ブランド認知とは|「知っている」ではなく「思い出してもらう」をつくる

SI — Structural Intelligence

「ブランド認知」という言葉があります。マーケティングやブランディングの話では、よく出てくる言葉です。簡単に言えば、「そのブランドのことを、どれくらい知っている人がいるか」という話です。ただ、ここで少し考えてみたいことがあります。「知っている」とは、どこまでを指すのでしょうか。名前を聞いたことがある。ロゴを見たことがある。何を売っているか知っている。必要になったときに思い出せる。これらは、似ているようで少し違います。ブランド認知を考えるときは、単に「有名になったかどうか」だけではなく、どんな場面で思い出してもらえるのかまで考えることが大切なのだと思います。

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ブランド認知=有名になること、ではない

まず、ここは分けて考えたいところです。ブランド認知が高いことと、誰もが知っていることは、必ずしも同じではありません。たとえば、全国的にはほとんど知られていなくても、ある地域では非常によく知られているお店があります。特定の趣味を持つ人たちの間では、有名なブランドもあります。これは、商圏や顧客層によって「認知」の意味が変わるからです。小さな事業の場合、全国の人に知られる必要はありません。むしろ、「必要としている人に、必要なときに思い出してもらえる」ことのほうが重要な場合があります。旭川のある地域で仕事をしている人なら、全国的な知名度よりも、旭川やその周辺で「このことなら、あの人」と思い出してもらえることのほうが意味を持つかもしれません。

「見たことがある」と「思い出せる」は違う

たとえば、SNSで何度も見たことがあるお店があったとします。投稿を見れば「あ、このお店知ってる」と思う。でも、誰かに「この近くでパンを買うなら、どこ?」と聞かれたとき、そのお店の名前が出てこない。これは、ブランドを見れば認識できるけれど、必要な場面で自分から思い出せる状態とは少し違います。マーケティングでは、前者を「ブランド再認」、後者を「ブランド再生」といった言葉で区別することがあります。つまり、「見たことがある」から、「あのときの、あのお店だ」、さらに「こういうときは、あそこ」へ進んでいく。ブランド認知は、単純な知名度だけではありません。

フォロワーが多ければ、認知も高いのか、という点も考えておきたいところです。フォロワー数、いいね数、表示回数、再生回数。もちろん、これらの数字は活動状況を見るうえで参考になります。でも、たくさん表示されても、「何のアカウントだったっけ?」となることがあります。逆に、フォロワーがそれほど多くなくても、特定の地域や業界では「知っている人が多い」という状態もあります。SNSの数字を見るときも、「何人に見られたか」だけではなく、「何と結びついて覚えられたか」を見るほうが面白いと思っています。

認知には「意味」が必要になります。名前だけ知られていても、何をしている人なのか分からなければ、必要な場面で思い出してもらうのは難しくなります。「名前は知っている」だけではなく、「○○をしている人」「○○なら、このお店」というように、何らかの意味と結びついていることが大切です。ブランド認知はゴールというより、ブランドを育てていくための入口のひとつだと考えると分かりやすいでしょう。

小さな事業では「狭く深く」でもいい

「もっと認知を広げなきゃ」と考えると、つい多くの人に届けようとしてしまいます。でも、本当に必要なのは「誰にでも知られること」でしょうか。地域で店舗を営んでいるなら、その地域で生活している人に知られていること。専門的なサービスなら、そのサービスを必要とする人に知られていること。こう考えると、認知には「広さ」だけでなく「適切さ」があります。誰に知られるのか。何をしている人として知られるのか。どんな場面で思い出してもらいたいのか。この3つを考えるだけでも、発信の方向はかなり変わります。

認知をつくるのは、広告だけではありません。Webサイト、SNS、検索、口コミ、店舗、商品、名刺、イベント、人との会話。こうした接点が全部、ブランドを知るきっかけになります。そして、接点が増えるほど重要になるのが「一貫性」です。WebサイトではAと言っているのに、SNSではBと言っている。写真の雰囲気が毎回まったく違う。こうなると、接触回数が増えてもブランドの印象が積み上がりにくくなります。逆に、同じ名前、同じ考え方、似た言葉、似た雰囲気が繰り返し現れると、少しずつ「ああ、あの人だ」「あのお店だ」と認識されやすくなります。

SNSでは「毎日投稿したほうがいい」という話がよくあります。でも、「毎日投稿すること」そのものを目的にしないほうがいいと思っています。大切なのは、接触するたびに少しずつ理解が深まることです。ある日は考え方が分かる。別の日には、何をしている人なのか分かる。また別の日には、人柄が少し分かる。そして、必要なタイミングでサービスや商品を思い出す。こうした積み重ねによって、単なる「見たことがある」から、「知っている」へ変わっていきます。

自分の事業について考えるなら、次のチェックポイントが使えます。名前を見たときに「何のブランドか」分かるか。何をしている人・会社なのか、一言で説明できるか。どんな人に必要とされるのかが伝わっているか。競合や似たサービスと混同されていないか。必要な場面で思い出してもらえる理由があるか。Web、SNS、店舗などで伝えていることが大きくズレていないか。そして、「自分の名前を知っている人は、何を知っているのだろう?」。名前だけでしょうか。商品でしょうか。考え方でしょうか。それとも、「○○のことなら、この人」という具体的なイメージでしょうか。

認知は「記憶の中に場所をつくる」ことです。何かを探しているとき、誰かに相談するとき、商品を選ぶとき、仕事を頼む相手を考えているとき。そんな瞬間に、ふと名前が浮かぶ。その状態をつくるには、単純な露出量だけでは足りません。「誰なのか」「何をしているのか」「なぜそれをしているのか」、そして実際に接したときにどんな経験をするのか。それらが少しずつ積み重なって、ブランドの記憶になっていきます。ブランド認知とは、単に「名前を知ってもらうこと」ではありません。そのブランドを認識できること、何をしているのか理解できること、必要な場面で思い出せること、そして、その名前に何らかの意味や印象が結びついていること。こうした積み重ねが、ブランド認知を形づくっていきます。「もっと有名にならなきゃ」ではなく、「誰に、どんな存在として思い出してもらいたいのか?」と考えてみる。その問いから、Webサイトの文章も、SNSの投稿も、商品説明も、少し変わってくるかもしれません。

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