「うちの商品は、他とは違います」。商売をしていれば、競合と同じことをしているだけでは埋もれてしまうことがあります。だから「差別化が大切」と言われます。ただ、差別化とは単純に「他と違うこと」なのでしょうか。どれも違いにはなりますが、「違う」というだけでは選ばれるとは限りません。
「違うこと」と「選ばれること」は同じではない
差別化とは、「他の選択肢と比べたときに、自分の商品やサービスならではの特徴を、お客さんにとって意味のある形で明確にすること」です。たとえば、近所のお店が白い看板だから自分の店は紫色の看板にする。これは違いではありますが、お客さんにとって意味がなければ選択理由にはなりません。
反対に、見た目に大きな違いがなくても、「初めてでも相談しやすい」「注文してから受け取るまでが分かりやすい」「自分に合うものを選びやすい」といったことが選ばれる理由になる場合があります。大切なのは違いの大きさではなく、その違いが誰にとって意味を持つのか、ということです。
差別化は「奇抜なことを始める」ことではない
差別化と聞くと「他ではやっていないことを探そう」と考えがちですが、すべての事業が奇抜である必要はありません。小さな事業では、無理に珍しいことを始めるより、すでに持っている特徴を見つけるほうが自然なことがあります。説明が丁寧、相談しやすい、対応が早い、地域のことをよく知っている、特定の商品に詳しい。本人には「普通のこと」に見えていても、それが立派な違いになります。
差別化できる場所は商品だけではありません。接客、購入方法、予約方法、アフターフォロー、情報提供、店舗の雰囲気、Webサイト、SNSでのやり取り、地域との関わり。同じ商品を扱っていても、「選び方を分かりやすく説明してくれる」という部分で違いが生まれることがあります。
価格だけに頼らないために
「他より安い」は分かりやすい違いですが、価格だけを軸にすると、もっと安いところが出てきたときに移られてしまう可能性があります。「安心して相談できる」「自分に合った提案をしてくれる」「購入後のフォローがある」「近くて利用しやすい」。こうした、価格では測れない選択理由もあわせて考えておくことが大切です。
また、同じ違いでも相手によって価値は変わります。「夜遅くまで営業している」ことは、昼間に買い物をする人には大きな魅力でなくても、仕事が終わるのが遅い人にはとても便利な特徴です。だから差別化は「何が違うか」だけでなく「誰にとって意味があるか」まで考えます。
差別化から「選ぶ理由」へ
差別化は、USP(この店・商品を選ぶ理由)やベネフィットともつながっています。「購入前に相談できる」という違いがあり、そこから「自分に合うものを選びやすい」という価値が生まれ、「相談してから選べる店だから、ここで買おう」という選択理由になる。
考えるときの問いは5つです。お客さんは何と比較して自分を選ぶのか。他と比べて自然にできていることは何か。よく褒められることは何か。自分では普通でも他の人には難しいことは何か。その違いはお客さんにとってどんな意味があるのか。そして、せっかくの特徴も伝えなければ比較の土俵に乗りません。ホームページやSNS、接客の場面で同じ価値が伝わるようにすることも、差別化の一部です。差別化は競合に勝つためだけのものではなく、「自分が何者なのかを、相手に分かるようにすること」でもあります。すべての人に選ばれる必要はなく、必要としている人に「ここを選ぶ理由」が伝わればいいのです。
