「いい商品なのに、なかなか売れない」
「サービスには自信があるのに、問い合わせが来ない」
「他のお店とそんなに違わないのに、なぜか選ばれない」
小さな事業をしていると、そんなことを考えることがあります。
そのとき、
「もっといい商品にしよう」
「もっと安くしよう」
「もっと宣伝しよう」
と考えたくなります。
もちろん、それで変わることもあります。
でも、その前に一つ考えてみたいことがあります。
「お客様が、自分を選ぶ理由は何だろう?」
ということです。
これは、
「自分の強みは何ですか?」
という質問とは、少し違います。
自分が思う強みと、お客様が選ぶ理由は、必ずしも同じではないからです。
「いいもの」だけでは選ばれない
世の中には、いい商品やサービスがたくさんあります。
丁寧につくられている。
品質がいい。
経験がある。
こだわっている。
価格も適正。
対応もきちんとしている。
それでも、選ばれるとは限りません。
なぜでしょう。
お客様からすると、
「いいかどうか」
を判断するための情報が足りないことがあるからです。
そもそも、
「何がいいのかわからない」
ということもあります。
だから、
「いいものを作る」
と、
「いいものだと伝わる」
は別の問題です。
そしてさらに、
「いいものだと伝わる」
と、
「自分に必要だと思ってもらえる」
も別です。
お客様は「商品」だけを買っているわけではない
たとえば、同じような商品が2つあったとします。
価格もほぼ同じ。
品質も大きく違わない。
どちらを選ぶでしょうか。
そこで、
「なんとなくこっち」
ということが起きます。
この「なんとなく」の中には、いろいろなものが入っています。
説明がわかりやすかった。
写真が好みだった。
店の雰囲気が好きだった。
知っている人が紹介していた。
スタッフの感じがよかった。
自分と考え方が合いそうだった。
場所が便利だった。
以前利用してよかった。
安心できそうだった。
「ここなら大丈夫そう」と思えた。
つまり、選ばれる理由は商品そのものだけではありません。
その商品を取り巻く、
情報。
体験。
人。
場所。
言葉。
デザイン。
関係性。
そういうものが重なって、「ここにしよう」という判断につながります。
「強み」と「選ばれる理由」は違う
これは、小さな事業を整理するときに結構大事なポイントだと思っています。
「あなたの強みは何ですか?」
と聞かれて、
「丁寧な仕事です」
「品質には自信があります」
「経験があります」
と答える。
もちろん、それは大切です。
でも、それだけでは、
「では、なぜこの人から買うの?」
という問いに答えきれないことがあります。
たとえば、
「丁寧です」
だけではなく、
「初めての人でも不安にならないように、一つずつ説明してくれる」
なら、具体的になります。
「経験があります」
だけではなく、
「初めて相談する人でも、何から始めればいいか一緒に整理してくれる」
なら、利用する場面が見えてきます。
「地域密着です」
だけではなく、
「旭川で実際に暮らし、仕事をしているから、地域の事情を踏まえて相談できる」
なら、その人にとっての意味が見えてきます。
強みを並べるだけではなく、
「それが、お客様にとって何がいいのか」
まで翻訳する。
そこに「選ばれる理由」があります。
「自分では当たり前」が、理由になることがある
もう一つ面白いのは、
自分では普通だと思っていることが、他の人にとっては価値になることです。
たとえば、
返信が早い。
説明が丁寧。
相談しやすい。
専門用語を使わない。
小さなことでも聞ける。
一緒に考えてくれる。
途中で方向を変えられる。
無理なものは無理と言ってくれる。
こういうことは、本人にとっては「当たり前」かもしれません。
でも、お客様からすると、
「そこがよかった」
ということがあります。
だから、選ばれる理由を考えるときは、
「自分が何をすごいと思っているか」
だけではなく、
「相手は何をありがたいと思っているか」
を見る必要があります。
「買う理由」は、最後につくるものではない
「買う理由」というと、最後にキャッチコピーを考えるようなイメージがあります。
でも、本当はもっと前から始まっています。
誰に向けた商品なのか。
何を解決するのか。
どんな体験をしてほしいのか。
なぜ、この方法なのか。
なぜ、この店なのか。
なぜ、この人なのか。
それが整理されていれば、言葉も自然に出てきます。
逆に、そこが整理されていない状態で、
「売れるキャッチコピーを考えよう」
となると、言葉だけを無理に作ることになります。
コピーを変えることが悪いのではありません。
むしろ、言葉は大切です。
ただ、
「言葉で隠す」
のではなく、
「中身を整理して、その意味を言葉にする」
ほうが強い。
2026年は「比較される前提」で考える
今は、何かを買う前に検索することが当たり前になっています。
Googleで検索する。
SNSを見る。
口コミを見る。
地図を見る。
ホームページを見る。
動画を見る。
AIに聞いてみる。
一つの情報だけを見て決めるとは限りません。
だから、
「うちはこういう店です」
と一方的に伝えるだけではなく、
「比較するときに、何がわかれば判断できるのか」
まで考える必要があります。
たとえば、
価格がわからない。
利用方法がわからない。
誰向けなのかわからない。
予約方法がわからない。
場所がわからない。
他との違いがわからない。
どんな人がやっているのかわからない。
そういう「わからない」が残っていると、選ぶ以前の問題になります。
選ばれないのではなく、
「選べる状態になっていない」
のかもしれません。
Webサイトは「選ばれるための場所」でもある
Webサイトを、
「会社やお店の情報を載せる場所」
だけとして考えると、必要なページを並べることが目的になります。
会社概要。
サービス。
商品。
アクセス。
お問い合わせ。
もちろん必要です。
でも、その先にあるのは、
「ここなら自分に合いそう」
と思ってもらえることです。
初めて訪れた人が、
「ここは何をしているところ?」
から始まり、
「自分に関係ありそう」
になり、
「もう少し詳しく知りたい」
になり、
「ここに相談してみよう」
となる。
その流れをつくる。
これは、Webサイトの「導線」を考えるということでもあります。
ページを増やすことではありません。
理解が進む順番をつくることです。
SNSも「売る場所」だけではない
SNSについても同じです。
商品を紹介する。
キャンペーンを告知する。
イベントを知らせる。
もちろん、それも大切です。
でも、それだけではなく、
「この人、なんか好きだな」
「この店、雰囲気がいいな」
「この活動、面白いな」
と思ってもらうこともあります。
そして、
「何かあったらここに相談してみよう」
という記憶につながることもある。
すぐに買ってもらうためだけではなく、
選択肢の中に入っておく。
これもSNSの大きな役割だと思っています。
値下げは「選ばれる理由」になっているのか
「なかなか売れないから、値下げしよう」
という判断もあります。
価格は、もちろん重要です。
でも、
「安いから買う」
だけを理由にしてしまうと、別のところが安くなった瞬間に、また選ばれなくなる可能性があります。
価格以外に、
「なぜここなのか」
があれば、比較の軸が増えます。
商品そのもの。
使いやすさ。
安心感。
人柄。
専門性。
体験。
地域との関係。
アフターフォロー。
相談のしやすさ。
世界観。
いろいろな理由があり得ます。
だからこそ、
「安くする前に、選ばれる理由を整理する」
という視点も持っておきたい。
「選ばれる理由」は、一つじゃなくていい
ここも大事です。
「うちの最大の強みはこれです」
と、一つに絞らなければいけないとは限りません。
むしろ小さな事業では、
「人」
「商品」
「場所」
「対応」
「考え方」
など、いくつかの小さな理由が重なって選ばれていることがあります。
たとえば、
「商品が好き」
だけではなく、
「この人から買いたい」
もある。
「近いから」
だけではなく、
「相談しやすいから」
もある。
「価格がちょうどいい」
だけではなく、
「安心して任せられるから」
もある。
一つの大きな武器を作るより、
「選ばれる理由の組み合わせ」
を整理する。
そのほうが、その事業らしい形になることがあります。
「なぜ買ったのか?」を自分に聞いてみる
もし、自分の事業の「選ばれる理由」がわからないなら、
まず自分自身の消費行動を見てみるのも面白い方法です。
なぜ、その店に行ったのか。
なぜ、その商品を選んだのか。
なぜ、その人にお願いしたのか。
なぜ、他ではなくそこだったのか。
「安かったから」
だけではないかもしれません。
写真がよかった。
検索したら一番わかりやすかった。
口コミが安心できた。
店員さんの説明がよかった。
以前から知っていた。
友人がおすすめしていた。
なんとなく雰囲気が好きだった。
そうやって自分の行動を少し俯瞰してみる。
すると、
「人は、こういう理由でも選ぶんだ」
ということが見えてきます。
その視点は、自分の事業を考えるときにも使えます。
「選ばれる」を考えることは、「相手を理解する」こと
マーケティングというと、
どう売るか。
どう集客するか。
どう広告するか。
という話になりがちです。
でも、その前に、
「なぜ、この人はこれを選ぶんだろう?」
と考えてみる。
それだけでも、見えるものが変わります。
自分の商品を見るのではなく、
相手の選択を見る。
自分の言いたいことを見るのではなく、
相手が判断するときに必要なことを見る。
この視点を持つと、
Webサイトの文章も。
SNSの投稿も。
商品ページも。
プロフィールも。
少しずつ変わってきます。
旭川で小さな事業をするなら
旭川は、2019年にユネスコ創造都市ネットワークのデザイン分野に加盟しています。
現在の旭川市も、デザイン思考やデータに基づくマーケティングを活用する「デザイン・マーケティング課」を設け、デザインシステムの周知・活用などを進めています。2026年1月からは市民もデザインシステムを利用できるようになっています。旭川市公式サイト
こうした動きを見ていると、
デザインは「見た目を整えること」だけではなく、
地域や事業がどう伝わり、
どう使われ、
どう選ばれ、
その先でどう動くのか。
そういうところまで含めて考えるものなのだと思います。
小さな事業にとっても、これは特別な話ではありません。
「うちにはデザインなんて関係ない」
ではなく、
「どうすれば、この活動が必要な人に伝わるだろう?」
と考えること自体が、すでにデザインの一部なのかもしれません。
「売る」より先に、「選べる状態」をつくる
僕がWebや情報を整理するときに意識したいのは、
「どうすれば売れるか」
だけではありません。
その前に、
「どうすれば、相手が判断できるか」
を考えます。
何をしているのかわかる。
誰のためなのかわかる。
自分に関係があるかわかる。
どんな特徴があるかわかる。
安心して問い合わせられる。
利用方法がわかる。
そして、
「ここにお願いしてみよう」
と思える。
そういう状態をつくる。
それができていれば、最後の「買う」という行動は、その先に自然と出てくることがあります。
だから、
「選ばれる理由をつくる」
というより、
「すでにある選ばれる理由を見つけて、整理して、伝わる形にする」
と考えたほうが、僕にはしっくりきます。
作る前に、もう一度考えてみる
ホームページを作る前に。
SNSを始める前に。
広告を出す前に。
新しい商品を作る前に。
一度だけ、
「なぜ、この人は自分を選ぶんだろう?」
と考えてみる。
そして、
「その理由は、ちゃんと相手に伝わっているだろうか?」
と考えてみる。
もし答えが曖昧なら、
まだ情報を増やす段階ではないのかもしれません。
まず整理する。
誰に。
何を。
なぜ。
そして、
なぜ自分なのか。
そこが見えてくると、
Webサイトも。
SNSも。
文章も。
デザインも。
「何を作ればいいのか」が、少しずつ見えてきます。
増やす前に、整理する。
作る前に、考える。
そして、
「選ばれる理由」を、無理に作るのではなく、
自分たちの中にすでにあるものを見つける。
僕は、そこから始めるのがいいと思っています。