毎日使う道具は、仕事のリズムをつくる。
朝、机に座る。
Macを開く。
キーボードに手を置く。
メールを確認する。
今日やることを見る。
必要ならノートを開く。
ペンを持つ。
仕事が始まる。
考えてみると、仕事というのは、こういう小さな動作の繰り返しなのかもしれない。
ものすごく大きなことをしているわけではない。
毎日、似たようなことをする。
同じ道具を使う。
同じ場所に座る。
同じような動作をする。
でも、この「同じこと」が、案外大事なのだと思う。
仕事には、始まりの合図がある
スポーツ選手なら、練習前に準備をする。
音楽家なら、楽器を手に取る。
料理人なら、厨房に立つ。
僕なら、机に座ってMacを開く。
その瞬間、
「仕事を始める」
というスイッチが入る。
もちろん、Macを開いたからといって必ず集中できるわけではない。
メールを見てしまうこともある。
SNSを見てしまうこともある。
予定外の仕事が入ることもある。
それでも、毎日同じ動作を繰り返していると、少しずつ身体が覚えてくる。
人間は、毎回ゼロから始めなくてもいい
仕事を始めるたびに、
「今日は何をしよう」
「どうやって始めよう」
「どの道具を使おう」
と全部考えていたら、疲れる。
だから、ある程度決まっていることがあると楽になる。
使うキーボード。
使うマウス。
座る場所。
ノートの位置。
ファイルの場所。
最初に確認するもの。
こういう小さなルールがあると、仕事を始めるまでの迷いが減る。
「習慣」は、地味だけど強い
習慣という言葉は、少し堅く聞こえる。
でも、実際にはそんなに大げさなものではない。
毎朝コーヒーを飲む。
同じペンを使う。
机を片づける。
今日の予定を見る。
ノートに一行書く。
こういう小さなことでもいい。
毎日繰り返していると、それが仕事のリズムになる。
道具は、習慣をつくるきっかけになる
僕がペリカンの万年筆を使うのも、単純に書きやすいからだけではない。
ペンを持つと、
「少し考えよう」
という気持ちになる。
ロディアを開くと、
「一度、頭の中を整理しよう」
という気持ちになる。
HHKBに手を置くと、
「文章を入力しよう」
というモードになる。
道具そのものが仕事をしてくれるわけではない。
でも、道具が行動のきっかけになることはある。
「お気に入り」は、意外と実用的
仕事道具を選ぶとき、
「好きだから」
という理由を軽く見ないほうがいいと思っている。
好きな道具は、使いたくなる。
使いたくなる道具は、手に取る。
手に取れば、仕事が始まる。
もちろん、これだけで仕事がうまくいくわけではない。
でも、
「仕事を始める抵抗を少し下げる」
という意味では、かなり実用的だと思う。
毎日使う道具は、手になじんでくる
同じペンを毎日使う。
同じキーボードを毎日使う。
同じマウスを毎日使う。
最初は意識していた動作が、だんだん無意識になる。
キーの位置を考えなくなる。
マウスを見なくなる。
ペンの持ち方を考えなくなる。
そうすると、道具が「道具」という感じではなくなる。
自分の身体の延長のようになってくる。
道具が消える瞬間がある
これは、いい道具の一つの状態だと思う。
「このキーボードを使っている」
という意識がなくなる。
ただ、文字を打っている。
「このマウスを使っている」
という意識がなくなる。
ただ、画面を操作している。
道具の存在を意識しなくなるくらい、自分の動作に馴染む。
そこまでいくと、道具と仕事の境界が少し薄くなる。
でも、新しい道具は一度リズムを壊す
だから、新しい道具を導入するときは少し注意が必要だ。
新しいキーボード。
新しいマウス。
新しいソフト。
新しいAI。
新しいスマートフォン。
どれも最初は新鮮だ。
でも、今まで無意識にできていたことを、もう一度意識しなければならない。
「このボタンはどこ?」
「この設定はどこ?」
「この操作はどうやる?」
一時的に、仕事のリズムが崩れる。
新しいものが必ず効率化になるわけではない
新しい道具は、性能が上がっているかもしれない。
でも、使い始めたばかりなら、仕事が遅くなることもある。
これは悪いことではない。
学習期間だからだ。
問題は、
「その学習期間を払ってでも得たいものがあるか」
だと思う。
一時的に遅くなる。
でも、半年後にはもっと楽になる。
それなら、導入する意味がある。
逆に、
少し便利になるだけなのに、覚えることが大量に増える。
それなら、今の道具のままでもいいかもしれない。
「変えること」にはコストがある
道具を変えると、
買う。
設定する。
覚える。
慣れる。
データを移す。
場合によっては周りにも説明する。
つまり、変更にはコストがある。
だから、
「新しいから変える」
ではなく、
「変えることで何が良くなるのか」
を見る。
仕事の仕組みも同じ
これはWebサイトや業務の仕組みにも、そのまま当てはまる。
新しいCMS。
新しい予約システム。
新しいECサービス。
新しいSNS。
新しい顧客管理ツール。
新しいAI。
導入すれば、必ず良くなるわけではない。
今の仕事の流れに合うか。
使う人が覚えられるか。
維持できるか。
やめるときに困らないか。
そこまで考える必要がある。
変えないことも、立派な改善
改善というと、
「何かを変える」
ことだと思われがちだ。
でも、
「今のままでいい」
と判断することも改善だと思う。
今のキーボードで十分。
今のソフトで十分。
今のWebサイトで十分。
今のSNSの数で十分。
今の作業方法で十分。
その判断ができると、余計な変更をしなくて済む。
毎日使うものほど、慎重に選ぶ
逆に、毎日使う道具なら、少しこだわっていいと思う。
毎日8時間使う。
一年で何日使うだろう。
そう考えると、多少高くても納得できる場合がある。
ただし、高ければいいわけではない。
毎日使うからこそ、
疲れない。
迷わない。
壊れにくい。
使っていて嫌にならない。
そういうことが大切になる。
「一日一回」と「一日百回」は違う
道具の価値は、使用頻度でも変わる。
一日に一回使う道具。
一日に百回使う道具。
同じ価格でも意味が違う。
一日に何百回もキーを打つなら、キーボードの違いは積み重なる。
一日に何度もメモを取るなら、ペンの感触も積み重なる。
一日に何度も画面を見るなら、モニターの位置も積み重なる。
小さな違いほど、回数が増えると大きくなる。
小さなストレスは、積み重なる
逆もある。
キーが少し押しにくい。
マウスが少し使いにくい。
ペンが少し滑る。
モニターが少し低い。
ファイルが少し探しにくい。
一回なら気にならない。
でも、それを毎日繰り返す。
すると、
「なんとなく疲れる」
になる。
この「なんとなく」は、かなり厄介だ。
道具を見直すときは、ストレスを見る
新しい道具を探す前に、
「何が嫌なのか」
を考える。
キーが重い。
手首が疲れる。
画面が見にくい。
ファイルを探すのが面倒。
通知が多い。
ログインが面倒。
入力が多い。
こうやって具体的にすると、必要な改善が見えてくる。
「仕事が遅い」ではなく「毎回ここで止まっている」
仕事が遅いと思ったとき、
「自分の能力が低い」
と考えてしまうことがある。
でも、そうとは限らない。
毎回同じ場所で止まっているのかもしれない。
毎回ファイルを探している。
毎回同じ文章を書いている。
毎回同じ確認をしている。
毎回同じところで迷っている。
そこを見つければいい。
仕事を速くするより、止まる場所を減らす
僕は、この考え方が好きだ。
仕事をものすごく速くする。
ではなく、
仕事が止まる場所を減らす。
このほうが現実的なことが多い。
キーボードを速く打てるようになるより、
必要なファイルがすぐ見つかる。
複雑なツールを使いこなすより、
毎回同じ作業を迷わずできる。
こういう改善のほうが、長く効く。
Webサイトも「止まらない」ことが大切
Webサイトを見ている人も同じだ。
ページを開く。
何のサイトか分からない。
戻る。
サービスを探す。
見つからない。
戻る。
問い合わせ先を探す。
分からない。
こうなると、そこで止まる。
だからWebサイトでは、
「何を見せるか」
だけではなく、
「どこで迷わせないか」
を見る。
良いWebサイトは、見る人のリズムを邪魔しない
ページを開く。
内容が分かる。
必要な情報を読む。
次に見る場所が分かる。
問い合わせる。
購入する。
予約する。
この流れが自然なら、サイトの存在を意識しなくなる。
良い道具と同じだ。
邪魔をしない。
迷わせない。
必要なところで助ける。
「使いやすさ」は、目立たない
デザインが派手だと、
「すごいサイトだな」
と思う。
機能が多いと、
「高機能だな」
と思う。
でも、本当に使いやすいものは、
「使いやすい」
とすら思わないことがある。
ただ、自然に使える。
これは道具もWebも同じだと思う。
仕事のリズムは、自分でつくれる
毎日同じ場所で仕事をする。
同じ道具を使う。
同じ順番で始める。
必要なものを手元に置く。
通知を減らす。
終わったら片づける。
こういう小さなことを、自分で決める。
それだけでも、仕事のリズムは変わる。
朝の5分を決めておく
例えば僕なら、
机を整える。
今日の予定を見る。
昨日から残っているものを見る。
今日やることを3つくらい書く。
それから仕事を始める。
これだけでもいい。
毎朝、仕事の優先順位をゼロから考えるより楽だ。
もちろん、日によって変わる。
でも、基本の型がある。
終わり方も大事
仕事の始まりだけではない。
終わり方も大事だと思っている。
使った道具を戻す。
ファイルを所定の場所に置く。
明日の予定を見る。
途中の仕事を一言メモする。
机を少し整える。
そうすると、次の日に続けやすい。
「明日の自分」に引き継ぐ
一人で仕事をしていると、
自分から自分へ引き継ぐ
という感覚が意外と大事になる。
今日の自分が、
「ここまでやった」
「次はこれ」
と残しておく。
明日の自分は、それを見て続きから始められる。
これも、一種の仕組みだ。
道具は、時間をつなぐ
ノートに残す。
ファイルを整理する。
作業手順を残す。
Webサイトを更新する。
こうしたことは、今の自分だけのためではない。
未来の自分が困らないためでもある。
今日の自分と明日の自分をつなぐ。
道具には、そういう役割もある。
毎日使うものだからこそ、無理をさせない
道具も仕事も、
「もっと頑張れば使える」
では長続きしない。
疲れる。
面倒になる。
使わなくなる。
だから、
毎日使うものほど、無理がないことが大切だと思う。
少し楽。
少し気持ちいい。
少し迷わない。
その「少し」が積み重なる。
効率だけでは、仕事のリズムはつくれない
効率を上げる。
作業時間を減らす。
自動化する。
もちろん大切だ。
でも、それだけでは仕事は続かない。
「この環境なら仕事を始めやすい」
「この道具なら使いたい」
「この流れなら無理がない」
そう思えることも大切だ。
僕が好きな道具を長く使うのも、たぶん同じ理由だ。
ペリカンの万年筆。
ロディア。
HHKB。
MX Ergo。
Mac。
それぞれ役割がある。
でも、それ以上に、
「これを使って仕事をする」
という感覚がある。
道具は、仕事を代わりにしてくれない。
でも、
仕事を始めるきっかけになったり、
迷いを減らしたり、
手を動かしやすくしたり、
考えを残したり、
明日の自分につないだりすることはできる。
だから、道具を選ぶとき、
「何ができるか」
だけではなく、
「毎日使ったとき、どんなリズムになるか」
も考えてみたい。
新しい道具を買う。
古い道具を手放す。
机の上を変える。
アプリを整理する。
どれも、単なる環境づくりではない。
自分の一日の時間をどう使うかを決めることだ。
毎日使うものは、
毎日の自分を少しずつ作っていく。
だからこそ、
高価かどうかより、
有名かどうかより、
最新かどうかより、
「自分がこれからも使いたいと思えるか」
を大切にしたい。
仕事は、一日で完成するものではない。
毎日、少しずつ積み重ねるものだから。
その積み重ねを支えてくれる道具なら、
派手じゃなくてもいい。
最新じゃなくてもいい。
誰かに褒められなくてもいい。
自分の手になじんで、
いつもの場所にあって、
今日も自然に仕事を始められる。
そんな道具が、結局いちばん強いのかもしれない。