「うちの商品は、本当にいいんです」。そう話す人はたくさんいます。素材にこだわっている、丁寧に作っている、長年研究してきた。実際に、とてもいい商品なのかもしれません。それなのに、「なかなか売れない」「商品の良さが伝わらない」「説明しているのに興味を持ってもらえない」ということがあります。商品が悪いからとは限りません。もしかすると、「いい商品であること」と「その良さが相手に伝わること」の間に、少し距離があるのかもしれません。
「いいもの」と「欲しいもの」は同じではない
売り手にとって「いい商品」であることと、お客さんにとって「欲しい商品」であることは、同じとは限りません。たとえば「北海道産の素材を使っています」という商品。売り手にとっては大きなこだわりです。でも、お客さんが「北海道産だから買いたい」と思うとは限りません。「安心できそう」「贈り物に良さそう」「地元のものを選びたい」というところに魅力を感じるかもしれません。売り手が価値だと思っていることと、買い手が価値だと感じることには違いがある場合があるのです。
マーケティングでは、「特徴」と「価値」を分けて考えると分かりやすくなります。「軽いバッグです」は特徴です。では「軽いことで何がうれしいのか?」と考えてみます。荷物が多い日でも持ちやすい、長時間歩いても負担になりにくい、旅行に持っていきやすい。ここまで来ると、使う人にとっての価値が見えてきます。「こだわって作っています」も同じで、「どこにこだわっているのか」だけではなく、「そのこだわりによって、お客さんにどんな良さがあるのか」まで伝えると分かりやすくなります。「一つひとつ手作業で作っています」だけではなく、「手作業で仕上げることで、細かな部分まで確認しています」とすると、「なぜ手作業なのか」が見えてきます。
また、お客さんは「商品」だけを買っているわけではありません。コーヒーを買うとき、朝の時間を楽しみたい、仕事の合間に一息つきたい、誰かに贈りたい、という目的があるかもしれません。人は商品そのものだけではなく、「その商品を使った先にあるもの」も買っている場合があります。だから説明では、内容量や素材といった情報に加えて、「いつ使うのか」「誰が使うのか」「どんな場面で使うのか」を伝えることが大切です。写真も「魅力を伝える言葉」の一つです。文章だけでは伝えにくい大きさや質感、使っている様子は写真で見せ、写真だけでは分からないことを文章で補う。文章と写真は、お互いに補うものと考えると使いやすくなります。
情報を増やす前に、減らしてみる
「伝わらない」と感じると、「もっと説明しなければ」と思ってしまいます。でも、情報を増やせば分かりやすくなるとは限りません。たくさんの特徴やこだわりが一度に出てくると、「結局、一番伝えたいことは何?」となることがあります。そんなときは「一番伝えたいことは何か」を一つ決めて、そこから必要な情報を足していく順番のほうが整理しやすくなります。
「誰にでもおすすめ」が誰にも刺さらないのも、同じ理由です。「どなたにもおすすめです」では、誰に向いているのかが見えず、「自分には関係ない商品なのかな」と思われることがあります。逆に「こういう人におすすめです」と具体的に書くことで、「それ、私のことかも」と気づいてもらえることがあります。キャッチコピーも、最初に必要なのは「これは何なのか」「誰に向いているのか」「何がうれしいのか」が分かることかもしれません。
まとめ
売り手が「ちゃんと説明しました」と思っていても、お客さんが「よく分からなかった」と思っていたら、伝えたことと、伝わったことは違います。売り手は商品を内側から見ています。お客さんは商品を外側から見ています。単純に「見ている場所が違う」だけかもしれません。だから、「自分が何を言いたいか」だけではなく、「初めてこの商品を見る人は、何を知りたいだろう?」と考えてみることが大切になります。
商品の説明に迷ったら、次の5つの質問を考えてみてください。1.これは何の商品・サービス? 2.どんな特徴がある? 3.その特徴によって何がうれしい? 4.どんな人・場面に向いている? 5.なぜ、この商品を選ぶ理由がある? 商品が売れないとき、「魅力がないのかな」と思う前に、「良さが、必要な人にちゃんと伝わっているだろうか?」と考えてみる。「売れない」を「伝わっていない」に置き換えてみる。旭川の小さなお店でも、ネットショップでも、基本的な考え方は同じです。
