ブランドについて考えていると、「うちのブランドは、こういうイメージです」という話が出てくることがあります。たしかに、ブランドには「イメージ」があります。でも、ここで一度考えてみたいことがあります。その「イメージ」は、本当に自分が決められるものなのでしょうか。ブランドイメージとは、基本的に「そのブランドを見たり聞いたりした人の頭の中にできている印象」だからです。自分たちが「こう見られたい」と考えることと、実際に相手から「こう見えている」ことは、必ずしも同じではありません。ブランドイメージを簡単に言えば、「そのブランドについて、人が持っている印象や認識」です。あるお店の名前を聞いたときに、親しみやすい、高級そう、入りやすそう、丁寧そう、地元に根付いていそう、といった印象が浮かぶことがあります。こうした「頭の中にある印象」が、そのブランドのイメージの一部です。
「こう見せたい」と「こう見えている」は違う
ここは、ブランドを考えるうえでかなり重要です。たとえば、自分では「親しみやすいお店にしたい」と思っているのに、Webサイトを見ると文章が難しく、写真も少なく、問い合わせ方法も分かりにくい。すると、お客さんには「ちょっと入りにくそう」と感じられる可能性があります。逆に、本人は「特別なことはしていない」と思っていても、商品の説明が丁寧で、写真が分かりやすく、SNSでも一貫した発信をしていれば、「ちゃんとしている」「安心できそう」というイメージが生まれることもあります。つまり、ブランドイメージは、自分で宣言するだけでは完成しません。相手がどう受け取ったかによって、少しずつ形になっていきます。
ブランドイメージは「見た目」だけでもありません。ロゴや色、写真などのビジュアルも重要ですが、説明が詳しいか簡潔か、SNSの投稿が多いか少ないか、価格を明確に表示するか、店員との距離が近いか。こうした違いも、ブランドイメージに影響します。Webサイトの文章ひとつでも、印象は変わります。「お気軽にお問い合わせください」と書くのか、「ご相談内容を確認のうえ、返信します」と書くのか。それだけでも、受け取る印象は違います。だからブランドイメージを考えるときには、「どんなデザインにするか?」だけではなく、「どんな体験を通して、何を感じてもらうか?」まで考える必要があります。
ブランド連想との違いも整理しておきます。ブランド連想は、そのブランドを見たり聞いたりしたときに頭に浮かぶ「もの・言葉・記憶・意味」などです。一方、ブランドイメージは、それらが組み合わさって形成される全体的な印象、と考えると分かりやすいと思います。たとえば、あるブランドから、北海道、自然、丁寧、手づくり、地元とのつながり、などが連想されるとします。それらが組み合わさって、「自然を大切にしていて、丁寧な仕事をしている、落ち着いたブランド」という全体的な印象につながっていく。そんなイメージです。
ブランドイメージは「コントロール」するものなのか
ブランドを運営する側としては、当然、「こういうブランドだと思ってほしい」という意図があります。しかし、相手の頭の中を直接操作することはできません。できるのは、何を伝えるか、どう見せるか、どんな商品を提供するか、どんな体験をつくるか、どんな言葉を使うか、どんな接点を積み重ねるか、といった、こちら側の行動を整えることです。その結果として、相手の中にイメージが形成されます。だから、ブランドイメージについて考えるとき、「イメージをつくる」よりも「イメージが生まれる材料を整える」と考えたほうが分かりやすいと思っています。
小さな事業ほど「なんとなく」がブランドになる
大企業の場合、ブランドイメージを調査したり、広告を使ったり、ブランドガイドラインを作ったりします。でも、小さな事業では、そこまで大掛かりなことをしない場合も多いでしょう。だからといって、ブランドイメージが存在しないわけではありません。むしろ小さな事業では、「あのお店って、なんとなくこういう感じだよね」という印象が、とても大きな意味を持つことがあります。「相談しやすい」「店主さんが丁寧」「いつ行っても安心」「地元のことをよく知っている」といった印象そのものが、選ばれる理由になることがあります。これは、広告費をたくさん使わなくても積み上げられるものです。
「自分では普通」が、ブランドになることもあります。本人にとっては当たり前すぎて、自分の特徴だと認識していないことがあります。「質問されたら必ず丁寧に説明する」「商品の写真を毎回きれいに撮る」「初めて来た人にも必ず声をかける」。本人からすると、ただの普段の行動かもしれません。でも、それを何度も経験した人からすると、「あの人は丁寧な人」「あのお店は相談しやすい」という印象になります。
ブランドイメージを考えるとき、一度、紙に2つの欄をつくってみるといいと思います。自分たちが思っているブランド。親しみやすい、丁寧、専門的、地域密着、自由。そしてもう一つ。お客さんからどう見えていると思うか。話しかけやすい?安心できる?何をしている人なのか分かる?この2つを並べてみます。完全に一致する必要はありません。むしろ、ズレが見つかったら、それが改善のヒントになります。
Webサイトは、ブランドイメージを整理する場所にもなります。SNSでは日々さまざまな投稿が流れていき、時間が経つと全体像が見えにくくなります。そこでWebサイトには、何をしているのか、誰のためにしているのか、どんな考え方なのか、どんな商品・サービスがあるのか、といった情報を整理して置くことができます。SNSが「日々の接点」だとすれば、Webサイトは「ブランドを理解してもらうための土台」にすることができます。大切なのは、そこで伝えている内容と、実際の仕事や体験がつながっていることです。
ブランドイメージは、一度決めたら完成するものではありません。新しい商品を出せば変わるかもしれない。SNSの発信が変われば変わるかもしれない。時間が経つことでも変わっていきます。だから、最初に「完璧なイメージ」を決めることよりも、「どんな印象を積み重ねていきたいのか」を考えるほうが現実的です。
ブランドイメージを考えるなら、次の5つの質問が使えます。名前を聞いたとき、何を思い浮かべてほしいか。初めて知った人に、どんな印象を持ってほしいか。一度利用した人に、何を覚えて帰ってほしいか。競合や似た事業と比べたとき、どんな印象の違いがあるか。今、実際にはどんなイメージを持たれていると思うか。特に最後の質問は大切です。「こう見られたい」だけではなく、「今はどう見られているんだろう?」まで考える。ブランドは、自分たちが語ることも大切ですが、それ以上に、実際に何をして、相手が何を感じ、何を覚えたのか。その積み重ねが、ブランドイメージになっていきます。
