むしろ一人でやっている場合でも、簡単なものを作っておく価値があると思っています。ただし、何十ページもの立派な資料を作る必要はありません。A4用紙1枚でもいい。そこに、この事業は何を大切にするのか、誰にどんな印象を持ってもらいたいのか、どんな言葉を使うのか、どんな言葉は使わないのか、写真はどんな雰囲気にするのか、ロゴや色をどう使うのか、を書いておくだけでも、かなり違います。大事なのは「立派な資料を作ること」ではなく、判断の基準を持っておくことです。

ブランドガイドラインに何を書くのか

内容はブランドによって変わりますが、基本的には次のような項目を考えることができます。

1. ブランドの目的。そもそも、このブランドは何のために存在するのか。「なぜ、この活動をしているのか?」まで考えます。
2. ブランドコンセプト。ブランドを一言で表すなら何なのか。判断の中心に置きます。
3. ブランドの価値観。何を大切にするブランドなのか。ただし、「誠実」「安心」「高品質」のような言葉だけを並べても判断には使いにくい。「このブランドにとって、それは具体的にどういう行動なのか?」まで考えます。
4. ブランドパーソナリティ。もしブランドを一人の人間に例えるなら、どんな人なのか。
5. トーン・オブ・ボイス。どんな言葉遣いをするのか。「何を言うか」だけではなく、「どういう口調で言うか」を決めます。
6. ビジュアル・アイデンティティ。ロゴ、色、フォント、写真など、視覚的なルールです。
7. 使用ルール。ロゴをどう使うか、ブランド名をどう表記するか、色をどう使うか、写真をどう扱うか。

ガイドラインを作るとき、細かなルールをたくさん作りたくなることがあります。でも、ルールを増やせば増やすほど良いわけではありません。現場では「このケースはルールに書いてない」という問題が出てきます。そこで必要なのが、ルールの背景にある判断基準です。「親しみやすくする」というルールだけでは曖昧です。それよりも、「専門家だけに分かる言葉ではなく、初めて見る人にも意味が伝わる表現を優先する」としたほうが、判断しやすくなります。ブランドガイドラインは、「何をすればいいか」を決めるものでもあり、「迷ったときにどう判断するか」を決めるものでもあるのです。

SNSにも基準があると便利です。投稿を作る前に、この投稿はブランドの考え方とつながっているか、読んだ人にどんな印象が残るか、いつものブランドらしい言葉になっているか、売り込みだけになっていないか、写真やデザインがブランドの雰囲気と合っているか、を確認する。これだけでも、投稿の方向性がかなり安定します。Webサイトの更新にも効いてきます。新しいサービスページを追加するとき、「このページを見た人に、ブランドとしてどんな印象を残したいか?」まで考えられるようになるからです。

ガイドラインは「変えてはいけないもの」ではない

ブランドガイドラインを作ると、「一度決めたら絶対に変えてはいけない」と思ってしまうことがあります。でも、ブランドは事業と一緒に変化します。顧客が変わることも、商品が変わることもあります。だからブランドガイドラインも、必要に応じて更新していい。むしろ、実際に使ってみて「このルールでは判断しにくいな」と分かったら、見直せばいいのです。ブランドガイドラインは、ブランドを縛るためのものではなく、ブランドを運用するための道具です。

小さな事業なら、まず「5つ」でもいいと思います。このブランドは、何を大切にするのか。どんな人に、どんな印象を持ってもらいたいのか。どんな言葉を使うのか。どんな見た目にするのか。迷ったとき、何を基準に判断するのか。これだけでも、WebサイトやSNSを運用するときの迷いはかなり減ります。

ブランドは、額縁に入れて飾っておくものではありません。Webサイトにも、SNSにも、商品にも、接客にも、文章にも、日々の仕事にも使う。そのたびに、ブランドの意味が少しずつ伝わっていきます。だから、ブランドガイドラインは「ブランドを完成させるための資料」というより、ブランドを日常の中で使い続けるための説明書くらいに考えてもいいのかもしれません。

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