「ターゲットを決めましょう」。マーケティングの話ではよく出てくる言葉です。年齢、性別、職業、住んでいる場所、家族構成、年収。こうした情報を細かく設定して「ターゲット像」を作ったことがある人もいるかもしれません。でも、「30代女性」と決めたところで、その人が何に困っているのか、何を求めているのかまでは分かりません。
ターゲットとは何か
ターゲットとは、簡単に言えば「自分の商品やサービスを、特に必要としている人たち」のことです。ここで「買ってくれそうな人」だけを考えるのではなく、「役に立てそうな人」として考えると分かりやすくなります。
たとえば、同じパンを売っていても、「朝食を簡単に済ませたい人」「子どものおやつを探している人」「休日にゆっくりパンを楽しみたい人」では、求めるものが違います。商品は同じでも、「必要になる理由」は違うのです。
「みんなに届けたい」という気持ちは自然なことです。ただ、最初から「すべての人」を対象にすると発信がぼやけやすくなります。「どなたでも歓迎です」だけでは「自分のためのサービスかもしれない」と感じてもらうのは難しい。一方で「初めてで、何から始めればいいか分からない人へ」と書いてあれば、当てはまる人は立ち止まります。ターゲットを絞ることは、他の人を拒否することではなく、「誰に向けて話しているのか」を明確にすることです。
年齢だけでは決まらない
ターゲット設定というと属性に目が行きがちですが、それだけでは人の行動は説明できません。同じ40代でも、仕事が忙しくて時間がない人と、時間に余裕がある人では欲しいものが違います。同じ女性でも、価格を重視する人と安心を重視する人では選び方が違います。
だから、属性だけではなく、何に困っているのか、何を求めているのか、何を不安に感じているのか、何をきっかけに行動するのか、何を基準に選ぶのかといった「行動や状況」を見ることが大切です。
視点として、「この人に売りたい」だけではなく「この人なら役に立てるのではないか」と考えてみること。すると発信は、「買ってください」ではなく「こんなときに使えます」という情報を届ける形に変わっていきます。
決めると、言葉と「やらないこと」が見えてくる
ターゲットを決める大きなメリットは、言葉を選びやすくなることです。専門家向けなら専門用語でも伝わりますが、初めて利用する人が相手なら、できるだけ分かりやすい言葉にしたほうがいい。これは相手に媚びる話ではなく、相手が理解できる入口をつくるということです。Webサイトの文章も、SNSの投稿も、広告も、商品説明も同じです。
もう一つのメリットは、「何をしないか」が決まることです。「初めてWebサイトを作る小さな事業者」が主な対象なら、専門家向けの難しい情報ばかり発信する必要はありません。誰に向けるかが決まれば、「これは必要」「これは今は必要ない」という判断がしやすくなります。ターゲット設定は発信を狭くするためだけではなく、迷ったときの判断基準をつくることでもあります。
なお、一度決めたターゲットは固定しなくても構いません。実際に提供してみると、想定と違う人から問い合わせが来たり、想定していなかった使い方をされたりします。そうした現実を見ながら考え方を更新していくのも、マーケティングです。
まとめ
ターゲットとは、単に「売りたい相手」を決めることではありません。自分の商品やサービスが特に役に立てそうな人を、属性だけではなく、どんな状況にいて、何に困り、何を求め、どうやって選ぶのかまで含めて考えることです。「広く届けたいからこそ、まず一人を具体的に考える」。ターゲットを決めることは、必要としている人に情報を届きやすくするための最初の一歩です。
